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今季3位に躍進した日本ハムは大王、金子弌大の加入で優勝争いへ

2019 1/3 11:00勝田聡
金子千尋,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

大幅な戦力ダウンがあったものの3位でCSへ

2016年の日本一から一転、一昨年は5位と苦しんだ日本ハム。その低迷に追い打ちをかけるかのように、オフは戦力の流出が相次いだ。既定路線だったとはいえ、大谷翔平(現・エンゼルス)がポスティングシステムによるMLB移籍で退団。その他には大野奨太(現・中日)、増井浩俊(現・オリックス)がFAで国内移籍となった。ドラフトで清宮幸太郎を獲得したとはいえ、高卒ルーキー。期待は大きかったが、もちろん即戦力というわけではない。

大きな流出があったことで苦しいシーズンになることが予想されていた日本ハムは、やはり出足から躓いてしまう。西武相手の開幕カードで3連敗を喫したのだ。しかし、2カード目からは5連勝をマークし、勢いに乗ると4月下旬にも再び5連勝。開幕3連敗スタートながら3・4月を14勝11敗と貯金「3」で乗り切ったのである。

5月以降も勢いは衰えない。首位を走る西武に食い下がるように2位を走り続ける。6月にはゲーム差「0」まで追い詰めるほどの強さだった。しかし、西武をかわすことはできず、終盤に失速。最終的にはソフトバンクにも追い抜かれ、3位でシーズンを終了することになる。勝ちきれなかった面はあったが、一昨年の5位から戦力ダウンとなったにもかかわらず、クライマックスシリーズ出場を果たしたのは大躍進だ。

日本ハム成績表

ⒸSPAIA

チームの数字を見ると、そのどれもが安定している。打率.251、589得点、140本塁打、98盗塁はいずれもリーグ3位。防御率3.77はリーグ2位と突出している数字はないが、どの数字もまとまっていた。

個人で見るとと大きな躍進を遂げたのが上沢直之だろう。昨シーズンの上沢は初の2桁勝利となる11勝をマークし、防御率3.16はリーグ3位。4完投、3完封を記録しており、完投能力も高く、まさにエースに上り詰めた。救援陣では高卒4年目の石川直也の名前が挙がる。セットアッパー、守護神を任され52試合で19セーブ、18ホールド。防御率2.59は立派な数字だ。

野手陣では主砲・中田翔が復活。2年ぶりに打点が100の大台を超す106打点。本塁打も一昨年の16本から25本へと9本の増加。主将としてチームを引っ張ってきたと言っていいだろう。

大王に金子弌大、ドラフトでは甲子園のスターを次々と獲得

このオフ、日本ハムは「大型」と言ってもいい補強を行った。大きな補強はふたつある。そのひとつがオリックスを自由契約となった金子千尋(金子弌大に変更)の獲得。オリックスの保留者名簿から外れた12月2日のわずか2日後となる4日に入団を発表した。昨シーズンは4勝7敗、防御率3.87と不本意な成績に終わっているが、一昨年は12勝をマーク。通算120勝を誇っており、復活の可能性は十分にありそうだ。

そしてもうひとつが、台湾の「大王」こと王柏融の獲得だ。台湾球界で初めてポスティングにかけられた王を最高額で入札し、みごと交渉権を獲得。契約交渉もスムーズにまとまり日台双方で入団会見も行っている。激戦区である外野にまたひとり大物が加わることになる。

外国人選手としてはジャスティン・ハンコック、ジョニー・バーベイトとふたりの新外国人投手を獲得。また、保留者名簿から外れていたニック・マルティネスとも無事に再契約を果たした。ブライアン・ロドリゲスの残留も決まっており、王を含めて5人体制で開幕を迎えることとなりそうだ。

ドラフトでは甲子園のスターを多く獲得した。根尾昂(大阪桐蔭高→中日)の抽選に外れた日本ハムは即戦力となる大学生や社会人の投手には目もくれず、今夏の甲子園で「カナノウ旋風」を巻き起こした吉田輝星(金足農高)を指名する。その後も2位で野村佑希(花咲徳栄高)、4位で万波中正(横浜高)、5位で柿木蓮(大阪桐蔭高)と甲子園をわかせた選手たちを次々に指名している。

3位で即戦力投手として期待がかかる生田目翼(日本通運)を獲得しており、将来だけではなく、今シーズンもしっかりと見据えている。下位指名では6位で高校生捕手の田宮裕涼(成田高)、7位では大卒投手の福田俊(星槎道都大)を指名した。また、初めて育成ドラフトを活用し海老原一佳(BC富山)を指名。チームが新しい方向へ進もうとしている意図が現れている。

2023年に北広島市に新たな球場を建設する計画を発表したこともあり、ここからのシーズンは、ファンを獲得するためにも勝利とスター育成の両輪で進んでいくことになりそうだ。その第一歩となる今シーズンの戦いぶりに注目したい。