「スポーツ × AI × データ解析でスポーツの観方を変える」

カープを3連覇に導いた緒方監督のマネジメント力

2018 9/28 07:00藤本倫史
バッターⒸShutterstock.com
このエントリーをはてなブックマークに追加

緒方監督の功績

ようやく広島東洋カープが優勝を決めた。ファンの方も今か今かと気をもんだことだろう。私も9月24日のマジック「1」の試合を観戦し、間違いなく優勝を見ることができると確信していた。結果は、26日の胴上げとなった。

3連覇は偉業である。これまでセリーグで3連覇以上を果たした球団は巨人だけだ。パリーグも1995年以降、達成した球団は無い。

偉業の達成は、丸や鈴木誠也、大瀬良ら選手の活躍あってこそだが、もっと注目してほしいのが緒方孝市監督である。

就任4年目にして3度のリーグ制覇。日本一には届いていないものの名将、名マネージャーと呼ぶにふさわしい実績だ。ただ、その功績を称える声は意外と少ないように感じる。

平成の名マネージャーでいうと、野村克也、落合博満、原辰徳、栗山英樹などがよくメディアに登場し、書籍も刊行されている。

それに比べ、緒方監督はメディアに登場する機会も少なく、試合後のコメントも少なめである。メディア対応の少なさで批判を受けるとしても、試合で結果を出すのが仕事と割り切って対応している。

3連覇に導いた2つのポイント

この成果主義と決断力こそが3連覇につながったのではないか。

カープは成果主義を組織に徹底的に取り入れている。よく若手育成を取り上げられるが、実績のある中堅・ベテランの使い方が巧みであることも強みだ。

会社でもそうだが、若手に限らず抜擢するだけなら、思い切りの良さがあれば決断できる。素晴らしい実績はあるが、現在、成果の上がっていない人材に対して、モチベーションを上げ、適材適所に配置し、成果に繋げることは難しい。

この難題を緒方監督は、評価基準を明確にし、試合で結果を残したものがチャンスを得るという分かりやすい組織作りを行うことで解決した。

例として、元守護神の永川勝浩がそれに当たる。

中継ぎ陣が苦しんだ6月に、永川は一軍に昇格した。永川は昨年度、一度も登板機会が無く、引退も囁かれていた。しかし、黙々と練習に励む姿と、2軍での結果を緒方監督はしっかりと見ていた。

最初は敗戦処理だったが、好リリーフを見せ、2016年以来の勝利と6HPを上げた。現在は不調で再び2軍にいるが、この起用は明確な評価基準による決断と成果主義があってこそだ。

野手でいうと、小窪哲也と堂林翔太もそうだ。小窪は初優勝する前年の2015年まで代打と切り札、2016年には選手会長としてチームを引っ張っていた。ただ、極度の不振から出番が減っていたが、夏場になり復調し、1軍の重要な戦力となっている。

堂林翔太は次世代の大砲として期待されていたが、今年の役割は違った。守備や走塁を改めて、見直し、代走や守備固め、バントと黒子役として新たな一面を出して活躍した。堂林は複雑な思いもしたかもしれないが、出場機会を得た。

この新たな一面を引き出したのは、緒方監督の功績ではないか。地味であるが、このような中堅・ベテランが若手と融合した組織だからこそ、カープの強さが継続できている。

モチベーション維持と非情な采配

なんといっても超ベテランであり、3連覇の立役者でもある新井貴浩の起用も巧みである。今年、引退を発表した新井を最後まで「戦力」として使った。

MVP を獲得した2016年のような主力選手ではなく、代打の切り札もしくはチームを鼓舞したい時に先発させるという起用をシーズン序盤から続けた。怪我の期間以外、1軍ベンチに置き続け、胴上げの瞬間もグランドで迎えさせた。

石原やジョンソン、エルドレッドなどの古株の外国人選手にも気を使い、モチベーションを下げない配慮を行った。

主力選手にも成果主義を貫き通した。3連覇の原動力となった田中と菊池。不動の1番、2番と思われたが、不振に陥ると打順を下げる。非情な采配にも見えたが、本人たちはそれに奮起し調子を取り戻した。

繰り返しになるが、地味であるが緒方監督の組織作りや采配を評価してもらいたい。そして、もう一度、そのような動きを皆さんにも振り返ってもらえると、これからのCSや日本シリーズより奥深く楽しくなるのではないか。