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菊池雄星MLB移籍で日本の「左腕エース」は誰に? 侍ジャパンに必要不可欠なピース

2019 3/4 11:00青木スラッガー
田口麗人,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

メジャー挑戦の菊池雄星に次ぐ「左腕エース」は?

3月9日、10日に日本代表とメキシコ代表の強化試合が開催される。東京五輪もいよいよ来年。選出メンバーの予想など、じわじわと侍ジャパンの話題が盛り上がってきているが、今の日本球界から、世界と戦うために足りないポジションはないか探してみると、「左腕エース」が不足しているかもしれない。

このオフは西武の菊池雄星がMLBへ移籍。3年連続で2桁勝利を挙げ、158キロの日本人左腕最速記録も樹立している、誰もが認める日本の左腕エースだ。代表チームの先発ローテーションにも間違いなく入ってくる存在だが、シーズン中に開催される東京五輪にMLB球団からの選手派遣はおそらく不可能で、来年のジャパン招集は考えにくいだろう。

過去の代表戦では、アテネ五輪で予選のアジア選手権から先発で3勝を挙げた和田毅(ソフトバンク)をはじめ、杉内俊哉氏、内海哲也(西武)、能見篤史(阪神)といった先発左腕が活躍した。しかし杉内氏は現役引退し、ほかの3人も30代後半を迎え、代表入りは下に譲る世代となってきている。では、現役の若手で菊池に次ぐ先発左腕というと誰がいるだろうか。

なかなか継続的な活躍に至らない先発左腕

昨季はルーキー東克樹(DeNA)が11勝5敗・防御率2.45の好成績を残して新人王に選出。セ・リーグの左腕でナンバーワンの投球を見せた。西武新加入の榎田大樹も11勝を挙げ、菊池とともに先発ローテーションの中心としてリーグ優勝の立役者となった。

ただ、まだ活躍して1年。いきなりのフル回転がたたったのか、両投手ともシーズン終了からキャンプ中にかけて肩肘に異変を訴え、オープン戦が開幕した現在は戦線離脱となっている。「2年目のジンクス」という言葉もある。体の状態も含め、真の実力を判断するにはもう1年良い投球を見せてほしいところだ。

将来を見据えた若手中心のメンバーで臨む今回のメキシコ代表との強化試合では、先発左腕に今永昇太(DeNA)、田口麗斗(巨人)の2人が招集された。田口は2017年まで2年連続2桁勝利、今永も2017年に11勝を挙げた実績のある左腕だ。しかし、昨季は田口が2勝8敗・防御率4.80、今永が4勝11敗・防御率6.80でともに不振。今は復活を目指す立場になる。

そのほかの先発左腕においても一時的な活躍は見せるも、シーズンをまたいで継続できないケースが目立っている。DeNA・濱口遥大、阪神・岩貞祐太は昨季2桁勝利に届かず、石田健大(DeNA)、加藤貴之(日本ハム)、辛島航(楽天)なども昨季は成績を落とした。

日本ハム時代の2012年にパ・リーグMVPに選出された吉川光夫(巨人)も、その後のシーズンはなかなか勝ち星が伸びず、今季からはリリーフに転向の予定だ。2年、3年と続けてエース級の活躍を残す左腕が、菊池を除いて現れていない。

多くの左腕たちに代表入りのチャンスが

現状、東京五輪の左腕エース候補は白紙といっていいだろう。見方を変えれば、先発左腕たちにとっては大きなチャンスである。右の先発には2年連続沢村賞の菅野智之(巨人)をはじめ、千賀滉大(ソフトバンク)、則本昂大(楽天)、岸孝之(楽天)といった各球団のエースが揃っており、まだ実績の少ない投手がここに割り込んでいくのは簡単ではない。

その点、絶対的な存在がいない先発左腕は、代表入りへのハードルが下がっていると言え、今季から来季にかけて力を示すことができれば、有力な代表候補になる。昨季不振だった今永、田口が強化試合の代表メンバーに選ばれているのも、稲葉篤紀監督が左腕不足の現状から、彼らの復活の必要性を強く感じているからではないだろうか。

昨季ブレイクの兆しを見せた先発左腕としては、6勝を挙げた笠原祥太郎(中日)、2勝の堀瑞輝(日本ハム)がいる。まだ一軍登板が少ない左腕としても成田翔(ロッテ)は日米野球代表、塹江敦哉(広島)、寺島成輝(ヤクルト)はU-23ワールドカップ代表に選出され、稲葉監督に素質を高く評価されている。

果たして、これから1年半で「絶対的」と言える存在まで登り詰め、大舞台で日本に勝利をもたらす先発左腕は登場するのだろうか。今季のプロ野球は左腕投手の投球に注目していきたい。