東京五輪の2020年、20歳となる高校3年生
高校野球の第100回記念大会が開催されている今年は2018年。2年後の夏は東京五輪だ。日本の地で、2008年北京以来3大会ぶりに野球が復活する。今年の高校3年生はそのとき20歳を迎えるが、2年後に日の丸を背負う選手は夏の甲子園にいるだろうか。
高卒2年目までにプロで大活躍し、トップ代表チームに選出されるというのは並大抵のことではない。プロからのメンバー選出がはじまった五輪3大会と、過去4大会WBCの最年少メンバーは以下のようになっている。
オールプロで臨んだアテネ、北京の2大会で、高卒2年目に代表入りを果たしたのは当時楽天の田中将大のみ。プロアマ混合のシドニー五輪では、当時西武の松坂大輔と当時三菱重工業の杉内俊哉が高卒2年目で代表入りした。
駒大苫小牧高の田中は2年生で全国の頂点に立ち、横浜高の松坂大輔は春夏連覇に、決勝戦ノーヒットノーラン。最後の夏は松坂と投げ合って敗れた鹿児島実業高の杉内も甲子園でノーヒットノーランを達成している。当時から「怪物」として、特に田中と松坂は将来プロでエースとなることが約束されたような投手たちだった。
ⒸSPAIA
19歳で「代表級」の活躍を見せているオリックス山本由伸
今年の高校野球はどちらかというと野手が豊作で、投手に当時の田中らほどの前評判を持った存在はいない。野手には大阪桐蔭の根尾昂と藤原恭大、報徳学園の小園海斗といった1位指名候補がいるが、投手よりも育成に時間がかかる野手で、高卒2年目以内に代表級の活躍は現実的でないだろう。普通に考えれば、甲子園から2年後の「東京五輪の星を探せ」というのは飛躍しすぎた話だ。
しかし、今年のプロ野球を見ていると、そうとも言い切れない気持ちにさせてくれる選手がいる。高卒2年目でオールスターに最年少選出されたオリックスのリリーフエース、山本由伸のことだ。
山本は8月8日終了時点で25ホールドを記録。開幕二軍スタートで、7月末からも疲労を考慮して10日間登録抹消となっていたにもかかわらず、両リーグトップのホールド数である。39登板で防御率は脅威の1.41。日本人選手のリリーフ右腕としては両リーグトップだ。もし今年が五輪イヤーであれば、代表に選出される可能性は十分にあっただろう。
山本は宮崎の都城高校時代、全国的には無名に近い存在だった。3年間で1度も甲子園出場は叶わず、最後の夏も宮崎大会3回戦敗退。10代で即戦力として活躍する現在からは考えられないが、オリックスがドラフト4位で指名するまで、他球団は彼を放っておいたのだ。
14奪三振衝撃の甲子園デビュー金足農・吉田輝星
今年の高校野球界にもまだ才能が見つかっていない怪物がいて、2年後は19歳か20歳にして、日の丸のユニフォームに袖を通すことになるのかもしれない……。そういう目線で甲子園を観るのもおもしろいではないか。
8月8日の大会4日目には、プロ注目の最速150キロ右腕、金足農業・吉田輝星が衝撃の甲子園デビューを果たした。
1回戦の鹿児島実業戦に先発登板した吉田は、最速148キロを計測したストレートを武器に14奪三振完投。全奪三振のうち12個はストレートが決め球で、そのほとんどが高めのボール球という力でねじ伏せる投球だった。
超高校級の球威だけでなく、総合的なピッチングの完成度の高さも光った。プロ入り後の田中のように、ランナーの有無や相手打者によってギアを替え、得点圏にランナーを背負うと全然違うボールが来る。牽制やクイック、フィールディングも巧みで、プロ入り後に投球以外で覚えることが少なく済みそうだ。
鹿児島実業戦の吉田は序盤で変化球を見切られていると感じ、ストレート中心に力で押す配球に切り替えたという。すぐにプロで活躍できるかどうかは、変化球をどれくらい操れるのか、レベルが上がる相手にも力で押す投球が通用するのかといったところを、次の登板で見定めたいところだ。「即戦力」という評価になってくれば、「2年後」のことも期待してみたい。