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「絶対的エース」不在の広島 黄金期へ”コア4”最後のピースは大瀬良

2018 9/27 11:13青木スラッガー
大瀬良大地
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ⒸSPAIA

「エース」として広島を3連覇に導いた大瀬良

今年も圧倒的な戦いぶりでセ・リーグの頂点に立った広島。野手陣は相変わらず丸佳浩、鈴木誠也ら2016年からの主力メンバーがチームを引っ張ったが、投手陣は、優勝決定までリーグトップの15勝を挙げた大瀬良大地の躍進が大きかった。

5年目のドラ1右腕がシーズン2桁勝利を達成するのは、新人王を獲得したルーキー年を含めて3度目。昨シーズンも10勝2敗で8つの貯金をもたらしている。しかし、投球回は規定を2イニング上回るだけの145.2回と、ローテーションを年間守った先発投手としてはやや物足りない数字だった。

解禁された2段モーションのフォームで臨んだ今シーズンは、25登板時点で167回に到達。優勝が見えてきた9月に入ってからは打たれる登板が続き、疲労も心配されたが、マジック「2」で挑んだ24日のDeNA戦は8回127球1失点の力投。開幕からフル回転で、一番しんどいはずの時期も崩れず、優勝が決まる最後まで「エース」と呼ぶにふさわしい投球でチームを3連覇に導いた。

前田健太以来、「絶対的エース」不在の広島

もし大瀬良の覚醒がなければ、ペナントの行方は全く違ったものになっていたかもしれない。今シーズンを含めて、広島は圧倒的な戦力をもって3連覇という偉業を達成した。しかし「先発投手」の戦力に関しては、実は振り返ってみると紙一重だったという部分もある。

2016-2018年広島カープ2桁勝利投手

ⒸSPAIA

3連覇の間、15勝以上のエース格は毎年おり、チャンピオンチームとしても申し分のない投手層だ。だが、この3年間で2桁勝利を2回マークしたのは大瀬良とジョンソンのみ。連続してマークしたのは大瀬良が初めてとなる。前田健太以降は、「絶対的エース」と呼べる存在が現れていないというのが現状だ。

それでも3年間先発投手に困らなかったのは、即戦力を着実に当てるドラフト戦略と外国人補強のおかげだろう。大瀬良をはじめ、完成度が高い、あるいは馬力がある大卒投手のドラフト上位指名がことごとく活躍し、ジョンソンという外国人左腕も引っ張ってこれた。

しかし、こういう「年替わりエース」に頼ってばかりでは、それが外れたときのリスクも大きい。過去2年の流れでいくと、4連覇にはまた新たなエースの出現が必要になってしまう。

ヤンキース黄金期「コア4」を広島に例えると

広島が目指すような黄金期を築いたチームとして、1990年代後半からワールドシリーズ3連覇、同年から地区9連覇を達成したヤンキースを例に挙げてみる。

この黄金期を支えたのは、「コア4」と呼ばれる同世代の生え抜き選手たちだ。遊撃手のジーター、捕手のポサダ、クローザーのリベラ、先発投手のペティット。チーム作りにおいて、「核」となる4ポジションの4人である。

「コア4」を広島で考えると、3ポジションには相当する選手がいる。ジーターは遊撃手だが、「守備の良いセンターラインの好打者」という意味で、タナキクマルをひとくくりに当てはめられるだろう。ポサダのような「打てる捕手」には、今シーズンの扇の要として存在感を発揮する會澤翼。リベラが守った9回のマウンドには、中崎翔太が不動の守護神に君臨している。

あとは、ペティットのような先発投手の柱だ。ペティットはヤンキース在籍15年で通算219勝を挙げ、メジャー歴代最高となるポストシーズン通算19勝という大記録の保持者である。

過去2年、ポストシーズンで苦難を味わった広島。今後さらに連覇を重ね、1984年以来となる日本一まで登り詰めるには、毎年安定して2桁勝利を挙げ、ポストシーズンでも勝利を計算できる先発投手の存在が不可欠だ。

大瀬良はペティットになれるか。今度こそ、黄金期をつくりあげる「絶対的エース」の登場が期待される。