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投手王国完成へ…藤川・能見のベテランリリーフコンビが虎の命運を握る

2018 12/26 07:00青木スラッガー
藤川球児,能見篤史,ⒸYoshihiro KOIKE
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ⒸYoshihiro KOIKE

藤川は守護神再挑戦、能見は来季もリリーフで

阪神が課題だった先発ローテーションの強化を成功させた。オリックスから西勇輝、中日からガルシアと今季2桁勝利投手を立て続けに獲得。昨季に比べればやや成績を落としたリリーフ陣の復調次第では、“投手王国”の誕生も現実味を帯びてきた。

そこで強固な勝利の方程式への鍵を握るのは、藤川球児、能見篤史の大ベテラン投手2人ではないだろうか。大車輪の働きを見せた今季から、2人にはさらなる上積みを期待できる要素がある。

日米通算227セーブを誇る藤川は、かつての持ち場である守護神に再挑戦する。先発で結果を残せずリリーフ転向し、新たな持ち場で復活した能見は、開幕からリリーフとしてスタンバイする。目標・役割が明確な状況でキャンプインを迎えることができる。

藤川の奪三振率、能見のWHIPはセのリリーフ陣で群を抜く数字

今季の藤川は、阪神の主なリリーフ陣(30登板以上)でトップの防御率2.32。桑原謙太朗に次ぐ21ホールドをマークし、勝ちパターンで起用される展開が昨季から大幅に増えた。

阪神おもな中継ぎ陣,ⒸSPAIA

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特に本拠地甲子園では24登板・24.2回で防御率0.73と抜群の安定感を誇っている。奪三振率11.10はセ・リーグ40登板以上(リリーフ登板時)では広島・フランスアに次ぐ数字。未だ打者をねじ伏せる投球は健在だ。

セリーグ中継ぎ,ⒸSPAIA

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能見は開幕当初の先発登板では打ち込まれ、一時は二軍落ちも経験。しかしリリーフに転向すると、そこからの投球は圧巻だった。リリーフ転向後の成績は42登板・42回でわずか自責点4、防御率0.86。1イニングあたりに何人の走者を出したかを示す「WHIP」は0.81を記録している。セ・リーグ40登板以上(リリーフ登板時)でWHIPが1.00を切ったのは能見だけである。

セリーグWHIPランキング,ⒸSPAIA

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自身の役割を終えてもまだ試合が終わるわけではないセットアッパーは、ただ0点に抑えるだけでは超一流とは言えない。守りの時間を短くし、味方の攻撃にリズムをつけるような投球が求められる。抜群のWHIPを記録して、最も三者凡退を期待できるセットアッパーだったのが今季の能見だ。

一方、経過はどうであれ最終的にゼロに抑えればいいクローザーは、走者を背負った後の投球が重要だ。不運な当たりや内野ゴロ、犠牲フライでのホーム生還を防げる三振でアウトを奪うことが理想となる。抜群の奪三振率を残した藤川の守護神再挑戦は決して冒険ではなく、むしろ最適任といえるのではないだろうか。

両投手ともストレート被打率が1割台 まだまだ衰え知らず

懸念があるとすれば年齢。能見は来季で40歳、松坂世代の藤川も39歳だ。2人は球威で押す投球をしているが、衰えが出てきてもおかしくない年齢である。

球種別の被打率に注目してみる。藤川はストレート.175・フォーク.128。能見(リリーフ登板時)はストレート.193・フォーク.184・スライダー.095。強力なウイニングショットとともに、ストレートでも抑えることができていた。能見は先発の3試合でストレート被打率.318と打ち込まれたが、1イニングを全力で投げるリリーフへ転向してから球威を取り戻している。

藤川能見,ⒸSPAIA

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年齢的な衰えはまだまだ心配しなくてもよさそうだ。藤川は守護神奪取に成功すれば、名球会入りの条件となる日米通算250セーブが見えてくる。能見も今季序盤、先発登板時の不振はチームにとって誤算だったが、オフに先発陣が強化されたことで、来季はセットアッパーとしての期待がますます高まる。

気持ちを新たに来季を迎える左右の大ベテランリリーフコンビ。2人が終盤をつないで阪神を勝利に導く場面がこれから何度見られるだろうか。