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床田覚醒で広島の先発ローテが改善 18年の課題から見る今季開幕

2019 5/8 07:00青木スラッガー
床田寛樹ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

セ4連覇を狙う広島 18年に生まれた課題はどうなった

開幕から1か月が経過し、徐々に各チームの戦力が鮮明になってきた。ここまでの戦いぶりを振り返るうえで、ひとつ注目したいのが、今季のチームは2018年シーズンのチームと比較し、どれだけ進化しているのかという点。“弱点”とされていたポイントを克服できているかどうかが、そのわかりやすい指針となるだろう。

そこで「2018年シーズンに生まれた課題に対し、今季はどのような動きがあったのか」という視点から、各チームの開幕1か月を見ていきたい。今回は開幕直後の戦いで大きく躓いたが、中旬から怒涛の8連勝で一気に巻き返してきた広島編。

年々悪化していた先発投手防御率

昨季の広島は4月後半に首位に立ち、“鯉のぼり”の時期にはすでにセを制する体制を整えていた。そこから最後まで一度も首位の座を譲らず。2位チームとの直接対決で8割以上の勝率を記録するなど大事な試合での強さが目立ち、実際のゲーム差以上の強さを感じさせる圧倒的な戦いぶりで球団史上初のリーグ3連覇を達成した。

ただ、その3年間のチームを比較すると、得失点差は2016年から順に187点、196点、70点と推移。昨季も得点に関しては2017年とほぼ変わらない721点をたたき出した。しかし失点は前年から111点増、2016年と比べれば154点増になる651点を記録。投手陣には綻びが出るシーズンとなった。

先発・リリーフ別に見ると、特に先発陣。チーム防御率4.12、救援防御率3.87に対して先発防御率は4.26となり、過去3年で初めて4点台に乗った。(先発防御率:2016年は3.29、2017年は3.71)

エース格に躍進した大瀬良大地、ジョンソンは10勝以上して防御率も安定していたが、ローテの3番手以降に不安。野村祐輔、薮田和樹、九里亜蓮、岡田明丈らが揃って数字を落としている。彼ら実績のある先発投手の復活か、または新たな若手先発投手の台頭が、4連覇への至上命題といえそうだ。

2018広島の主な先発投手の成績ⒸSPAIA

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3年目床田が覚醒 チームは苦戦も先発ローテーションは向上の兆し

開幕から1か月で課題の先発投手事情はどうなっているだろうか。

2019広島の主な先発投手の成績ⒸSPAIA

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昨季の快投で初の開幕投手を勝ち取った大瀬良は今季も好調を維持。4月までの勝敗こそ2勝2敗だが、1試合平均7回以上を投げて防御率1点台を残し、エースとしてチームを引っ張っている。右腕でそこに続くのが元エースの野村で、4月までに2勝を挙げて今季は復活の気配だ。

しかし、左腕エースのジョンソンが立て続けに早い回でKOを食らう不調。4月は5登板中、4回までの降板が3度と深刻な状況にある。また岡田、九里も良い投球を見せられず、薮田は開幕二軍スタート。ここまでは今季も実績のある先発投手たちに元気がない。

そんな中で、救世主となっているのが3年目左腕の床田寛樹だ。1年目に肘の手術を受け、昨季は一軍登板がなかったが、復帰して開幕ローテを掴んだ今季は2戦目で2年ぶりの勝ち星。4月は4登板で4勝、防御率0.93と驚異的な活躍を残した。また、今季から先発転向のアドゥワも4月までで勝ち星こそないがまずまずの投球。新たな若手先発投手が台頭してきた。

総合的に見ると、開幕から1か月の先発防御率は昨季よりもはるかに良い3.73をマーク。大瀬良、野村、床田の3本柱を軸に善戦している。8連勝のときは先発登板した全員が5回を投げ切って自責点は最大で2点までしか許さず、先発投手の貢献が非常に大きかった。

開幕から苦しい戦いを強いられた広島だが、昨季からの課題は良い方向に向かっている。今後必要なのはジョンソンら実力者の復活。そこに加え、打線に昨季までのような勢いが戻れば、一気に混戦を抜け出してくるかもしれない。