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高橋奎二、大江竜聖……飛躍の期待のかかる「高卒左腕」

2019 2/24 11:00勝田聡
高橋奎二,大江竜聖,ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

規定投球回到達は菊池のみ

このオフにポスティングシステムを用いて、西武からMLBのシアトル・マリナーズへと移籍した菊池雄星。3年連続2ケタ勝利をマークし、昨シーズンはエースとしてチームを優勝へと導いた。2010年のプロ入りから9年で、球界を代表する左腕に成長したのだ。

昨シーズンの投手成績に目を向けてみると、菊池を除規定投球回に到達した高卒左腕はひとりもいなかった。救援投手に目を向けてみても、両リーグのセーブ、ホールド上位5人に高卒左腕は入っていない。

菊池のプロ入り初登板は2年目の2011年だったものの、ローテーションに入ったのは4年目の2013年。7年目の2016年には初の2ケタ勝利と規定投球回到達を達成し、徐々に実績を積み上げていった。

高卒左腕が早い段階から活躍することが、簡単ではないことがよくわかる。

ローテーション争いへ高橋奎二

菊池が不在となった球界の「高卒左腕」だが、今シーズンは新たなスター候補が生まれるかもしれない。その候補生のひとりが高橋奎二(ヤクルト)だ。

高橋は2015年ドラフト3位で、龍谷大平安高校からヤクルトへ入団。大きく振りかぶり、高く足を上げるフォームから「左のライアン」と呼ばれることもあり、スケールの大きな投手として期待されていた。

しかし、2年目までに一軍での登板はなく、ファームでも目立った成績を残すことはできなかった。2年目は26.2回を投げ28奪三振と奪三振能力は高い一方、19与四球と制球面で苦労していた。

3年目の昨シーズンはフォームを変更し、足を高く上げることをやめた。「脱ライアン投法」である。その効果が現れたのか、89.2回で45与四球とBB/9(1試合にいくつ四球を出すかを表す指標)は6.41から4.52へと良化。

9月5日には待望の一軍初登板のチャンスを掴むが、結果は5回5失点(自責4)と崩れ、初登板初勝利とはならなかった。幸いその後は長いトンネルに入ることもなく、登板3試合目で白星を手にし、いい形でシーズンを終えている。残した成績は3試合で1勝1敗、防御率3.00。高卒3年目の投手としては上々の数字と言っていい。

特に目を引いたのがK/9(1試合にいくつ三振を奪うかを表す指標)だ。20回を投げ、15三振を奪っている高橋のK/9は12.00である。各リーグのトップ規定到達者とその数字は、セ・リーグでは東克樹(DeNA)の9.06、パ・リーグでは則本昂大(楽天)の9.33。高橋は規定投球回に及んでいないが、奪三振能力の高さはわかるだろう。

プロ入り4年目となる今シーズンは、先発ローテーション候補として期待されており、キャンプも一軍スタートだった高橋。菊池がローテーション入りした4年目同様、大きく飛躍したいところだ。

今季は中継ぎ起用となる大江竜聖

期待がかかる「高卒左腕」は高橋だけではなく、高卒3年目の大江竜聖(巨人)もそうだ。昨年秋に行なわれたMLBオールスターとのエキシビジョンマッチで、巨人の2番手として起用されたことからも期待の高さがうかがえる。

試合では本塁打を許したものの、2回1失点、2奪三振とまずまずの成績を残している。その後はアジアウインターリーグにも参加し、オフも野球漬けで春季キャンプへ突入。

第1クールから順調にメニューを消化。2月17日に行なわれたDeNAとの練習試合でも1.2回を完全投球。これが3試合目の実戦登板となったが、トータル5.2回でひとりの走者も許しておらず、まさに絶好調の状態。今シーズンは中継ぎとしての起用が濃厚となっているものの、好投が続けば先発登板の機会も訪れる日がくるだろう。

また、復活を目指しているのは松井裕樹(楽天)と田口麗斗(巨人)だ。松井は守護神としてチームを支えてきたが、昨シーズンは調子を崩し配置転換もあった。田口も2年連続2ケタ勝利から一転、2勝8敗と6つの負け越しと苦しんでいる。両投手の復活はチームが上位争いをするためにも欠かせない。

その他にも、今村信貴(巨人)、成田翔(ロッテ)、堀瑞輝(日本ハム)といった選手が控えている。菊池はMLBの世界に羽ばたいたが、NPBには多くの「高卒左腕」が存在する。果たして誰が飛躍する年とするのだろう。