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37歳糸井「金本曲線」で悲願のトリプルスリー達成なるか

2018 6/28 12:28青木スラッガー
野球ボール,ⒸShutterstock.com
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史上初「3人同時トリプルスリー達成」が期待

2015年から2年越しに、再びトリプルスリーの同時達成があるかもしれない。柳田悠岐(ソフトバンク)は絶好調で、2017年不振だった山田哲人(ヤクルト)も復活した。山田はまだ打率2割台だが、両者とも30本塁打・30盗塁を射程圏内に捉えている。

さらに、今季はもうひとりトリプルスリー達成を狙えそうなベテランがいる。阪神にFA移籍して2年目、7月に37歳を迎える糸井嘉男だ。序盤は3番、中盤頃から4番打者としてチームを引っ張る虎の超人は今季好調。阪神が65試合を消化した6月24日終了時点で、打率.312のハイアベレージに14盗塁、10本塁打をマークしている。

2018年6月27日までの糸井嘉男・柳田悠岐・山田哲人の成績

歴代のトリプルスリー達成者は山田、柳田を含めて10名いる。2人同時達成となった1950年の岩本義行氏(松竹)、別当薫氏(毎日)が最初で、3人同時達成はもちろん過去に例がない。これまでの最高齢トリプルスリーは岩本氏の38歳。糸井が今季達成すれば、これに次ぐ高齢トリプルスリー記録となる。

「トリプルスリーに最も近い選手」と言われ続けた糸井

2004年のプロ入り後、投手から野手に転向した糸井がレギュラーを獲得したのは28歳の2009年。ここから球界に久々のトリプルスリー男が誕生する2015年まで、糸井は毎年のように「トリプルスリーに最も近い選手」として名前を挙げられてきた。

レギュラー獲得年に広い札幌ドームで15本塁打を放ち、そこから6年間シーズン打率3割以上を継続。シーズン30盗塁はレギュラー3年目に達成した。2014年は打率.331で首位打者、2016年は53盗塁で盗塁王を獲得。この2シーズンを含めて、打率3割&30盗塁以上は計4度達成している。

トリプルスリーへ足りなかったのは本塁打だ。球界最高峰、もしかすると日本人選手で一番パワーを備えている打者と言えるかもしれない糸井。完璧にとらえたときの打球は、とんでもないところまで飛んでいく。弾道が低くライナー性の打球が多いため「パワーヒッター」ではあるが、高い放物線の打球でフェンスオーバーさせる、いわゆる「アーチストタイプ」ではない。本数としては、首位打者を獲得したオリックス時代2014年の19本が最高だった。

しかし、今季はその本塁打もいまのところ悪くない数字だ。6月21日の62試合目で10本目に到達。シーズン換算では、糸井にとって未知のゾーンである20本オーバーとなり、キャリアハイのペースを残してきている。

金本知憲は37歳にしてキャリアハイ40本塁打を放った

糸井は阪神加入1年目の2017年シーズンも、30代後半にして長打力向上の兆しをみせていた。本数としては17本で、オリックス時代の2015、2016年と変わらない。だが、2017年の糸井は2度にわたる故障離脱で、レギュラー獲得後最も少ない114試合の出場にとどまっている。本塁打のペースとしては過去最高のシーズンであった。

加入一年目、しかもレフト方向へ向かって吹く強烈な浜風によりライトへの飛球が失速する「あの甲子園球場で」である。しかし、浜風を攻略しようとする打撃に意識し、よりパワーをつけようとトレーニングを積んだ結果が長打力アップにつながったのかもしれない。

トリプルスリーの先人であり、糸井と同じく30台半ばのFA宣言で広島から阪神へ移籍した金本知憲の例もある。通算476本塁打を放った金本の本塁打キャリアハイは、阪神移籍3年目となる2005年の40本。今季の糸井と同じく、37歳のシーズンであった。

2005年の金本は40本塁打に加え、打率.327、125打点と打撃三冠すべてでキャリアハイを記録し、セ・リーグMVPを獲得。30代後半で急激に衰えてくる選手も多い中、左の長距離砲が不利な甲子園で、三冠王を取ってもおかしくない成績を37歳にしてたたき出した。

「金本曲線」に乗って悲願のトリプルスリー達成なるか!?

金本は阪神に移籍してからあまり盗塁をしなくなったが、35歳で53盗塁した糸井は未だに走り続けており、今季も現在まで優に3割を超えている。トリプルスリーを目指す上で、通算で3割に乗る打率の安定感は糸井にとって大きな強みだ。

これまで再三トリプルスリー挑戦の意思を公言し、今季キャンプ前の自主トレはボディビルダーの日本王者に師事してもらい肉体改造を図り、30台後半を迎えても尚向上心が衰えない糸井。37歳の今季は金本曲線に乗ってアーチを量産し、長年の悲願達成となるのか。