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西武・辻発彦監督の涙で改めて思う、日本シリーズの価値とCSの存在意義

2018 11/6 07:00浜田哲男
野球ボール,ⒸShutterstock.com
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完全優勝もCSでソフトバンクに敗退

2018年のパ・リーグは、西武が10年ぶりのリーグ優勝を達成。開幕から8連勝するなど開幕ダッシュに成功すると、一度も首位の座を譲ることなく圧倒的な強さで優勝を決めた。

しかし、クライマックスシリーズ(CS)ではソフトバンクに2勝4敗(アドバンテージの1勝を含む)と完敗を喫し、日本シリーズ進出を逃した。

試合後のセレモニーで、西武の辻発彦監督は人目をはばからず男泣き。マイクの前で頭を抱えて嗚咽を漏らす姿には、西武ファンでなくとも心を打たれるものがあった。

2位のソフトバンクに6.5ゲーム差をつけての優勝。9月には3.5ゲーム差で迎えたソフトバンクとの天王山に3連勝するなど怒濤の12連勝。マジックを一度も消滅させることなく驚異のラストスパートを見せた西武の指揮官が、涙にくれてシーズンを終える…。あまりにも残酷で、厳しすぎる現実だった。

現在の日本シリーズは頂上決戦と言えるか

日本シリーズは、メジャー・リーグのワールド・シリーズを模倣する形で1950年から始まった。セ・パ両リーグの優勝チームが7回戦制で戦い、先に4勝すれば日本一となる。このルールに異議を唱える者はいないだろう。しかし、2004年にパ・リーグに導入されたプレーオフが状況を一変させた。

プレーオフとは、これまではレギュラーシーズンの優勝チームに与えられていた日本シリーズの出場権を、上位3チームによるプレーオフで決定する仕組み。2007年からはクライマックス・シリーズ(CS)と名称を変え、セ・リーグにも導入された。

この制度により、例え1位のチームが独走していても、CS進出をかけた争いがレギュラーシーズンの終盤まで盛り上がるなど、ファンにとっても興行面で見ても良い部分はある。

しかし、2017年に首位の広島に14.5ゲームの大差をつけられ、シーズンを3位で終えていたDeNAが、CSを勝ち抜き日本シリーズへ進出した際には「リーグ戦は一体何だったんだろう」といった声がSNSで多数寄せられていた。

古くは2004年・2005年と、ソフトバンク(2004年はダイエー)が2年連続でシーズンを1位で終えながらプレーオフで敗れた際にも、同制度に反論する意見が多数挙がっていた。

CSは完成形ではない…その在り方は見直されるべき

CSは確かに盛り上がり、「下克上」というワードに代表されるように様々なドラマが生まれる。しかし、日本シリーズの威厳を取り戻すためにも、その在り方は見直されるべきではないだろうか。

例えば、セ・パ両リーグの2位と3位のチーム(計4チーム)でリーグ戦を開催し、首位になったチームをその年の3位として表彰。1位のチーム同士がかつてのように日本シリーズで対戦する…といったように手法は色々とあるし、制度自体をファン投票で決めるというのも面白いかもしれない。

CSで敗れた西武には、「リーグ優勝した事実は変わらない」「胸を張っていい」などといった声が多数寄せられていたが、やはり腑に落ちないというのが多くのファンの本音だろう。

今回、辻監督が流した涙を見て、日本シリーズの価値とCSの存在意義を改めて考えさせられた。