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中村と栗山が最後は打線の中心に。西武を優勝へ導いた35歳コンビ

2018 10/1 11:55青木スラッガー
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昨シーズン「世代交代」の波が訪れた西武

開幕から猛打で他球団を圧倒してきた西武が、ついにパ・リーグの頂点に立った。中盤は日本ハム、終盤はソフトバンクの猛追にあったが、勝負どころで直接対決を制し、最後は5試合を残してリーグ優勝を成し遂げた。

西武の快進撃がはじまったのは、昨シーズンの夏場からだ。赤い炎が躍る「炎獅子ユニフォーム」を着用した夏休み期間に20勝4敗と驚異的な勝ち星を挙げ、その勢いのまま、今シーズンも開幕から突っ走った。

この炎獅子ユニフォーム期間に大ブレイクしたのが、リーグ優勝決定時点で46本塁打をマークしている山川穂高。さらに、昨年ルーキー遊撃手で新人王を獲った源田壮亮に初の規定打席到達となったユーティリティープレーヤー外崎修汰と、昨シーズンは若手野手が続々定位置を獲得。今シーズンの戦いの基盤をつくりあげた。

一方で、昨シーズンやや元気がなかったのが長くチームを支えてきたベテラン陣だ。中村剛也は27本塁打をマークしたが、打率.217。「規定打席に到達すれば本塁打王」のジンクスも初めて逃した。栗山巧も、10年ぶりに規定打席へ届かず。自己最低の打率.252でシーズンを終えた。

「世代交代」― その波が、昨シーズンの西武野手陣には確実に訪れていた。中村と栗山は2001年ドラフト同期入団で、今年で35歳。急な衰えがきてもおかしくない年齢だ。しかし、今シーズン優勝への道のりの中、幾度となく訪れた苦境を救ったのは、この頼りになるベテラン2人だった。

「復活」の中村と栗山 チームの苦境を救う活躍

今シーズン序盤、山川や浅村栄斗ら20代野手陣が絶好調でチーム引っ張っていた中、中村は昨シーズン以上の打撃不振にあった。開幕こそ三塁手スタメンで迎えるも、打率1割台にノーアーチが続く。4月下旬には左肩痛で抹消。6月まで1か月以上二軍で再調整となる。

しかし、一軍に戻ってきてからの活躍は圧巻だった。再昇格当初はなかなか当たりが出なかったが、徐々に復調し、7月は8本塁打。8月はプロ野球記録に王手をかける6試合連続本塁打と打ちまくり、最終的に月間12本塁打をマークして月間MVPを獲得。「恐怖の7番打者」として、疲れが見えてきたチームを再び勢いづけた。

一方、栗山は外崎ら若手野手が台頭して出場機会が減った昨シーズンからの流れで、序盤は出番に恵まれなかった。しかし、代打できっちり仕事をこなしていく。そんな中、中村の抹消などでスタメン出場が増えると、随所でさすがの勝負強さを発揮。特に、少しチーム状態が落ちて日本ハムに猛追されたシーズン中盤、立て続けにチームを救う活躍を見せた。

負ければ首位陥落の危機もあった7月1日楽天戦は、同点タイムリーと中押しのソロ本塁打で勝利を呼び込む。7日楽天戦は決勝本塁打、9日ロッテ戦でも5点ビハインドから逆転のきっかけをつくる3点タイムリーと、接戦をものにする一打を何度も放ち、日本ハムに首位を渡さなかった。

35歳コンビが、最後の最後で打線の中心に

シーズン最終盤に入ると、中村と栗山が揃ってヒーローになる展開も増えていった。9月17日のソフトバンク3連戦の3戦目では、栗山が初回に満塁本塁打を放つと、この日は中村も7回に3ランで続く。天王山で3連勝を飾り、一気に優勝への歩みを加速させた。

夏場から本塁打を量産する中村に加え、9月以降は栗山も打撃好調。リーグ優勝決定時点で月間打率3割超えをマークし、3本塁打13打点。現在は4番山川の後ろで栗山が5番に入り、さらに中村が6番に座る。一時は世代交代の憂き目にあったベテラン2人が、今や打線の中心だ。

前回2008年の日本一から10年。涌井秀章や岸孝之をはじめ、FA流出が相次いだ西武では10年前の優勝を知るメンバーもずいぶん少なくなった。他に炭谷銀仁朗などがいるが、現在レギュラー格で出ているのは中村と栗山のみ。FA権を持ちながら、チーム愛で残留を選んだ35歳コンビが、チームを10年ぶりのリーグ優勝に導いた。