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「最高のタイミング」で西武入団 26歳の若獅子・森脇亮介

2019 1/26 11:00永田遼太郎
森脇亮介,ⒸSPAIA

ⒸSPAIA

決して遠回りではなかった

「オールドルーキー」
人は彼をそう呼ぶかもしれない。埼玉西武ドラフト6位・森脇亮介。今季入団の新人選手では福岡ソフトバンク7位の奥村政稔(三菱日立パワーシステムズ)とオリックス3位の荒西祐大(ホンダ鈴鹿)と並ぶ最年長の26歳。それでも彼はプロ入団までの道程を決して遠回りしたとは感じていない。

「今年入った新人の中では自分が一番年上なんですけど、周りから見たらここまですごく時間がかかったとか、遠回りしたんじゃないかって思われる年齢かもしれないです。だけど、自分は本当にこのタイミングじゃなきゃ(ドラフトにも)かからなかったと思うんです。仮に高校や大学の時に指名があっていたとしても、プロでは(実力が)足りてない状態で入団していたんじゃないかと思いますし、もしかしたらもうクビになっていたかもしれない。だから自分にとってはここが本当にベストなタイミングだったんじゃないのかなと」

〝指名漏れ″がきっかけに

出身は京都府福知山市。公立高校の教員で野球部監督を務めていた父・尚志さんの下で育られた。高校は父とつながりが深かった奥本保昭監督が指導する塔南高校に進学。1年夏からエースとして活躍し、3年夏の最後の大会では龍谷大平安の酒居知史(現千葉ロッテ)と投げ合って1対2で敗れ、甲子園出場はならなかった。

当時の京都府大会でも「屈指の右腕」と称されていたように、この時すでに最速146キロを計測。〝ドラフト候補″として名前が挙がっていたが、彼が選んだ道は大学進学だった。日本大学、そして社会人野球のセガサミーへ進んで自分に足りないスキルを磨き上げ、ピッチャーとしての評価を1ランクも2ランクも上げていった。

社会人野球2年目の2016年にはNTT東日本の補強選手として、都市対抗野球にも出場した。準々決勝ではその年優勝したトヨタ自動車を相手に5回からリリーフ登板。サヨナラ負けを喫するも5回2/3を1失点に抑える好投を見せた。それでもプロへの道は開けなかった。

「2016年はNTT東日本さんの補強にも行かせてもらって、もしかしたらって気持ちもあったんですけど、あまりその年は調子自体も良くなかったですし…」

この時、いわゆる〝指名漏れ″を経験した。ただ、この経験は森脇にとって決して無駄なものではなかった。これをきっかけに森脇は野球に取り組む考えを少しずつ変えていくことになる。

自分の結果は二の次

プロ入りや自分の投球内容ばかりを意識するのではなく、チームとしての勝利、結果を第一に考えて、自身の結果や内容については二の次にしようと心を改めた。そして自身の野球生活をこのまま社会人で終わらせてもいいとまで考えるようになると、不思議と結果もついてくるようになった。社会人4年目を迎えた2018年のシーズンは、森脇にとってある種の悟りを開いた一年となった。

「グラウンド全体が見渡せるくらい気持ちに余裕が出来てきたんです。前まではバッターだけを見ている、そんな感じだったんですけど、結果的に社会人最後の年になった4年目のシーズンは本当にみんなと一緒に戦っているという意識を強く持てた一年になりました。それが結果にも上手く繋がって、自分自身も自然と良くなっていった、そんな一年だったんじゃないかと思うんです」

森脇亮介

決め球として使っていたフォークもさらに磨きがかかった。

「フォークを投げ始めたときの失敗って低めを意識し過ぎたり、実際に低めに行き過ぎた失敗が多かったんですね。以前は真ん中を狙って投げても下にボールが行ってたほどだったんですが、それを修正する意味でキャッチャーのマスク辺りをめがけて投げてみようと練習を始めてみたら、どこでボールを放してという感覚的な部分が徐々に分かるようになったんです。自分の思ったところへボールが行くようになったのも、そこからだと思います」

その成果は2018年の都市対抗野球で表れた。

球界のエースになりたい

1回戦のNTT西日本戦、先発した森脇は最速149キロのストレートとフォークボールのコンビネーションを武器に12奪三振、わずか4安打に封じる見事な完封勝利を飾り、ネット裏のスカウト達に強いインパクトを与えた。さらに準々決勝のJR東海戦でも先発し、6回2安打2失点で試合を作ってセガサミー野球部初の準決勝進出に貢献した。

連投で臨んだ準決勝はさすがに3回でマウンドを譲る結果となり、決勝進出を逃したが、自身でも過去最高とも言えるシーズンに自信を持てるようになった。

そんな社会人4年目について森脇は、こんな心境の変化を語っている。

「3年目だった2017年に『また来年同じような成績しか残せないんだったら本当に社業に専念して、野球から離れなきゃいけないのかな』とも思っていたんです。そういうことを一度考えた、本当に野球を続けられなくなるかもしれないと思う経験が出来たことが、自分にとって物凄く財産になったと言いますか、大きかったんじゃないかって思うんですね」

だからこそ12月13日に行われた埼玉西武の新入団選手発表会でも500人集まったファンの前で「球界のエースと呼ばれる存在になりたい」と高らかに宣言した。

あえて球界のてっぺんを目指すと公言することで気持ちを奮い立たせ、即戦力を期待される立場の違いを自分自身に言い聞かせた。

「やるなら一番上を目指してやりたいですし、入って来た年齢もそうですけど本当に一年目から結果を出していきたいと思っています。評価は自分ではなく周りがすることですけど、そうした周りの人達にしっかり評価してもらえるようなピッチャーになっていきたいと思っています」

ライバル酒居との投げ合いに期待

2月1日のキャンプインに向けた新人合同自主トレでも、厳しいメニューをきっちりこなす姿は好感が持てた。そして手に入れた宮﨑南郷でのA班スタート。開幕までを逆算に入れたプランは自身の頭の中でしっかりと定まっている。あとは要所で結果を残していくのみだ。

高校最後の夏、ともに投げ合った千葉ロッテ・酒居知史が、森脇についてこんな風に話している。

「高校当時から森脇の注目度は高かったですし、その分(自分は)試合に勝つために必死でした。打席に立つともちろん球は速かったですし、ピッチャー同士の評価で言ったら(当時)雲泥の差で負けていたと思います」

ライバルの言葉でも分かる通り、元々の実力も十分あり、万全を期してのプロ入りだ。

そんな酒居との投げ合いを森脇自身も期待している。即戦力ルーキー・森脇亮介が本来の評価を手にするのはここからなのだ。

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