先発転向で順調な滑り出し
昨季32ホールドを挙げるなど確かな存在感を示したオリックスの山本由伸。今季はかねてから熱望していた先発に復帰し、ここまで順調な滑り出しを見せている。
常時150km超の直球を軸にガンガン押していくイメージが強いが、変化球も多彩だ。魔球と言われる高速カットボールは直球とほとんど変わらない速さで、フォークボールも140km台中盤。シュートやカーブも操るため、縦横で勝負できる上に緩急も自在。今季初登板となったソフトバンク戦では、強力打線を相手に9回1安打無失点という快投を見せた。
2回目の登板となったロッテ戦でも安定感抜群の投球を披露。先制打は許したもののその後を締め、8回3安打1失点で今季初勝利を挙げた。3回目の登板となった日本ハム戦では、中盤につかまり4失点。今季初黒星を喫したが、最速155kmの直球を軸に途中までは圧倒的な投球を見せていた。
懸念材料だったスタミナ面の不安も払拭し、先発としてもブレイクの予感が漂う山本だが、どんなところが優れているのか。ここまで残している圧倒的な数字と併せて迫ってみたい。
変わらぬ腕の振りで打者を幻惑
直球が速く多彩な変化球を操る山本は、どの球種を投げる際にも腕の振りがほとんど変わらず、思い切りよく振り下ろすため打者は球種が読みにくく幻惑される。
また、左手のグラブの使い方や下半身の使い方が巧みで、体重移動もスムーズだ。重心がしっかりしているため、制球も乱れにくい。ただでさえ球が速く変化球にキレがある上、制球が安定しているとなれば、これを打ち崩すのは至難の業だ。
ここまで登板した3試合での成績がそれを証明している。防御率1.96、被打率.120はともにリーグ2位、被長打率.147、被出塁率.185はリーグトップと圧倒的だ。
金子弌大や西勇輝といった先発柱が2本抜けた状況で心配されたオリックス先発陣だが、山本がこの調子で怪我なく能力を発揮できれば、ある程度の穴は埋まると思われる。近い将来のオリックスのエース候補であることは間違いなく、今季の成績次第では侍ジャパンの先発候補に挙がってもおかしくないほどの逸材だ。
援護があれば、最多勝も狙える?
山本の成績をもう少し詳しく見ていく。1投球回あたり何人の走者を出したかを表すセイバーメトリクスの指標・WHIP【計算式:(与四球+ 被安打)÷投球回】は、0.65とリーグ2位。先発投手であれば、1.20未満であれば優秀とされていることから、いかに山本の数字が優れているかが分かる。
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また、投球の際の運の要素を排除した指標・FIP【投手だけがコントロールできる被本塁打数、与四球数、奪三振数の3つの数字で算出する防御率】もリーグ2位の2.34をマーク。この指標では、野手の守備力といった投手だけではコントロールできない要素を排除しているため、投手としての純粋な能力を把握できる。
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こうした数字を踏まえると、山本が失点を重ねていく姿は想像しにくい。
その一方で、山本に対するここまでの援護率は0.75。まだ3試合での数字だが、山本が白星を重ねていくためには、野手陣のサポートも必要となってくる。打撃陣が援護し、手堅い守備で極力エラーを減らしていけば(結果には表れないエラーも含む)、最多勝も視界に入ってくるだろう。
無限の可能性
まだ20歳の山本。既に類い希な能力を見せつけているが、まだまだ伸びしろは十分で無限の可能性を秘めている。プロ2年目となる昨季に自己最速となる157kmもマークしており、160km到達も夢ではないだろう。
直球と球速がほとんど変わらないカットボールやシュートで打たせ取ることができ、カーブやフォークといった縦の変化で三振を奪うこともできる。全盛期の松坂大輔やダルビッシュ有は、奪三振が多いこともあり球数が比較的多かったが、山本の場合、得意のカットボールやシュートなどを有効に使って球数を減らすことを意識していけば、身体への負担も軽減できるはずだ。
オリックスのエース、そして日本を代表するエースへ。山本の進化から目が離せない。
※数字は2019年4月21日終了時点