「大卒1年目投手」と「高卒5年目投手」
2月に控えているキャンプインに向け、新人合同自主トレで汗を流すルーキー選手の話題が増えてきている。今季入団のルーキーで一番のビッグネームは、4球団競合指名を受けた中日・根尾昂となるだろう。だが、即戦力として期待されるのはやはり、上位指名された大学・社会人出身組だ。
今季は特に、1位指名の大卒投手5人(ヤクルト・清水昇、巨人・高橋優貴、DeNA・上茶谷大河、西武・松本航、ソフトバンク・甲斐野央)のほか、2位指名のロッテ・東妻勇輔、中日・梅津晃大など逸材が多い。先発ローテーション、あるいは勝ちパターンのリリーフとして、1年目からどれだけの活躍を残せるか各球団ファンから注目されている。
「大卒1年目」の投手に注目するにあたり、2014年ドラフトで入団した「高卒5年目」の投手たちにも目を向けてみたい。両者は同学年であり、今季から同じプロの舞台でライバルとして戦うことになるからだ。既に4年間野球漬けの生活を送ってきた高卒5年目からすれば、大卒1年目の選手に「負けられない」という強い思いがあるはずだ。
野手の活躍が目立つ2014年ドラフト高卒入団組
全体的傾向として、投手が戦力となる年齢は野手よりも早い。歴代の新人王をみても投手の方が圧倒的に多く、昨季のDeNA・東克樹のように、1年目からエース級の活躍をする大卒投手も珍しくない。反対に、どちらかというと野手の活躍の方が目立っていたのが2014年ドラフトの高卒選手だ。
筆頭は昨季、史上最年少で「3割・30本塁打・100打点」に達成した巨人・岡本和真。4年目で名門球団の主砲へ急成長し、世代のトッププレイヤーへと躍り出た。他にも、売り出し中のオリックス・宗佑磨や阪神・植田海。そしてチーム捕手最多の86試合に出場し、正捕手奪取への足がかりをつくっている日本ハム・清水優心もそうだ。
一方、昨季の投手では日本ハム・石川直也が一軍の第一線で活躍し、52登板・防御率2.59、チーム最多の19セーブをマーク。かつてのクローザーであった増井浩俊がオリックスへFA移籍したチーム事情も手伝い、守護神定着へぐっと近づく1年になった。石川のほかには、昨季18試合に登板したリリーフのロッテ・岩下大輝、9試合に先発したDeNA・飯塚悟史が一軍の戦力になっている。
この3投手の指名順位だが、最高が岩下の3位となっており、入団時の期待値が特別高いわけではなかった。では、彼らより上位で指名された投手はどうだろう。
高橋光成、安楽智大は早くに頭角を現したが……
2014年ドラフトで1位指名を受けた高校生投手は西武・高橋光成、楽天・安楽智大、ソフトバンク・松本裕樹の3名だ。
前橋育英高を2014年夏の甲子園制覇に導いた高橋。1年目に5勝を挙げ、2年目は11敗(4勝)を喫したものの、19試合に先発しローテーション投手の一角を担った。しかし、この2年は故障の影響もあり、登板機会が少なくなっている。
安楽は2年目に3勝をマークし、将来のエース候補としてスタートを切ったかに見えた。しかし3年目は10登板で1勝、4年目の昨季は右肩を痛め2登板で終わった。同じく松本も故障で開幕に出遅れ、一軍登板は8月からの6先発のみ。3年目に10先発を含む15登板で2勝を挙げ、昨季は先発ローテーション候補として期待の存在だっただけに悔しい結果となった。
そのほか、今季の高卒5年目投手には広島・塹江敦哉、藤井皓哉、巨人・山下亜文、楽天・小野郁、日本ハム・立田将太、オリックス・齋藤綱記、鈴木優、ソフトバンク・笠谷俊介がいる。この中で特に有望株として注目されているのは、広島の塹江だ。左で150キロ以上の速球を繰り出し、昨年の秋は「WBSC U-23ワールドカップ」の代表メンバーに選出されている。
素材は高く評価されているが、まだ大ブレークには至っていない高卒5年目投手たち。昨季はオリックス・田嶋大樹、中日・鈴木博志ら同学年の社会人出身の投手がプロ入りし、1年目から1歩上を行く活躍ぶりをみせつけた。さらにライバルを意識することになる今季、飛躍のシーズンとなるだろうか。