目につく与四球の少なさ
今年の楽天イーグルスは、58勝82敗3分の借金24でリーグ最下位に沈んだ。そんな中でも輝きを放ったのが、パ・リーグ最優秀防御率のタイトルを獲得した岸孝之である。防御率2.72とパ・リーグの規定投球回到達者の中で唯一2点台を記録した。なぜ岸が最優秀防御率のタイトルを獲得できたのか、その要因を岸の球種分析する。

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上の表に、パ・リーグ防御率ランキング5位までの選手の主な成績をまとめた。
目についたのが与四球の少なさで、断トツで少ないのが見て取れる。四球は出塁、進塁を許すだけでなく、球数も増えて、守備のリズムも悪くしてしまう。岸は、与四球を少なく抑えることで無駄な失点を防ぐことができていたようだ。
威力あるストレートは見逃し率も高い
岸の代名詞と言える球種といえば「カーブ」と答える人が多いのではないだろうか。確かに岸はカーブが武器ではあるのだが、それを活かすためのストレートにおいても優秀な数字を残している。

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上の表は前述の5投手について、ストレートの被打率、空振り率、ストライク見逃し率を算出したものである。
際立っているのが岸の被打率の低さである。今オフ、メジャーリーグに移籍が濃厚な快速左腕、菊池雄星ですらストレートの被打率は.252。岸のストレートはそれよりも優秀な数字を残しており、それだけ打者にとって厄介な球種となっているのだ。
また、岸のストレートの特徴として、見逃し率の高さがある。表を見てもらえればわかるように、ストレート見逃し率はこの中でトップの数値。ストレートを際どいストライクゾーンに投げ切れている証拠だ。
岸のストレートは威力があるため被打率が低く、コントロールも良いため、打者を打ち取るのに有効な質の高い球であることがわかる。
カーブとチェンジアップ、緩い変化球も効果的
そんな強力なストレートに加え、緩い変化球も武器としている。岸の持ち球について、球種別の成績を下表にまとめた。

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この表からわかるように、一番投球割合が高いのがストレートである。次にチェンジアップ、カーブ、スライダーと続く。大方のイメージ通り、緩いボールを武器にしていることは間違っていないようだ。
それぞれの変化球についてデータを詳しく見ていくと、カーブは被打率が1割台と圧倒的に低く、打ちづらい変化球であることがわかる。また、見逃し率も19.7%と高く、緩急を使った上で、ストライクゾーンにもしっかり投げ込めていると推測できる。
ストレートの次に投球割合の高いチェンジアップは、空振り率が最も高い。カーブもチェンジアップも緩い変化球ではあるが、空振りがほしい場面ではチェンジアップ、見逃しを狙う際はカーブを有効的に使っていることがこのデータからうかがえる。
来シーズンの課題は勝利数
今シーズン、岸が投じたストレートの平均球速は142.5km/h、最も球速が遅い球種であるカーブの平均球速が110.7km/hで、約32km/hの差がある。この緩急こそ岸孝之の真の武器ではないだろうか。
直球、変化球両方のコントロールが良く、四球を出さない。そして、緩急を活かす投球でタイミングをずらすスタイルを貫き、最優秀防御率のタイトルを獲得した。その一方で勝ち星には恵まれず、11勝とやや物足りなさを感じたシーズンでもあった。
来シーズンは防御率もだが、ぜひ勝ち星を増やし、楽天イーグルスのエースとしてだけでなく、日本球界を代表する右腕として飛躍するのを楽しみにしたい。