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西武ドラフト7位・佐藤龍世 技と心を磨いた4年間、いざ若獅子

2018 11/1 11:00永田遼太郎
佐藤龍世,ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

富士大学〝第4の男″佐藤龍世

気持ちが良いほどのフルスイングに見惚れてしまった。

埼玉西武ドラフト7位指名の富士大学・佐藤龍世内野手である。山川穂高、外崎修汰、多和田真三郎に続く富士大学〝第4の男″。

プロ入り後の伸び率にも定評がある同大学で、高校時代わずか2本塁打だった男が、大学の4年間で20本塁打を打つほどに大きく成長した。

「(大学に入って)ウエイトの量も増やしました。その分体重も増えて、振り込む量も増えて、バッティングフォームもいわゆる〝金属打ち″だったんですけど、長く木(のバット)を経験してる先輩方にも教わってフォームも変わりましたね」

ウエイトトレーニングはシーズン中週3回、シーズンオフはほぼ毎日行った。体重もこの4年間で3㎏増えて振る力もついたと胸を張る。

もちろん基礎体力だけじゃない。技術面でも自主練習の量を増やして積極的に取り組んだ。ドラフト指名はその成果の表れともいえる。

“雑草魂”でプロの世界に挑む

ドラフト後、祝福のLINEは全部で500件くらい来たと話す。だが返事はまだ書けていない。

「ドラフトもひとつの節目だったんですけど、この試合に4年間の全てをかけていたので……。落ち着いてからみんなには返したいと思います」

佐藤がいうこの試合とは、10月28日、郡山ヨーク開成山スタジアムで行われた明治神宮野球大会東北地区代表決定戦一回戦(東北福祉大学戦)だ。

大学野球の春の最高峰である全日本大学選手権の覇者を相手に、佐藤はこの4年間の想いを全て乗せるように積極的にバットを振った。

すると、第一打席、打球はうねりをあげるようなライナーでセンター前に飛んでいく。

来年のドラフト会議の有力候補としても名が挙がっている大学日本代表の津森宥紀が相手だったが、先にプロの道へ進む先輩の意地を見せるかのような見事なバッティングだった。

佐藤龍世,ⒸSPAIA

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しかし、6回と8回に回って来た二つの打席ではともに、無死一塁のチャンスに結果を残せず悔いが残った。

「どっちに転ぶか分からない試合で結果は4対1で完敗なんですけど、こっちも(ヒットを)打っていますし、チャンスで1本打てたか、打てなかったかが勝負の分かれ目だったというか、そこがやっぱり悔しかったです」

それでも併殺打を打たされた6回の第3打席を自分の中で見直し、8回の第4打席ではバットの芯でしっかりボールを叩いた。

結果はライトライナーに終わったが、当たりはけっして悪くなかった。

「その前(の打席)は低めのボール球で凡打を打たされていたので、真っ直ぐが来たら全部振ってやろうみたいな感じで振りました。芯では打ったんですけどちょっとこすっちゃいましたね」

高い修正力、そして順応力は山川、外崎、多和田の前三人の先輩方にも劣らない。正式契約はまだ少し先だが、ファンもそして埼玉西武の辻発彦監督も、そんな彼に明るい未来を見ている。

「一年目で失うものとか何もないので下から這い上がれるように〝雑草魂″でやっていきます」

佐藤もすっかりその気のようだ。

監督、コーチへの恩返しはプロの舞台で

取材対応は明るめで、気の良い性格であることはそこからも感じる。

自身でもこの大学での4年間で技術面だけではなく、精神面でも大きく変わったと話す。

「野球の面では色々指導を受けて成長させてもらったんですけど、やっぱり大学生にならなきゃ分からなかったこと、普通に(高卒で)そのまま働いていたらもっと子供だったと思うので、自分より年上の方の話を聞くことも多く出来ましたし、人として成長出来たかなと思います」

その中でも富士大学・豊田圭史監督や4年間お世話になったコーチ陣への感謝の意を忘れない。

「チームによっては監督さんやコーチとあまり喋れないチームもあるじゃないですか。その点でうちは監督もコーチもコミュニケーションをとってくれてダメなことはダメ、良いことは良いとハッキリ言ってくれるので……。そこは良かったなと思います」

佐藤龍世,ⒸSPAIA

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技を磨き、心を磨いた大学での4年間。

そこに後悔があるとすれば、4年最後の全国大会に監督を連れていくことが出来なかったこと。

「僕も、主将の(楠)研次郎も、(佐々木)健も一年生の頃から使ってもらっていて…。全国に連れて行ってあげたいと言ったら上からになりますけど、最後くらいは全国で活躍しているところを豊田さんに見せたかったなって想いがあります」

全国制覇の悲願達成は後輩たちに託した。その分、自分はプロの舞台で活躍することで監督に恩を返したいと考える。

だからこのオフのプランも決まった。

「バットももっと振り込まないといけないし、プロの練習はきついと思うので体力作りもしっかりしていきたい。もう一回基礎から見つめ直して…。シーズン中はどうしても基礎体力の練習とかができなかったので、それをここで頑張りたいなって」

その視線は2月1日のキャンプイン、そして3月29日の開幕一軍へ向いている。