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王・長嶋は毎試合2塁打!? 塁打数で見るプロ野球

2019 5/7 07:00勝田聡
笑顔の王貞治Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

記憶に残りにくい塁打数

プロ野球の歴史にさんぜんと輝き、そう簡単には破られないであろう数字はいくつもある。王貞治(元・巨人)の868本塁打や金田正一(元・巨人他)の400勝といった通算記録もそうだし、福本豊(元・阪急)のシーズン106盗塁もその一つであろう。

本塁打数や勝利数、そして盗塁数は単純な積み上げで計算でき、タイトルとしても制定されている。そのためファンの記憶に残りやすい。 しかし、タイトルとして制定されておらず、記憶に残りにくい数字でも輝いているものはいくつもある。その一つが塁打数だ。

塁打とは「単打✕1+二塁打✕2+三塁打✕3+本塁打✕4」で計算され、強打者になればなるほどその数字は増えていく。昨シーズンの最多塁打数はセ・リーグが山田哲人(ヤクルト)の305、パ・リーグが秋山翔吾(西武)の322だった。

計算式を見てもわかるとおり、本塁打数が多ければ多いほど塁打数が増えるのは間違いない。しかし、本塁打数だけが多ければいいかというとそうではない。塁打数を増やすためには、本塁打を打つことができるだけでなく、その他の安打を放つことも求められるのである。

昨シーズンの塁打王は山田哲人と秋山翔吾

昨シーズンの結果を振り返ってみる。山川穂高(西武)が47本塁打でパ・リーグ本塁打王に輝いた。秋山の24本塁打の倍近い数字だが、塁打数は319となっておりわずかに及ばなかった。安打数そして二塁打数で大きく上回った秋山が最多塁打となったのである。もちろんタイトルではないが、秋山がチームに大きく貢献したことは誰しもが認めるところだろう。

一方のセ・リーグでは山田がリーグ5位の34本塁打を放ち、165安打はリーグ4位。トリプルスリー(打率3割、30本塁打、30盗塁以上)を達成するだけあり、バランスよく塁打数を伸ばしている。 セ・リーグ2位となった筒香嘉智(DeNA)は38本塁打(リーグ3位)、33二塁打(リーグ4位)だったが、トータルでは山田に及ばなかったのである。

2018年塁打ランキングⒸSPAIA

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さて、シーズン最多塁打はいつの時代のものなのだろうか。歴史をひも解いてみると、その記録が古いことがわかる。なんとセ・パ2リーグ制元年の1950年に記録された小鶴誠(松竹)の376塁打が、70年近く経った今も破られていないのである。

しかも当時の試合数は130試合。現在の143試合と比べると、13試合少ないにもかかわらず、球界を代表する打者である山田も秋山も届かなかったのである。この事実からもそのすごさがよくわかるだろう。 ちなみにこの年の小鶴が記録した161打点、143得点も塁打数と同様にプロ野球記録となっている。

やっぱりすごい!王貞治は圧倒的な塁打数

一方、通算での塁打数を見ると、王の5862塁打が圧倒的だ。2位の野村克也(元・南海他)の5315塁打を大きく上回っている。

通算塁打ランキングⒸSPAIA

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さらにすごいことがある。この数字を王は2831試合で記録した。つまりこれは、1試合あたり2.07塁打となる。単純計算ではあるが、プロ入り1試合目から現役を引退するまでの間、全試合で二塁打を1本放っているのと同じこと。

昨シーズンの山田や秋山を見ても分かる通り1年単位では、そう難しいことではないかもしれない。しかし、生涯において達成するのは簡単なことではない。

歴代の塁打記録上位40傑(NPBのみ)を見ても、1試合あたり2を超えているのは長嶋茂雄(元・巨人)の2.00(4369塁打/2186試合)、タフィー・ローズ(元・近鉄他)の2.10(3509塁打/1674試合)、アレックス・ラミレス(元・DeNA他)の2.01(3509塁打/1744試合)と数えるほど。

ただし、外国人選手は塁打数が伸びにくい新人時代を日本で過ごしていない。そのことを考慮すると、やはり王と長嶋は別格の存在だったと言えるのではないだろうか。 昭和の時代に達成された記録が平成を超え、令和へと受け継がれていく。記録は塗り替えられるものではあるが、輝き続けるものがあってもいい。

※数字は2018年シーズン終了時点