ヤクルトに復帰、ヒットメーカー青木宣親
春季キャンプが始まろうかという2018年1月末、この男のヤクルト復帰が一斉に報じられた。2012年から活躍の場をメジャーリーグに移していた青木宣親だ。チームは昨季96敗を喫し最下位に沈んだだけに、ヒットメーカーの加入には大きな期待が寄せられた。
そんな中、序盤こそ本来の姿が見られなかったものの、6月以降は打率.360を記録。見事な成績を残し、チーム躍進の原動力となった。青木の打撃は自身7年ぶりの日本球界に適応する上で、どのような変化があったのだろうか。
序盤と中盤以降の変化を探る上で注目したいのが、打球方向だ。5月まではレフト方向への打球が最も多く、割合にして41%を記録。しかし6月以降はその割合が大きく減り、センターから右への打球が目立つ。このことから、タイミングの取り方やミートポイントの意識に何らかの変化があったことがうかがえる。
日本時代の打撃スタイルが成績向上の一因
そして、引っ張りの打球は割合が増えただけでなく、その内容にも変化が見られた。序盤は右方向には引っ掛けたようなゴロが多く飛び、またセンターへの長打も0本だった。
しかし、中盤以降は打球に角度がつくようになったことで、センターから右への長打が増加。フライ割合は30%台と特筆する数字ではないものの、これは自身の渡米前とほぼ同じ水準だ。短期間で日本時代の打撃スタイルに戻ったことが、成績向上の一因になったと考えていいだろう。
中盤以降の巻き返しもあり、打率.327でシーズンを締めくくった青木。日本球界に復帰した多くの選手が思うような成績を残せない中、青木は渡米前と変わらぬ高い打撃技術を証明してみせた。いくつものチームを渡り歩く選手のことを「ジャーニーマン」と呼ぶが、上記の数字はアメリカで7球団を渡り歩きながらも毎年安定した成績を残してきた青木の適応力に他ならない。
5月にはNPB通算4000打数に到達し、生涯打率でNPB歴代トップに躍り出た青木。来年1月には37歳を迎えるベテランだが、その打撃に衰えは感じられない。日本球界復帰1年目にたどり着いた王座を、どこまで守り通すことができるのか、ツバメが誇る安打製造機の行く末を見守りたい。
企画・監修:データスタジアム、執筆者:泉 熙