史上5例目「70登板が2人」となったヤクルト
今シーズンのヤクルト投手陣はリリーフで乗り切ったといっても過言ではない。
先発・リリーフ別のチーム成績は、1試合平均で先発が5.37投球回、防御率4.32、リリーフが3.54投球回、防御率3.84。早めにリリーフを投入し、僅差の試合を高確率で逃げ切って2位にのし上がった。1点差試合の23勝15敗も、リリーフ陣が優秀でなければなかなか出てこない数字だ。
しかし、ブルペンの柱となった2人への負担は心配である。セーブ王の石山泰稚は71登板、投球回数が73.2。最優秀中継ぎ投手の近藤一樹は74登板、投球回数が76.2。1シーズンで「70登板以上が2人」は、プロ野球史上5例目となった。

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前回の「70登板以上が2人」もヤクルトである。リーグ優勝した2015年の秋吉亮(74登板・投球回数が76.1)、オンドルセク(72登板・投球回数が70.1)。秋吉は翌年も70登板を果たしたが、その次の2017年からは故障に苦しんでいる。

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近年の70登板以上の投手を見ると、2017年のソフトバンク・岩嵜翔、2016年の巨人・マシソンは後に手術を受けているし、 2015年の西武・増田達至も今シーズンは不振。2014年に72登板で防御率1.81という抜群の数字を残した中日・福谷浩司も、翌年から今シーズンまでは防御率4点台以上の苦しいシーズンが続く。

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今シーズンのタイトルホルダー2人は、前年も石山66登板・投球回数が68.1、近藤54登板・投球回数55.1 と少なくはない登板機会があった。勝利の方程式に長く君臨してもらうためにも、2年続けて70登板は避けたいところだ。そこで、必要なのがイニングを消化できる先発投手である。
ヤクルトが来シーズン優勝するために必要なこと。一番は、先発で長くマウンドを守ることができる「イニングイーター」の登場ではないだろうか。
「イニングイーター」がいない先発投手陣
今シーズンのヤクルト投手陣で、1試合でも先発登板があったのは16名。唯一規定投球回をクリアしたブキャナンは防御率4点台に達してしまったものの、1先発あたりの平均投球回を見ると、やはり彼なしでローテーションは成り立たない。2年契約2年目の来シーズンにも先発の柱としての期待がかかる。

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しかしそのブキャナンも、規定投球回到達投手のなかで平均投球回は少ない方だ。20代の時はシーズン190イニング以上3度を達成した石川雅規も年齢とともにイニング数は減ってきており、長いイニングを期待できる先発投手が多いとはいえない。先発ローテーションに定着した上で、平均6回くらい投げられる投手がどれだけ出てきてくれるか。
大きな期待をかけたいのは、来シーズンが大卒4年目となる2015年ドラフト1位指名右腕の原樹理だ。今シーズンは先発17回、リリーフ13回。序盤から決して順調なシーズンではなかった。しかし、後半戦からは実質エースと呼べるくらいの投球を見せている。
原樹理が先発復帰後豹変。7月~9月は平均6.74イニング
原は2年目の昨シーズン、11敗ながら131.1回で防御率3.84をマークして今シーズンの開幕ローテーションを勝ち取るも、結果を残せず5月半ばに二軍落ちをした。だが、6月に一軍復帰後、配置転換されたリリーフで安定した投球を続けると、後半戦から先発ローテーションに復帰。そこからの成績は以下の通りだ。

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後半戦だけで5勝を挙げ、防御率1.75と安定感抜群。奪三振率や与四球率といった指標も大きく向上した。平均投球回においても、打球を受けるアクシデントにより1回で降板したシーズン最終登板を除くと、後半戦は9先発で6.74となる。
もともと原は昨シーズンも完投を1つ記録し、不調だった今シーズン序盤も2戦目で103球5奪三振3失点完投するなど、得意のシュートがはまった時は打たせて取る投球でスイスイとイニングを稼ぐことができた。
後半戦は9月終了まで9戦で6回のクオリティスタート(QS:6回3失点以下のこと)成功と、その投球をコンスタントに出せるようになった。
また、リリーフ起用が幸いしてか、先発復帰後は最速150キロの球威が復活。8月16日の巨人戦ではプロ初完封し、9回12奪三振でイニング平均投球も13.67球と少なかった。
原といえばシュート、カットボールと小さく曲がる変化球でゴロを打たせる投手という印象が強い。球数を少なくするためにはそういった投球スタイルが理想となるが、原の場合は球威が戻り、奪三振率が上がったことがイニングイーターとして良い方向に出ている。
来シーズンもイニングを稼いでブルペンの負担を減らしていけるか。4年目のエース候補のさらなる飛躍が期待される。