屈辱の96敗から2位へと躍進
ヤクルトは昨シーズン96敗を喫し、優勝した広島から44ゲーム差離され最下位に終わった。再起を誓った今シーズンは小川淳司監督が再登板。コーチにも宮本慎也、石井琢朗、河田雄祐らを招聘し巻き返しを期していた。戦力面ではメジャーリーグでプレーしていた青木宣親が復帰し、坂口智隆が一塁へとコンバートされ新しいシーズンを迎えたのである。
開幕してから5月下旬までは低空飛行を続けていたが、交流戦でチーム史上初となる最高勝率に輝き息を吹き返す。しかし、6月下旬から8連敗と再び低迷してしまう。チームが上昇気流に乗ったのは8月下旬からだ。クライマックスシリーズ争いが熾烈となるなかで8月26日に2位に浮上すると、一度も落ちることなくそのままゴールテープを切っている。
クライマックスシリーズでは3位・巨人の前に2連敗。広島の待つマツダスタジアムへと乗り込むことはできなかったが、昨シーズンの惨状からすると大躍進と言えるだろう。
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各数字を見ると本塁打は4位ながら打率1位、得点2位と打線の繋がりで勝利をものにしてきたことがうかがえる。
本塁打は135本で。山田哲人(38本)、ウラディミール・バレンティン(34本)のふたりで53.3%となっており、その他の打者になかなか本塁打が生まれなかった。比較的狭い神宮球場を本拠地としているだけに本塁打数は増やしたいところだろう。
投手陣では近藤一樹、石山泰稚らが年間を通して踏ん張った。また、前半戦は中尾輝、後半戦は梅野雄吾の若手ふたりが終盤を支えており大きく飛躍した。
一方、先発陣はデービッド・ブキャナンが規定投球回に到達し10勝をマークしたが、その他の投手は故障もあり年間を通じて結果を残すことができなかった。
大型補強はなくとも若手の成長が上積みに
このオフ、衣笠剛球団社長がFA戦線には参戦しない、とコメントしたこともあり大きな補強には動いていない。
12月19日の時点で明らかになっている補強は、ソフトバンクを自由契約となった寺原隼人、新外国人選手としてアルバート・スアレス、そしてトレードで日本ハムから獲得した太田賢吾、高梨裕稔の4人のみ。その他にも外国人選手と交渉中という報道はあるが、戦術の衣笠球団社長の発言からも「超大物選手」という線は薄い。
その外国人選手は主砲のバレンティン、ローテーション投手のブキャナンが残留。先発、中継ぎの両役割で起用されたデーブ・ハフが保留者名簿から外れた後に再契約。結果的に3人の外国人選手が残留となっている。
そこにスアレスと交渉中の1名が加わり5名体制で開幕を迎えることになりそうだ。
ドラフトでは根尾昂(大阪桐蔭高→中日)、上茶谷大河(東洋大→DeNA)を外し1位は清水昇(國學院大)となった。その清水を含め坂本光士郎(新日鐵住金広畑/5位)、久保拓真(九州共立大/7位)と3人の投手が大卒及び社会人で即戦力候補となる。野手では中山翔太(法政大/2位)、吉田大成(明治安田生命/8位)が同様に早期の活躍を求められることになる。
大きな動きのないヤクルトだが、補強ではなく、若手選手の成長による上積みは見込めそうだ。
まず、フェニックスリーグで村上宗隆がリーグ記録を更新する10本塁打をマークする。その後、台湾で行われたアジア・ウインターリーグでは塩見泰隆が打率.392、4本塁打、12打点、村上が打率.224、4本塁打、15打点と結果を残し
た。
投手陣でも梅野雄吾が8試合に登板し無失点で5セーブを挙げている。もちろん、NPB一軍のレベルとは異なるが、手応えはあっただろう。
ヤクルトはこのオフに大きな補強こそないが、若手選手の成長による上積みでチームの底上げを行っている。大きな補強がなくとも戦える、ということを示せるだろうか。来シーズンの戦いぶりに期待したい。