自身初、最優秀防御率
西武から楽天へ移籍した後もその安定感に変化はなく、則本と並んで投手陣の柱である岸孝之。今季はリーグ唯一の防御率2点台をマークし、自身初の最優秀防御率に輝いた。
12月4日に34歳の誕生日を迎えた岸に衰えの兆しは見られず、2017年以降は奪三振率が大幅に上昇するなど、ピッチングはむしろ進化している。この三振増は、一体何が原因なのか。
岸が記録した過去3年の三振を球種ごとに分けてみると、割合が増えていたのはストレート。大きく変化するカーブをはじめ持ち球すべての質が高い投手ではあるものの、2014年以降はストレートで三振を奪う割合が常に50%を超えており、今季の67%はキャリアで最も高い数字となっていた。
奪三振率上昇の要因は、どうやらストレートにありそうだ。
ストレートの割合増加で相手打者が警戒
岸がストレートで奪った三振数107はNPBで頭ひとつ抜けているが、中でも見逃し三振の多さが際立っている。楽天移籍後はストレートによる見逃し三振の増加が顕著で、直近2年はNPBトップの数字をマークしていた。
2ストライクに追い込まれると打者はスイングする傾向が強くなる。加えて、楽天移籍後の岸は2ストライク時のストレートの割合が60%前後と2016年よりも増加していて、相手打者に警戒されていた可能性が高い。そのため、見逃し三振の量産は決して容易ではないはずだ。
それにもかかわらず見逃し三振が多い理由は、精密な制球力を備えているからだろう。ストレートによる見逃し三振の内訳を算出すると、今季はNPB全体で内外角が87%を占めている。
一方、岸のストレートの割合を見ると、見逃し三振を取りづらい真ん中に入るケースは年々減少していた。6月7日の巨人戦で岡本から奪った通算1500個目の三振も、ストレートを内角低めに投げ込み、バットを振らせなかった。見逃し三振の増加は、正確なコントロールを生かした2ストライク時の配球にあったといえるだろう。
オフには西武から浅村を獲得するなど、反撃の態勢を整えている楽天。最下位からの脱出を狙うチームにあって、岸の責任はこれまで同様に大きなものとなりそうだ。それでも百戦錬磨の岸ならば、来季も見事なピッチングで期待に応えてくれるに違いない。
企画・監修:データスタジアム、執筆者:植松 大樹