長野で10人目となる人的補償による野手の移籍
1月も半ばに入り、キャンプインまで約2週間となった。年が明けてから、もっとも話題となったのは長野久義(広島)だろう。このオフにFA権を行使し広島から巨人へと移籍した丸佳浩の人的補償で、巨人から広島へ移籍することになったからである。生え抜きの功労者、そして2度の指名拒否の末に巨人入りを果たした経緯を含め、様々な声が乱れ飛んだ。
当の長野本人は広島で再出発することを誓っており、メンバーも歓迎ムード。外野のレギュラーを野間峻祥らと争うことはもちろん、ベテランとしてチームを引っ張っていく心づもりだ。レギュラークラスの移籍ということもあり、長野には大きな期待がかかる。
さて、これまでに人的補償で移籍した野手は長野で10人目。過去の9人は移籍直前のシーズンと比べて、成績はどのように変化しているのかを振り返ってみたい。
野手の人的補償は2005年の江藤智と小田幸平が初
人的補償で野手が移籍したのは2005年のオフが最初だった。小田幸平(↔野口茂樹)が巨人から中日へ、江藤智(↔豊田清)が同じく巨人から西武へと所属が移った。
巨人では阿部慎之助の控え捕手だった小田は、中日でもサブ的な役割で献身的にチームを支えた。一方の江藤は移籍先の西武でベテランとして存在感を発揮。出場試合数は減少したものの、打席機会は増加し2年ぶりの本塁打も放っている。
2007年オフには赤松真人(↔新井貴浩)が阪神から広島へ、福地寿樹(↔石井一久)が西武からヤクルトへそれぞれ移籍している。両選手ともに移籍後大きく成績を伸ばした。赤松は阪神時代の3年間でわずか36試合の出場だったにもかかわらず、移籍直後に125試合に出場とそれまでのキャリアハイを大きく更新している。
一方の福地もキャリアハイを更新した。初めて規定打席に到達し打率.320を記録。また、42盗塁で自身初のタイトルを獲得したのである。
鶴岡一成や脇谷亮太は経験を買われての指名
2010年オフには一軍出場のなかった高濱卓也(↔小林宏之)が阪神からロッテへと移籍する。一軍出場のなかった野手の人的補償による移籍は、高濱と2014年に巨人からヤクルトへ移籍した奥村展征(↔相川亮二)のふたりだけだ。今までの実績ではなく、将来性を重視して獲得されたパターンだ。
2013年オフには鶴岡一成(↔久保康友)がDeNAから阪神へと移籍する。故障があり77試合の出場にとどまったが、クライマックスシリーズでもマスクをかぶるほど信頼は厚かった。捕手は経験が生きるポジションだけにチームへの影響も大きかったはず。
脇谷亮太(↔片岡治大)は2013年オフに巨人から西武へと移籍。出場機会は約2倍に増え、打撃成績も大きく向上させた。打撃面だけでなく、複数ポジションを守ることのできるユーティリティー性も兼ね備えていたことが、ベンチにとって大きな助けとなった。
鶴岡や脇谷は経験を買われての指名と見られ、それぞれの役割でしっかりと貢献したと言っていいだろう。
その他には高口隆行(↔サブロー)がロッテから巨人へと移籍したが、思うような成績を残すことができず翌年に現役を引退している。
このように人的補償で移籍した9人の野手はそれぞれの役割で結果を残しているが、移籍初年度に規定打席到達を果たしたのは福地ただひとり。レギュラーとして活躍を期待される選手はプロテクトされることが多いため、これは致し方のないことでもある。
はたして長野は福地のように規定打席に到達しレギュラーとして活躍することができるだろうか。2019年シーズン、「広島の長野久義」に注目したい。
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