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菅野ら一発を浴びにくい投手も次々被弾 2019年は本塁打急増で投手に受難?

2019 4/14 07:00青木スラッガー
バッター,ⒸShutterstock.com
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本塁打“急増”?の今季 投手の被本塁打率に注目

今季のプロ野球は開幕から“空中戦”が目立つ。各チームが10試合を消化した4月10日終了時点、12球団全体で136本塁打が飛び出した。1試合あたり2.17本、シーズン換算では1862本のペースとなる。昨季は1試合あたり1.96本の1681本だった。

近年の年間本塁打数の推移を見ると、統一球導入から最初の2年間は1000本以下に落ち込んだが、反発係数が見直された2013年には1311本と急増。2015年は1218本と一旦落ちついたが、対前年で2016年は123本増、2017年は159本増、2018年は181本増と、年々、本塁打は増えている。

年間本塁打数の推移

ⒸSPAIA

大リーグでは数年前から、アッパー気味のスイングで打球角度を重視する「フライボール革命」により、本塁打が急増。もしかすると、その技術を取り入れようとした打者がいた可能性もある。開幕直後のため、偶然ともいえる。だが、日本にも本塁打急増の流れが起きているのかもしれない。

このままホームランバッターが増えていくとすれば、苦労するのは投手だろう。もともと被弾が多い投手は良い投球が難しくなり、被弾が少ない投手の価値は高まっていくはず。そういった被弾の傾向に注目してみたい。

昨季は今永、藤平、高梨らが被弾に泣く

1試合(9イニング)あたりに打たれた本塁打数を表す「被本塁打率(HR/9)」をもとに、昨季「本塁打をよく打たれた投手」「あまり打たれなかった投手」を見ていきたい。先発投手は80投球回以上、リリーフ投手は40登板以上を対象とした。

2018年 被本塁打率ワースト15(先発投手80投球回以上)

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先発投手では、DeNA・今永昇太の被本塁打率が最も高かった。84.2回で18被弾。11勝を挙げた前年は148回で13本塁打、被本塁打率0.79に抑えており、急激に被弾が増えている。

楽天・藤平尚真、日本ハム・高梨裕稔(現ヤクルト)も1試合2本に迫るペースで本塁打を打たれていた。両投手のホームはあまり本塁打が出やすい球場ではない。高梨はそこから本塁打が出やすい神宮球場へとホームを移すことになる。

被本塁打率ワースト15に入った先発投手の多くは防御率4点台に達し、安定した結果を残すことができなかった。例外はソフトバンク先発陣だ。石川柊太、千賀滉大、東浜巨は被本塁打率が高かったものの、3点台半ばの安定した防御率に抑え、勝ち星も2桁に乗せていた。

2018年 被本塁打率ワースト15(リリーフ投手40登板以上)

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リリーフは、ロッテ・大谷智久が最も高い被本塁打率1.94を記録し、防御率も5点台に達した。次にヤクルト・風張蓮が1.72と続く。風張は奪三振率が9.52と抜群だが、一発に泣かされるケースが多く勝ちパターン入りに課題を抱えた。

西武は野田昇吾、平井克典と勝ちパターンに入る2人の被弾が多いものの、防御率は3点台半ばとまずまずに抑えている。中日・又吉克樹は2017年の被本塁打率が0.57と抜群だったが、昨季は1.31まで悪化。防御率も6点台と苦しんだ。中日は鈴木博志も被弾が目立ち、クローザー候補として大きな課題になった。

ヤクルトのエース候補・原が驚異的な被本塁打率

次に本塁打をあまり打たれなかった投手を見ていきたい。

2018年 被本塁打率ベスト15(先発投手80投球回以上)

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先発はヤクルト・原樹理が驚異的な数字を残している。本塁打の出やすい神宮球場をホームとしながら110.2回で3被弾しか許さず、被本塁打率0.24。2017年は131.1回で19被弾、被本塁打率1.30と少々一発を浴びやすい投手だったが、この点は劇的に改善されている。

巨人・メルセデスが被本塁打率0.39で2位。メルセデス以下もロッテ・ボルシンガー、広島・ジョンソン、オリックス・ディクソン、阪神・メッセンジャー、中日・ガルシア(現阪神)と10位以内に外国人投手が多く入った。

2年連続沢村賞に輝いた巨人・菅野智之は、被本塁打率も5位の0.62とさすがの数字。被本塁打率10位以内で奪三振率が8を超えたのは菅野のみ。外国人投手を中心に、ボールを動かしてゴロを打たせる投手が被弾を少なく済ませている傾向にありそうだが、被弾を少なく抑えながらも三振を多く奪っている。

2018年 被本塁打率ベスト15(リリーフ投手40登板以上)

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リリーフはやはり勝ちパターンに入った投手の名前が多く並ぶ。その中でトップ3はパ・リーグのサイド左腕3人。楽天・高梨雄平、日本ハム・宮西尚生、ロッテ・松永昂大が40イニング以上でそれぞれ1本しか被弾を許していない。

楽天は青山浩二、ハーマンのセットアッパーが防御率とともに被本塁打率も抜群の数字だった。中日はブレイクした佐藤優が優秀な被本塁打率。投手の被弾が多いチームで、リリーフ再建の鍵となるだろう。

今季は菅野ら好投手の被弾が目立つ

昨季は被弾が少なく好成績を残した投手が、今季もその投球を継続できるのだろうか。また、被弾に泣いた投手は本塁打急増の流れに逆らえるのか。今季の注目ポイントとなりそうだ。

ここまでは、昨季、被弾が少なかった投手が一発を浴びるケースが目立っている。開幕から菅野が3本、昨季被本塁打率0.75だったヤクルト・小川泰弘も3本、パ・リーグでも昨季は被本塁打率0.57だったソフトバンク・ミランダが5本、被本塁打率0.80だったオリックス・アルバースが3本の本塁打を許した。

投手にとって受難のシーズンが始まろうとしているのだろうか。