混戦模様のセ・リーグ
2019年ペナントレースも40試合ほどを消化した。ここまでの戦いぶりを見るとセ・パ両リーグともに独走するチームはなく、団子状態となっている。
現在セ・リーグでは、巨人、ヤクルト、広島、阪神で”四つ巴”の首位争いが繰り広げられており大混戦中。暫くは、1試合ごとの結果次第で順位が大きく入れ替わることになりそうだ。
こういう時は1点の重みも違ってくる。そんな1点を手に入れるために、チームが時折選択する手段が犠打だ。しかし今季の2番打者の顔ぶれを見ると、青木宣親(ヤクルト)や坂本勇人(巨人)といった首位打者争いに顔を出す選手が入っているチームもある。そのため例年より、犠打が減っているような印象を受けるかもしれない。
実際のところ、昨シーズンの犠打とくらべて増えているのだろうか。セ・リーグ6チームの数字を見ていきたい。
1試合あたりの犠打数に変化なし
ここまでの各チームによる犠打の数はこのようになっている。
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犠打数は阪神が最も多く33個。1試合平均にすると0.80個となる。最も多い阪神でも毎試合犠打を記録しているわけではない。
一方、最も少ないのは巨人の16個。同じように1試合平均にすると0.42個。2試合に1個記録しないくらいの計算になる。セ・リーグの6チームで見ると巨人が群を抜いて少ないものの、その他の5チームに大きな変わりはない。
この数字を見ると、各チームとも犠打は1試合に1個するかしないかといったところだろう。ちなみに昨シーズンはどうだったのだろう。
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ヤクルトと広島が109個(1試合平均0.76個)で最多。最少はDeNAの71個(1試合平均0.50個)だった。全体では変わらず、1チーム1試合あたり0.67個の犠打を記録しており、数字に大きな変化はない。
しかし、チームごとに見ると違いが現れている。昨シーズン1試合あたり0.50個しか犠打を記録していなかったDeNAが0.69個と大幅に増やしてきた。1試合あたり0.19個の増加ということは1.38倍になったということでもある。
中日も同様に0.60個から0.79個と1.31倍になっている。大きく減らした巨人は昨シーズンと比べて0.63倍。明らかに犠打を選択するケースは減っている。
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増減に大きく変動のあったDeNA、中日、巨人。その内、昨シーズンから監督が変わっているのは中日と巨人だ。もしかすると、チーム方針が変わったことも影響しているのかもしれない。
例えば、原辰徳監督に変わった巨人の場合。1試合をのぞいて、坂本勇人と丸佳浩の2人を開幕から犠打の機会が多いであろう2番に起用している。
基本的に、打撃面で球界屈指の実力を持つ両選手に犠打のサインを出すことはない。犠打が多い打順ともいえる2番に、両選手が配置された結果、犠打を選択する機会が減っているのだろう。
一方、DeNAはアレックス・ラミレス監督が続投。そのなかで犠打が増えたのは、作戦面で何かしら変更があったからと推測できる。
2016年の就任当初から、データに基づく采配をしてきたラミレス監督。その成果なのか、2016年には前年の最下位から3位に躍進。翌2017年は3位からクライマックスシリーズを勝ち抜き、日本シリーズにまで進出を果たした。しかし、昨シーズンは4位と一歩後退してしまう。
今シーズンは「何か」を変えようという意図もあるのだろう。定番だった「8番・投手」も廃止。また、先に記したとおり、昨シーズン以上に犠打を増やしてきた。ファンの目に見える部分でも、大きな変化が起こっているのである。
シーズンはまだ100試合以上も残っており、犠打数がこのまま推移するかは不明。だが、この傾向を追いながら観戦するのもおもしろそうだ。
※数字は2019年5月16日終了時点