「スポーツ × AI × データ解析でスポーツの観方を変える」

西武の若獅子・本田圭佑「今やれることを」 高みを目指し雌伏の時

2018 7/5 11:00永田遼太郎
埼玉西武ライオンズ,本田圭佑,ⒸYoshihiro KOIKE
このエントリーをはてなブックマークに追加

ⒸYoshihiro KOIKE

U-23ワールドカップで大暴れ

この2年間ぐらいずっと注目していた選手がいる。埼玉西武の本田圭佑である。

2016年11月、メキシコで行われた第1回WBSC U-23ワールドカップ。本田は140キロ台後半の直球と、落差の大きいカーブを武器に海外の並み居る大男たちをきりきり舞いにしてみせた。

まずはニカラグアを相手にした開幕戦。彼は7回85球を投げて、打たれたヒットはわずか2本、うち1本は内野安打で、外野に飛んだ打球もわずか3度だけという完璧な投球を見せた。すると、決勝のオーストラリア戦でも2回を投げて5奪三振、無失点の好リリーフ。

大会終了後、同大会でU-23日本代表の正捕手を努めた柿沼友哉に話を聞くと、

「本田、めちゃくちゃ良かったですよ!真っ直ぐはもちろん、あとコントロールが良かったです。リードしていて凄く楽しかったし、自分的には参加したピッチャー陣の中でもかなり良かった、一番じゃないかと感じました。(来年?)出てくると思います」

と、まるで自分事のように興奮気味に話していたのだ。

2017年は結果を出せず……

そんな柿沼の姿を見て、これはぜひ本人にも話を聞きたい、そんな想いを抱きつつ、付き合いのある編集者には事あるごとに「本田圭佑」の名前を出し、彼を取材する機会が来ることをずっと待っていた。

しかし、昨年の本田は春季キャンプこそA班(1軍)でスタートを切ったものの、その後は尻すぼみという状態だった。

辻発彦監督をはじめ、首脳陣からの期待も大きく、一時は開幕ローテーション入りも検討されるなど、高い評価を受けていたがオープン戦では、思うような結果が残せず開幕は2軍スタート。

その後、ファームで結果を残し、シーズンも佳境に入った8月27日のオリックス戦で、ようやく一軍で先発のチャンスをもらったが、その試合でも、味方打線に3点の援護をもらいながら、直後の2回表にオリックス打線につかまり大量失点を許すなど、期待にかなう活躍は見せられなかった。

高まるファンの期待、活躍を待つ声

シーズンオフに入ると、本田への期待を煽る情報が相変わらずあちらこちらから飛んでくる。秋季キャンプでは辻監督や、土肥義弘、西口文也、両投手コーチが熱い視線を向ける中、ブルペンで220球の熱投。年明けには熊本市内で行われた野上亮磨との自主トレでインドネシアに生息するコモドドラゴンを真似た四足歩行の動きを、トレーニングに取り入れ、普段の練習では身に付かない全身の強化や、肩甲骨の可動域を広げるなど強化に励んだ。

「今度こそは」

そう感じたが、春季キャンプは2年連続でA班スタートとなったものの、シーズンが始まり、開幕から3カ月が経過した今も、彼の居場所は依然、ファームのままだ。

「本田はまだか?本田はどうなんだ?」

彼の飛躍を期待するライオンズファンの声も日増しに大きくなっていく。ならばと、このタイミングで西武第二球場に足を向けることにした。

初めて1対1で話す本田は、自身の投球スタイルのようなキレの良いストレートな返答を返してくれる選手だった。しかも、話が簡潔にまとまっている。

日頃から自分の課題と向き合い、自己分析ができている証拠だろう。

「全体のスキルアップが必要」

彼が口を開く。

「海外の大会でしたけど、U-23ということでプロの一軍と比べたらそこまでレベルが高い大会ではなかったと思っています。あの大会は外国人選手が主な相手でしたけど、そこで自分の持ち球のカーブが有効な武器として使えた、それは大きかったと思います。かといって同じピッチングが、プロの一軍で通用したかと言ったらけっしてそうではなかった。なので、自分では全体のスキルアップが今は必要かなというのがあります」

昨年、本田が先発したオリックス戦、最速は147キロを計測した。プロの世界ではまずまず速いレベルだが、しかし、これくらいのスピードボールでは大谷翔平のような速球で圧倒するピッチングスタイルは難しい。

緩急、ボールのキレ、そして正確なコントロールが、プロの一軍では要求される。もちろん本田も、それは分かっている。

「自分のタイプを考えたら、際どいコースにどんどん投げていかなきゃいけないと思っています。ただ、そればかりを意識してはボール先行のピッチングになってしまう。だから、今はある程度のゾーンで勝負するようにして、常にストライク先行でピッチングが出来るように、ボールの質を高めている段階です。コントロールにあまり頼らなくてもいい。勢いのある真っ直ぐで、ファールがとれるような投球。それが今の自分が出した方向性なんです」

今年、本田はイースタンリーグで5勝を挙げている。ただ、自分の理想とする投球内容は出来たり、出来なかったりだと話す。まだまだ調子に波があるようだ。

「今やれることをしっかりと」

今オフ、巨人に移籍した野上の自主トレに参加して、自分に足りないことを学んだ。

「(野上さんの自主トレに参加して)今までどれだけ無駄な力を使って投げていたかを実感しました。自分が今、目指しているのは無駄な力を使わず、少ない力でファールがとれるピッチング。野上さんを見ているとそういうピッチングが出来ていると思います。なので、共に自主トレを過ごすことで、感覚の部分を教えてもらったり、今はそれをひたすら練習している。そんなところなんです」

ブルペン捕手からも投げたボールを褒められる回数が増えて来た。そこに手応えも感じている。

「(一軍昇格?)もちろんそれを目指してやっています。だけど、まだ自分の中では(上のピッチャーと)差があるなと、一軍の試合を見ても凄く感じています。ただ、上に上がれば良いというのではなくて、こっち(二軍)で、やることをやって上がらないと、上に上がっても、さらに上には上がっていけないんじゃないかと思っているので、今は上ばかり見ずに今の自分がやれることを、しっかりやっていきたい。そう思っています」

けっして自分を誇張して見せようとはしない。取材中も、ありのままの自分を伝えようとしており、その姿に好感を持つとともに、頼もしさも感じた。

これから夏場を迎え、シーズンも佳境に入って行く。本田を必要とする場面がきっと出てくるはずだ。昨年と同じ失敗はもうしない。