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選手分析「タカのローボールヒッター」~ソフトバンク #51上林 誠知~

2018 12/17 11:00データスタジアム
野球ボールⒸShutterstock.com
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65年ぶり14本の三塁打と2年連続日本一

リーグ2位からクライマックスシリーズを勝ち上がり、2年連続の日本一に輝いたソフトバンク。そんな常勝軍団の中で、5年目・上林誠知の存在感が年々増している。

今季は自身初の全試合出場を果たし、打率.270を記録。自己最多の22本塁打、NPB史上65年ぶりとなる14本の三塁打を放つなど、長打力もアップした。今回は、順調な成長曲線を描く背番号51の進化に迫っていきたい。

2017·18年:長打内訳

まず注目したいのが、打球方向だ。上林はレギュラーに定着した昨季からライト方向への打球が多いバッターだったが、今季はその割合が上昇し、全打球の半数近くを引っ張った打球が占めている。

2017·18年:打球方向割合

さらに高低別に分けると、低めの数値が昨季の42%から15ポイント増加。引っ張った打球は、逆方向やセンター返しに比べて長打になりやすい傾向があるが、この変化は上林の長打力アップにどう結びついたのだろうか。

2017·18年:高低別ライト方向打球割合

上林にとって、低めへの投球は絶好球

一般的に低めの球は打球に角度がつきにくく、特に引っ張った時はその傾向が顕著だ。

しかし、低めをすくい上げる巧みなバットコントロールを持つ上林に、それは当てはまらない。今季はその技術に磨きがかかり、低めを引っ張った時のフライ割合は39%を記録。左打者のリーグ平均が23%であることを踏まえると、特筆すべき数値だろう。

2017·18年:低めライト方向フライ割合

低めの球に対し、引っ張ったフライ性の打球が増えた上林。今季はそれに加え、打球を遠くに飛ばすことができていた。外野に飛んだライト方向へのフライが本塁打になった割合は29%を記録。全22本塁打のうち、実に10本が低めの球をライトスタンドへ運んだものだった。

2017·18年:低めライト方向HR/OF

結果として、低めの長打率は、規定打席到達者の中でリーグトップ。ピッチャーが長打を防ぐために投じた低めの投球は、上林にとって絶好球なのかもしれない。

2018年パ·リーグ:低め長打率ランキング

契約更改を終えた会見の席で、来季の目標について「トリプルスリーに近い数字を残す」と語った上林。今季披露した長打力に確実性が加われば、将来的に偉業達成も夢ではないはずだ。非凡な打撃センスを誇る若武者の、さらなる飛躍に期待したい。

企画・監修:データスタジアム、執筆者:片山 信春