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菊池・堂林・今宮……タレント揃いだった2009年甲子園組の現在地

2018 7/2 10:14青木スラッガー
野球ボール,ⒸShutterstock.com
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松坂世代、88年組に次ぐ名大会2009年夏の甲子園

夏の甲子園はついに第100回目を迎えるが、近年で特に記憶に残る大会というと、1998年(第80回)、2006年(第88回)が筆頭になるのではないだろうか。

1998年は横浜・松坂大輔を中心とする、1980年生まれ「松坂世代」。2006年は早稲田実業・斎藤佑樹と駒大苫小牧・田中将大が決勝再試合を戦った1988年生まれの「88年組」が高校日本一を争った。名勝負・名場面が多く、注目を集めた選手は現在、順当にプロで活躍している。

だが、中京大中京と日本文理の伝説の決勝戦があった2009年(第91回)も名大会として捨てがたい。1991年生まれが3年生となるこの大会も、第80回・第88回に負けず劣らずタレント揃いであった。

6球団競合ドラ1菊池に優勝投手堂林、智弁岡田は侍ジャパン入り

1991年世代の中心は花巻東・菊池雄星(西武)だった。スリークォーターから150キロオーバーの速球を繰り出すドラフト6球団競合左腕。怪我と戦いながら投げた最後の夏は準決勝で散ったが、その戦いぶりは後に入学する大谷翔平に憧れを抱かせた。最近のプロでの活躍は説明不要だろう。左腕史上最速の158キロをたたき出し、球界ナンバーワン左腕の座に君臨している。

菊池率いる花巻東を準決勝で倒したのは中京大中京。堂林翔太(広島)が4番エースを務めていた。堂林は、一軍デビューの3年目にいきなり14本塁打を放って同世代の中で一番に頭角を現した。そこから年々出場機会は減っていったが、最近は走塁や守備で選手としての引き出しを増やしながら、チームに欠かせない戦力に成長してきている。

智弁和歌山の絶対的エースだった岡田俊哉(中日)は、すでにWBCの大舞台を経験している。プロ入り後「岩瀬2世」を期待され、順調にリリーフとして成長。WBCオーストラリア戦ではピンチで見事に火消し役を全うした。しかしそのシーズン序盤に血行障害で手術を受け、約1年間チームを離れることに。今季は序盤に復帰登板を飾っており、完全復活へ向けて一歩ずつ前進している。

注目選手とばかり当たる今宮。庄司との名勝負も

堂林の他の野手では、本職は遊撃手ながら投手で154キロを計測して甲子園を沸かせた明豊・今宮健太(ソフトバンク)が早くからレギュラーを掴んでいる。3年目の2012年に一軍で頭角を現し、2013年からは不動のショートストップに。強肩を武器に5年連続のゴールデングラブ賞に選出されている。

今宮率いる第91回大会の明豊は、菊池の花巻東に準々決勝で敗れるまで、不思議とタレントがいるチームばかりと当たる巡り合わせだった。初戦は「琉球トルネード」の2年生エース・島袋洋奨(ソフトバンク)擁する興南。2回戦は愛媛の西条と対戦。2017年に12勝を挙げるブレイクを果たし、当時はエース兼4番で「伊予のゴジラ」の異名をとった秋山拓巳(阪神)がいた。

そして名勝負として有名なのが、3回戦常葉学園橘・庄司隼人(広島)とのライバル対決だ。小柄なプレーヤー同士であることから対抗意識を持っていたという両投手は、マウンド・打席で互いに笑みも浮かべながら、何度も直球の真っ向勝負を挑みあった。試合終了後の握手の際、敗れた庄司が今宮にバッティンググローブを託したシーンは胸が熱くなる。

プロ入り後、若くからチームを背負う存在になった今宮に対し、庄司は2014年初出場とデビューが遅かった。その後も厚い野手層を誇る広島で出番に恵まれなかったが、今季は序盤から出場機会をつかみ、一軍定着に挑んでいる。

西川遥輝、吉田正尚、山崎康晃も下級生で出場

第91回大会は、下級生にも注目プレーヤーが何名かいた。2年生で3番を打っていた智弁和歌山・西川遥輝(日本ハム)は後の盗塁王。1年生では、帝京・伊藤拓郎が148キロを計測して大注目を集めた。伊藤はDeNAを2年で戦力外となり、独立リーグを経て現在は社会人野球の新日鐵住金鹿島でプレーを続けている。現在オリックスで主軸打者に成長した吉田正尚は、敦賀気比の4番を1年生で務めていた。

この大会はほかにも高卒プロ入りでは帝京・原口文仁(阪神)、PL学園・吉川大幾(巨人)。大学・社会人を経てのプロ入りでは長崎日大・大瀬良大地(広島)、天理・西浦直亨(ヤクルト)、中村奨吾(ロッテ)、倉敷商・岡大海(日本ハム)、高知・公文克彦(日本ハム)、帝京・山崎康晃(DeNA)、松本剛(日本ハム)など、後にプロで活躍する選手が数多く出場している。

現在24~27歳と、これから野球選手として最も脂がのる時期に差し掛かってくる2009年夏の甲子園出場組。選手たちの活躍と、プロの舞台でも名勝負を起こしてくれることを期待したい。