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強打者の証「通算併殺打記録」現役トップはやはりあの選手?

2018 6/7 15:46青木スラッガー
新井貴浩,ⒸYoshihiro KOIKE
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ⒸYoshihiro KOIKE

併殺打の多さは「強打者の証」?

一瞬の間に2つのアウトを献上してしまう「併殺打(ダブルプレー)」。無死・一死で走者一塁のとき、守備側が理想とするプレーで、打者には「最悪」の結果だ。攻撃チームのファンにとって、最もフラストレーションがたまる瞬間かもしれない。

併殺打で選手を評価するとすれば、一般的な観点は「どれだけ少ないか」ということになるだろう。1492試合連続フルイニング出場の世界記録を持つ阪神・金本知憲監督が、プロ野球記録の1002打席連続無併殺打の方を、現役時代の実績で「一番胸を張れる記録」としていることは有名な話だ。

では、併殺が「どれだけ多いか」は選手にとって不名誉な称号になるだろうか。答えは否だ。併殺打の多さは、むしろ「強打者の証」といえるものである。

歴代トップは野村克也氏の378併殺打

以下が歴代の通算併殺打ランキング。名だたる強打者が並んでいるのである。

【歴代通算併殺打記録トップ10】
1位 378 野村克也
2位 267 衣笠祥雄
3位 266 大杉勝男
4位 257 長嶋茂雄
4位 257 中村紀洋
6位 238 新井貴浩
7位 236 落合博満
7位 236 谷繁元信
9位 235 土井正博
10位 230 山崎武司

1位は、右打者歴代最多の657本塁打を放った野村克也氏。現時点ではエンゼルス・プホルスが更新中のMLB記録(368個)を抑えて世界記録となっている。日本球界でも2位・衣笠祥雄氏との差は111個と圧倒的で、隠れたアンタッチャブルレコードといえるだろう。

通算504本塁打の衣笠氏以下も大杉勝男氏、長嶋茂雄氏、中村紀洋氏と通算400本塁打超えの長距離砲が続く。7位タイには3度の三冠王に輝き通算510本塁打を放った落合博満氏の名前もあり、9位・土井正博中日打撃コーチ、10位・山崎武司氏も通算400本塁打を超えている。

以上の選手を含めたトップ10人は、全員が右打者。左打者は11位タイで駒田徳広氏(229個)が初めて登場し、左打者で通算200併殺打以上を記録したのは駒田氏のみとなっている。

強打者に併殺打が多い理由

左打者に比べ、一塁到達まで時間がかかる右打者が上位を独占するのは当然の結果だろう。ただし、足の速さだけが併殺打の多さに関係するわけではなさそうだ。

通算併殺打4位タイの長嶋氏はシーズン30盗塁以上を2度記録しており、2位の衣笠氏は盗塁王獲得歴がある。衣笠氏が盗塁王を獲ったのは1976年で、このシーズンは自身2番目に多い19併殺打を記録していた。

併殺打記録に直結するのは、どちらかというと打撃スタイルである。まずは単純に「打球が速い」ということ。そのうえで、ヘルメットを飛ばす姿が印象だった長嶋氏のように、最後まで振り切るフルスイングで走り出しの遅い打者が、多くの併殺打を生んでいくのではないだろうか。

常にベンチから長打を期待され、走者一塁の場面で自由な打撃を許されることも条件だ。それだけ打撃を信頼される選手は自然と中軸を担う形になり、走者がいる場面で打席が回ってくる機会も増える。つまり右の強打者にとって併殺打は、「宿命」といえるものなのである。

現役は新井が200併殺打超え。独立リーグで奮闘するあの選手も……

現役選手では20年目の広島・新井貴浩がトップに位置しており、歴代6位につけている。ミスター超えまであと19個。新井からすれば、できるだけそこには近づきたくないだろうが、どれだけ記録を伸ばすのか注目だ。

新井以下、現役NPB選手の通算併殺打ランキングは以下のようになっている。

【通算併殺打記録トップ10(NPB現役選手)】
1位 238 新井貴浩(広島)
2位 185 阿部慎之助(巨人)
3位 181 内川聖一(ソフトバンク)
4位 164 福浦和也(ロッテ)
5位 158 今江年晶(楽天)
6位 155 中島宏之(オリックス)
6位 155 鳥谷敬(阪神)
8位 127 荒木雅博(中日)
9位 122 石原慶幸(広島)
10位 121 松田宣浩(ソフトバンク)

2位と3位には阿部慎之助、内川聖一が僅差で並ぶ。阿部は左打者では駒田氏に次いで歴代2位。ここから左打者歴代記録までどれだけ迫るだろうか。35歳の内川は年齢的に歴代トップ10入りの可能性もあるだろう。

また、独立リーグ・栃木ゴールデンブレーブスにプレーの場所を移した村田修一は、2017年シーズン終了まで通算208併殺打を記録し、現役NPB選手2位に位置していた。NPB復帰を目指し奮闘するかつての本塁打王。どこかの球団で、再び「強打者の証」を示す日が来ることを期待したい。