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岩瀬、荒木の永久欠番はどうなる 中日の背番号は継承ありき?

2018 10/6 07:00青木スラッガー
Ⓒ中日ドラゴンズ,岩瀬仁紀,Yoshihiro KOIKE
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ⒸYoshihiro KOIKE

岩瀬の「13」、荒木の「2」、浅尾の「41」

中日黄金期を支えた岩瀬仁紀、荒木雅博、浅尾拓也の3人が、今シーズン限りでユニフォームを脱ぐこととなった。ほぼ3人同時の引退発表とあって、ファンの驚きと悲しみは大きい。一方で、気持ちの整理がついたファンからは、早くもシーズン終了後の球団の対応について心配する声があがっている。

中日ファンが心配するのは、3人の「背番号」の行方だ。岩瀬の「13」、荒木の「2」、浅尾の「41」。3人とも入団時からこの番号を背負って中日一筋で戦ってきた。また、落合博満監督の下では黄金期を築き、球団史上53年ぶり2度目となる日本一を実現させた選手たちでもあり、その背番号には重みがある。

特に数々の日本記録を持つ岩瀬の「13」に関しては、「永久欠番」入りにふさわしい輝かしい実績を残しており、それを望むファンの声は非常に多い。しかし、中日の過去の例を見ると、その可能性は低いのではと考えさせられる。

反発も少なくなかった、立浪「3」・山本昌「34」の扱い

中日の永久欠番は「10」の服部受弘と「15」の西沢道夫2名。いずれも1954年の日本一に貢献し、1958年に引退した選手だ。

中日と同じくプロ野球発足時から存在している阪神も3名で、中日が特別少ないわけではないが、二人の永久欠番は強制引退と引き換えに与えられたという杉下茂氏の談話が掲載されている。サンケイスポーツの連載『【ありがとう八十年(154)】杉下茂、“強制引退”で監督に』でも「監督を引き受けるにあたり、二人に永久欠番を与えることを条件に出した」としている。

長らくファンの間では2007年まで50年以上遠ざかった「日本一」への貢献が条件だと考えられていたが、永久欠番がレジェンドの強制引退に絡んだ政治的副産物によって生まれたものであり、球団が永久欠番を貢献した選手の功績を称える手段として選択肢に入れていないのであれば、当然話は変わってくる。

しかしそういった背景を考慮しても、近年の中日のレジェンドに対する背番号の扱いは、ファンにとって疑問が残るものであった。

近年の中日生え抜き名選手といえば、2009年引退の立浪和義、2015年引退の山本昌の2人の名が真っ先に上がる。立浪のときはファンから「3」を永久欠番にしようという署名活動も発生したが、球団は三塁手の後継者にあたる森野将彦に翌年から継承させると発表。森野が辞退したため実現しなかったものの、結局1年の空白期間を置いた後、PL学園の後輩である新人の吉川大機が「3」をもらっている。

山本昌の「34」は、間をおかず引退翌年入団の左腕・福敬登が受け継いだ。山本自身が永久欠番にこだわりを示さず、左腕投手への継承を望んでいたという事情もあった。だが、32年間ひとりの投手が背負った背番号を、あっさり新人に渡してしまう球団の対応には、猛反発するファンも少なくなかった。

「継承」もレジェンドの功績を称えるひとつの形だが

決して永久欠番だけが全てというわけではない。他球団では、ヤクルトの背番号「1」が若松勉、池山隆寛、岩村明憲、青木宣親、山田哲人と代々の中心選手へと受け継がれている。このように、背番号を「継承」していくのも、レジェンドの功績を称えるひとつの形だ。中日でも吉川のトレード移籍後に「3」が回ってきた高橋周平が、今シーズンレギュラーに定着して「立浪2世」と期待を寄せられている。

ただし、ふさわしい選手がいなければ、「継承」の前に「準永久欠番」という扱いで空白期間が設けられるのが一般的だ。山田が「1」を継承したのは1回目のトリプルスリーを達成した翌年の2016年で、5年間の空白期間があった。広島・丸佳浩も緒方孝市監督が2009年の現役引退までつけていた「9」を継承したのは、入団7年目の2014年からで4年の空白期間の後である。

例えば、この両球団では古田敦也の「27」、宮本慎也の「6」、前田智徳の「1」のように、引退から未だ後継者が現れていない「準永久欠番」もいくつかある。オリックスからメジャー移籍したイチローの「51」も、球団合併という激動があった中でもうやむやにはされず、未だ空席のままである。

20年以上ハードなポジションで投げ続け、チームを救ってきた岩瀬に対するファンの思い入れは、オリックスファンのイチローへの思いと同じか、それ以上のものがあるはずだ。「継承」という形をとるなら、ふさわしい選手が現れるまで空白期間を設けないとファンは納得しないだろうが、それだけの選手が果たしてこの先出てくるだろうか。