広沢、川口、ハウエル、マックら獲った1995年
20年以上も前の話になるが、1995年シーズンのペナントレースは40代以上の野球ファンの印象に強く残っていることだろう。
前年に5年ぶりの日本一になった巨人が大補強。ヤクルトの四番を打っていた広沢克己(広澤克実)と広島の川口和久をFAでダブル獲り。さらに、ヤクルトを自由契約となったジャック・ハウエルを獲得した。それにとどまらず米大リーグ・ツインズからシェーン・マックを2年8億円で獲得。テレビゲームで子供が編成したくなるような超強力重量打線を編成し、優勝候補の大本命として開幕を迎えた。
ⒸSPAIA
そして、皮肉にも開幕カードがヤクルトとの3連戦だった。
開幕戦は斎藤雅樹の3安打完封で勝利し、2戦目も桑田真澄が8回まで2安打無失点の好投で連続完封目前。しかし、9回先頭の飯田哲也に頭部死球を与え、危険球退場となってから流れが変わった。急遽登板した橋本清、石毛博史が打ち込まれ、まさかの逆転負け。続く3戦目も落としてしまい、開幕カードは負け越しとなった。
20年ぶりに目の前で胴上げ許す
結局、4月は首位のヤクルトに4.5ゲーム差をつけられ3位スタートとなった巨人。その後も波に乗れず、5月には桑田が右ヒジの故障で戦線離脱、8月にはハウエルが途中退団と予期せぬ事態が立て続けに起こった。
逆にヤクルトは広沢、ハウエルの抜けた穴をオマリー、ミューレンでガッチリ補強。象徴的だったのは9月9日だ。テリー・ブロスが巨人相手にノーヒットノーランを達成。このシーズン、ブロスは対巨人において5勝無敗、防御率0.23とカモにし、9月30日には巨人を完封して胴上げ投手となった。
目の前で相手の胴上げを許すのは巨人にとって20年ぶりの屈辱だった。
清原、石井、ヒルマン獲得した1997年
1997年シーズンも巨人は大補強を敢行したにも関わらず、苦いシーズンとなった。
前年の96年にリーグ優勝を達成。オフには西武からFAとなった清原和博、近鉄からトレードで主砲の石井浩郎とパ・リーグを代表するスラッガーを獲得した。さらにロッテからエースのヒルマンを引き抜くなど、他球団の主力選手を集めまくったが、9月上旬まで最下位(最終順位は4位)と大苦戦を強いられた。
ⒸSPAIA
結局、優勝争いには全く絡むことなく、ヤクルトに20ゲーム差を付けられ球団史上5度目のシーズン負け越し。逆にヤクルトは加入1年目のホージーが松井秀喜を抑えて38本で本塁打王に輝くなど、投打がかみ合い日本一に上り詰めた。
丸、炭谷、中島、ビヤヌエバら加入の2019年
さて、今季はどうなるのだろうか。巨人はFAで広島からリーグMVPの丸佳浩、西武から炭谷銀仁朗を獲得。そのほかにもオリックスを自由契約となった中島宏之に加え、昨季MLBで20本塁打のビヤヌエバ、日米通算170勝の岩隈久志と契約するなど、30億円を超えるともいわれる大補強を行った。
ⒸSPAIA
一方のヤクルトは五十嵐亮太の古巣復帰や寺原隼人(ともに前ソフトバンク)ら控えめな補強に留めた。ヤクルトで11シーズンプレーし、引退後はヤクルト、横浜でコーチ、野村監督時代は専属広報も務めた杉村繁ヤクルト巡回コーチはかつてからこう話している。
「ヤクルトというチームは決して毎シーズン優勝を義務付けられるというチームではない。ただ、優勝経験もそれなりに持っている。だから、いけると思ったときは一気に勢いづくという面で勝ち方を知っている。その反面、今季はもうダメだと思ってしまうと諦めた雰囲気になってしまいがちなことも事実。そういう意味では混戦から終盤に抜け出す展開になると面白いチームなのかな」
まだまだ序盤ではあるが、現在ヤクルトと巨人が首位攻防戦の真っ最中。開幕からつまずいている広島の戦いぶりからみて、セ・リーグは混戦になる気配が漂う。今後も巨人とヤクルトの戦いから目が離せそうにない。