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ソフトバンク・上林誠知、無限の可能性を秘める侍ジャパンのキーマン

2019 2/1 07:00浜田哲男
上林誠知,ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

常勝軍団のレギュラーに定着

2年連続日本一を達成したソフトバンク。12球団一選手層の厚い常勝軍団で、上林誠知はレギュラーに定着した。入団4年目の2017年に初めて開幕戦のスターティングメンバーに名を連ねると、走攻守で躍動。134試合に出場し、規定打席に到達。打率.260、13本塁打、51打点を記録する飛躍の年となった。

過去4年間の打撃成績

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2018年は全143試合に出場し、打率.270、22本塁打、62打点と前年よりも数字を伸ばした。また、捕殺数10は2年連続で12球団1位。強肩と広い守備範囲でチームの勝利に大きく貢献している。

三塁打数は12球団ダントツ

入団時点で50m走6秒0、遠投は105mと類い希な身体能力を持つ上林。特筆すべきは三塁打の多さで、2018年は12球団ダントツとなる14本の三塁打を記録。シーズンで14本以上の三塁打を放ったのは、1953年に16本の三塁打を記録したラリー・レインズ(阪急)以来65年ぶりの快挙だ。

三塁打数ランキング

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上林の能力は、セイバーメトリクスの指標PS(Power-Speed-number)でも明らかだ。

PSランキング

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PSの算出式は(本塁打×盗塁×2)÷(本塁打+盗塁)となり、数値が大きいほどパワーとスピードを兼ね備えているということになる。同僚の柳田悠岐をはじめ、西武の外崎修汰や秋山翔吾、楽天の田中和基ら、走攻守に優れた選手達に次ぐ数値を残している。

課題は出塁率と得点圏打率

優れた身体能力を持ち、着実に成長のステップを踏んでいる上林だが、課題も多い。2018年のパ・リーグ打撃個人成績では、出塁率.315で24位、得点圏打率も.262で20位となっている。ここぞという場面での印象的な一打や縦横無尽にグラウンドを走り回るイメージが強いが、ソフトバンクのレギュラーとして君臨していくには、少々物足りない数字だ。

昨季は4月中旬から2番に座り、その後は1番、6番、7番、8番と、シーズンを通じて打順を固定されなかった。後半戦は、主に1番に座っていた牧原大成が怪我で離脱したため、1番を打つことが多くなった。今季以降も1番や2番といった上位打線を担うのであれば、出塁率の向上は大きな課題となる。出塁率が上がれば、昨季13個だった盗塁数の増加も見込めるだろう。

侍ジャパンのキーマン

今秋にプレミア12、来年は東京五輪、そして再来年はワールド・ベースボール・クラシック(WBC)と大きな大会が続く。

侍ジャパンの外野陣は、これまでの大会で招集されていたメンバーを見ても、柳田、秋山、DeNAの筒香嘉智、広島の鈴木誠也、巨人の丸佳浩など、層が厚い。そこに日本ハムの近藤健介、西川遙輝、オリックスの吉田正尚、楽天の田中和基も控えている。

それでも走攻守に優れ、勝負強い打撃が魅力の上林が割って入る可能性は十分にあり、まだ23歳と若いため伸びしろもある。

2017年の秋に開催されたアジアプロ野球チャンピオンシップでは、同大会の参加資格がU-24(1993年1月1日以降生まれ)、または入団3年目以内ということもあり、5番・右翼手として先発出場。開幕戦となった韓国戦では、タイブレーク制の延長10回表に3点を失い敗色ムードが流れかけた直後に、起死回生の同点3ランをバックスクリーンに放り込む(その後、チームはサヨナラ勝ち)など、パンチ力と勝負強さを見せた。

打撃フォームは稲葉篤紀監督とそっくり

上林の打撃フォームは、侍ジャパンを率いる稲葉監督の現役時代の打撃フォームを彷彿とさせる。強靱なリストを活かし、軽くコツンと当てるようなインパクトで、伸びのある打球を放つ。ライナー性の当たりが多いことも共通している。

上林は稲葉監督のフォームを参考にしているといい、稲葉監督も「僕に似ている」と上林を気にかけている。かつて侍ジャパンの主軸として、五輪やWBCでも活躍した指揮官。無限の可能性を秘めた上林のさらなる成長を期待しているはずだ。