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育成枠積極活用の西武 東野、大窪、中熊に期待高まる

2018 12/14 15:00永田遼太郎
東野葵,大窪士夢,中熊大智,ⒸSPAIA
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育成枠指名、12年間で3人が2年で5人に

ドラフト戦略に変化あり。

これまで育成枠指名をあまりして来なかった埼玉西武が、この1、2年積極的にこの制度を活用し始めている。

育成枠が解禁された2005年から2016年までは、12年間でわずか3人だった育成枠指名が、2017年は2名、そして今季(2018年)は3名とその幅を徐々に広げている。

埼玉西武の育成枠指名といえば、今季初めて育成枠指名を(1名だけ)使用した北海道日本ハムに次いで12球団中2番目という少なさだったが、ここに来て、大きく路線を変更したようだ。

今年指名された3人の顔触れを見ながら、その可能性を探ってみようと思う。

育成枠1位 「育成からレジェンドを目指す」東野葵(日本経済大学)

183㎝の長身から最速146キロのストレートを投げおろす本格派左腕。

日本経済大学では1年春からリーグ戦に出場。リリーフでの登板が多く、八季で42試合に登板しているが先発での実績は乏しい。

それでも4年秋のリーグ戦で、のちに明治神宮大会にも出場した九州共立大学を相手に5回1安打無失点に抑える好投を見せるなど、潜在能力の高さには目を見張るものがある。化ける要素は大いに含んでいると言っていいだろう。

50m走5.8秒が示す通り運動能力は高い。

埼玉西武の投手で俊足といえば、現在は東北楽天に移籍した岸孝之を想起させるが、本人の目指すところもそこにあるようで、球速というより球のキレで勝負する投手になりたいと彼は口にする。

東野葵,ⒸSPAIA

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そして、プロでの目標のもうひとつが「誰よりも長く現役生活を送ること」だ。

先の新入団発表会では元中日の山本昌氏の名前を出し、氏の持つプロ野球最年長登板、最年長勝利記録の更新に挑戦したいとも話した。
「旬が短い選手よりも長く続けられる選手がプロ中のプロだなと、僕は昔から思っているので、とにかくどんな形でもいいので長く続けられたらいいと思っています」

そのためにもまずは怪我をしない体作りが必要だと彼は話す。

「そこからだと思っています。基礎能力を上げていくための土台になるとも思っていますし、そこから技術練習も(並行)してやっていきたい」

育成からまずは支配下へ。そしてレジェンドへの挑戦まで。東野葵は、果てしない道の第一歩を力強く踏みしめた。

育成枠2位指名 辻監督期待の大型投手・大窪士夢(北海高校)

とにかくデカい。そのインパクトに尽きる。

身長198㎝は阪神の藤浪晋太郎を抜き日本人選手最長身。

特技はバスケットボールのダンクショットと、バレーボールで他の人が打ったスパイクを飛ばずに止められることだと言うから、きっと他の部活動から勧誘が多々あっただろう。

足のサイズは30㎝。1955年に巨人入りした馬場正平(ジャイアント馬場)さんを彷彿させる大きさである。新入団選手発表会では隣に並んだドラフト7位・佐藤龍星の頭ひとつ分、いやふたつ分ほど抜けていたようにも見えた。

長身から投げ下ろす角度のあるボールがセールスポイントだ。ただ大きいというだけでなく、器用さに優れ、しっかりとした制球力があるところを担当スカウトにも評価され、今回の指名に結び付いた。

それでもアマチュア時代の実績は乏しい。

北海高では1、2年の夏に甲子園出場を経験しているが大窪はそのときベンチ外だった。さらに3年夏の道大会でも背番号は11で、2試合4イニングしか投げていない。

球速は最速でも130キロ台後半。間違いなくここからの選手だろう。

大窪士夢,ⒸSPAIA"

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しかし、新入団発表会で顔を合わせた辻発彦監督は彼の将来性に期待し、こんな感想を漏らした。
「でかい。握手したら手がでかかった。でも、まだ体がね。大きいのは(彼の)持ち味だし、ああ見えて意外とコントロールが良くて、指が長いし、フォークも落ちるって聞いているからね。そこはしっかり体を作るのが一番だよね。プロで投げれるような体が出来て、150キロでも投げれるようなピッチャーになればね。プロに入ってそうなったピッチャーはこれまでも沢山いるしね。しっかり土台作りから始めて、やれば楽しみな選手だと思いますよ」 と、強い印象は与えたようだ。

プロでの目標を書く色紙には「夢を叶える」と記した。

「プロ選手になれただけでなく、支配下登録、一軍での活躍、そしてたくさんの賞を獲るという沢山の夢があるので、それを叶えるつもりで頑張っていきます」

身長もまだ伸びているというだけあって本格的なトレーニングはこれから。体を鍛え上げ、そして技術を身につければ、数年後はとんでもないピッチャーに化けている可能性もある。目標とする選手は千賀滉大。彼と同じようなサクセスストーリーを歩むことが出来るか注目である。

育成枠3位指名 中熊大智(徳山大学)

育成枠で指名された3名の中では、アマチュア野球ファンに一番馴染みのある選手と言えるかもしれない。

徳山大学では1年秋からベンチ入り。2年秋と4年春には中国地区大学野球連盟の首位打者にも輝き、ベストナインには4年秋も含めた3度選出された強肩強打の捕手だ。

4年春には全日本大学野球選手権にも出場し、ベスト8に進出。そのときマスクを被っていたのも中熊だった。

印象的だったのは全日本大学野球選手権2回戦の大阪商業大学戦である。

ストレートの球速が130キロ台という左腕・岡直人とコンビを組み、相手打線に的を絞らせない好リードを見せる。

6回表の1死満塁の窮地にも、この日凡打の山を築かせたスライダーで二人の打者をサードゴロ、セカンドゴロに仕留めて無失点で切り抜ける。

〝失点覚悟″の延長タイブレークでも相手打線に1点も与えず、失点は5回に奪われた1点のみという仕事ぶり。まさに彼が目指す「勝てる捕手」と言える試合だった。

中熊大智,ⒸSPAIA"

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さきに行なわれた新入団発表会でも中熊はこう決意を述べた。
「キャッチャーというポジションは勝敗を大きく握るポジションだと思っています。一日でも早く支配下登録を目指して、チームの勝利に一日でも多く貢献出来るよう頑張りたいと思っています」

今季は炭谷のFA移籍を見越してか、中熊の他に高卒捕手の牧野翔矢をドラフト5位で補強した。高校1年でショートも経験して足もある牧野とは若干タイプも違うが、アマチュア時代の実績からも当然負けられないところだ。

まずは既存の選手と2軍で競争に勝ち、出場機会を得るところからのスタートとなるが、1日も早い支配下登録を期待したい選手だ。