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大卒社会人2年目の塩見泰隆、大下佑馬、松本直樹が来季ヤクルトのカギを握る!

2018 12/16 07:00勝田聡
東京ヤクルトスワローズ,Ⓒ勝田聡
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Ⓒ勝田聡

大型補強はなくとも……

リーグ優勝を果たした広島から、丸佳浩がこのシーズンオフに巨人へ移籍。これは大きな戦力ダウンと思われるが、丸が退団したということだけで7ゲーム差が縮まるわけではない。だがやはり、ここ3シーズンに比べ与しやすくなったことは間違いない。

一方、原辰徳監督を据え大型補強をおこなっている3位の巨人は、丸だけでなく炭谷銀仁朗(西武→巨人)、クリスチャン・ビヤヌエバ、中島宏之、岩隈久志と次々に獲得。一気に優勝まで届きそうな戦力アップと思われる。

もちろんBクラスの3チームも補強を進めている。ヤクルトも上積みがなければ、優勝はおろかAクラス入りさえ難しい。2015年の優勝後に落ち込んだ2016年と2017年をみれば、プロ野球の厳しさがよくわかる。

ここまでのヤクルトの補強を見ると、ドラフト入団選手以外では、戦力外から寺原隼人(前・ソフトバンク)、トレードで太田賢吾、高梨裕稔と日本人は3名のみ。外国人選手ではウラディミール・バレンティン、デービッド・ブキャナン、デーブ・ハフが残留。新外国人選手としてアルバート・スアレス投手と合意に達し、その他にも1名の投手と交渉中と報じられた。

衣笠剛球団社長が「当初からFA戦線には参加しない」と公言していたこともあり、「大型補強」はなく落ち着いたオフシーズンとなっている。しかし裏を返せば、現有戦力の成長と上積みに期待がかかっているということでもある。そのなかで注目したいのが、大卒社会人2年目の塩見泰隆と大下佑馬だ。

塩見泰隆、松本直樹はアジアWLで大ブレイク!

2017年ドラフト4位でJX-ENEOSからヤクルトへ入団した塩見は、1年目から一軍で16試合に起用された。だが、良い打球を飛ばす場面はあったものの、初打席から24打席連続無安打となかなか結果を残すことができなかった。待望の初安打となったのは、25打席目のポテンヒットだったのだが、この1本によりモヤモヤした気持ちを吹っ切ることはできたはずだ。

ヤクルトの外野を見ると、バレンティン、青木宣親、雄平とベテランに差し掛かっている選手が多いため、若手の台頭が望まれている。

その事情を察しているであろう塩見は、アジアウインターリーグで打率.429(42打数18安打)、3本塁打と爆発。一気にレギュラーを脅かす活躍ぶりだ。NPB一軍と比べると投手のレベルは落ちるかもしれないが、それでも別格の数字であることは間違いない。ここでの経験を糧に来春のキャンプ、オープン戦でレギュラー争いに参戦したい。

野手ではもう1人、ドラフト7位で西濃運輸から入団した松本直樹もいる。打撃面で課題が多かった松本だが、アジアWLで活躍中。肩をはじめ、守備面の定評はあるだけに打撃面で結果が残すことができれば、一軍定着もありえる。

「甲斐キャノン」で捕手にスポットが当たる機会が増えたことも、強肩の松本には追い風となるだろう。来シーズンは中村悠平や井野卓との捕手争いに加わりたいところだ。

塩見泰隆・松本直樹WL/2018年度成績

ⒸSPAIA

大下佑馬は先発と中継ぎの二刀流

投手陣では大下に注目が集まる。ドラフト2位で三菱重工広島から入団した大下は、先発と中継ぎの両方の役割を全うし、25試合に登板。2勝1敗5H、防御率3.09と結果を残した。

編成が終わっていないこともあり、現時点で来シーズンの役割は決まっていないが、起用法に関わらず貴重な戦力であることは間違いない。

今シーズンの投球を見ると、150キロを超えるストレートや切れ味抜群の変化球があるわけではない。しかし、BB/9(1試合あたり与四球をいくつ出すかを表す指標)は1.85。10回以上投げている選手のなかでチーム2位と安定感があり、制球よく打たせて取る投球は新人離れしている。

大下佑馬成績

ⒸSPAIA

一般的に高卒選手と比べ、大卒社会人選手はプロ入り後の実働期間が短い。また、多くの場合は即戦力候補として扱われるため、2・3年で結果を残すことができなければ、戦力外通告を受けてしまうこともある。

入団から数年、下手すれば2年で崖っぷちに立たされる大卒社会人選手だからこそ、来シーズンに賭ける思いは強いはず。そんな彼らが、ベテラン勢からレギュラーや先発ローテーションを奪うことができれば、チームにとってこの上ない上積みになる。

2017年ドラフト組の中では、どうしても高卒ドラ1で抜群の成績を残している村上宗隆に注目してしまうが、柱となりそうなのは村上だけではない。村上が数年後からの戦力であるなら、大卒社会人の塩見、大下、松本は来年の戦力といえる。今後も大卒社会人組の2年目に注目したい。