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つなぎの4番、楽天・島内宏明 優れた選球眼と粘り強さでチームに貢献

2019 5/19 07:00浜田哲男
島内宏明ⒸYoshihiro KOIKE
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ⒸYoshihiro KOIKE

強打者の狭間で機能

現在、リーグ4位の楽天。チーム打率は.259とリーグ1位、得点もリーグ2位の194(1位は西武の199点)を記録しており、則本昴大、岸孝之の両エースを欠きながらも破壊力ある打線で健闘を見せている。

その打線の4番を担っているのが島内宏明だ。入団以来、突出した成績を残しているわけではないが、開幕から抜擢されて以来、ほとんどの試合で4番を任されている。平石監督は「時にはバントもしてもらう」と語っており、つなぐ4番としての役割を期待している。

3番には今季から加入した浅村栄斗、5番にウィーラーが入るという並びは、ほぼ固定。両脇に長打が期待できる強打者がいるため、つなぎに徹するメリットは大きい。現在は打率.274、出塁率.373、得点圏打率.324で、20四球を選ぶなど、まずまずの成績を残しており、浅村、ウィーラー、そして新助っ人のブラッシュといった右の強打者の狭間で、しっかりと機能している。

それを象徴するシーンといえば、4月3日に行われた本拠地での日本ハム戦。1-2と1点ビハインドで迎えた8回裏に2死から四球を選んで出塁すると、その後のウィーラーが逆転2ランを放ち逆転に成功。後ろに回そうという意識がチームの勝利につながった。

優れた選球眼と粘り強さ

それでは、島内はどんな部分に優れているのだろうか。脚力や時折見せるパンチ力、打撃の積極性という点も魅力だが、一番の特長は選球眼の良さと粘り強さだ。

パ・リーグ BB/KランキングⒸSPAIA

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パ・リーグ PA/KランキングⒸSPAIA

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三振しにくい打者であることを示すセイバーメトリクスの指標PA/K(打席数÷三振数)は、同僚の銀次に次ぐリーグ2位の13.1。また、選球眼の良さを示す指標BB/K(四球÷三振)も銀次に次ぐリーグ2位の1.54。つまり、打席での粘り強さがあり、四球で好機を作ることもできる打者ということになる。

打線は、ほとんどの試合で3番の浅村から島内、ウィーラー、銀次、ブラッシュという並びだが、右の強打者の狭間に左の島内や銀次といった選球眼に優れて粘り強い打者がいることは、相手投手にとっては嫌だろう。おまけに、島内と銀次は得点圏打率も高く(銀次はリーグ5位の.357)チャンスメーカーにもなれば、得点源にもなれる。

5月15日の日本ハム戦では0-8のビハインドから追いつき、サヨナラ勝ちをおさめた。今季の楽天打線は、最後のアウトをとるまで分からないという怖さがある。

元祖つなぎの4番サブロー

4番という打順には、元来長打力のある打者が座るというのが一般的な傾向だった。だが、その概念を覆したのが元ロッテのサブローだ。サブローは常に一発長打が期待できる打者ではなかったが、チャンスに強く、出塁率が高かった。また俊足だったこともあり、出塁すれば得点にもつながった。当時のバレンタイン監督は、そんなサブローの特性を考慮して4番に配置。打線は見事に機能した。

象徴的なのは、ロッテがリーグ優勝と日本一を成し遂げた2005年。打線には掘幸一、福浦和也、フランコ、今江敏晃ら4人の3割打者がおり、規定打席にはわずかに届かなかったが、サブローや里崎も3割以上を記録。そこにイ・スンヨプやベニーといった一発のある打者が絡み、切れ目のない打線となった。

得点はリーグダントツ1位の740点(136試合)を記録。この年の夏場以降に4番に定着したサブローが潤滑油となり、つながる打線を形成した。平石監督も、島内にかつてのサブローのような役割を期待しているはずだ。

切れ目のない打線で上位進出へ

昨季、西武が圧倒的な打力でリーグ優勝を成し遂げた。打線は水物と言われるが、これから夏場に向かって投手陣の疲労が蓄積していくことを考えると、打線がカギとなる試合も多くなってくるだろう。

前述したように、今季の楽天は得点力がある。島内は打率よりも出塁率への意識が高く、今後も4番・島内がつなぎ役に徹することができれば、昨季の西武のように打線が打ちまくり、楽天が優勝争いをする可能性も十分にある。

※数字は2019年5月16日終了時点