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元WBC戦士・大隣も。再起を図るトライアウト組の現在地

2018 5/6 09:00青木スラッガー
大隣憲司,WBC
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Ⓒゲッティイメージズ

今季の新天地が見つかったのはたった3名

2018年も開幕から何名かのルーキーが球界を盛り上げている。一方で、新たに足を踏み入れる者がいれば、去る者もいるのが競争激しいプロスポーツの世界だ。

プロ野球ではシーズン終了後、「12球団合同トライアウト」が毎年11月に開催される。現役続行を望む選手がシート打撃形式で対戦し、実力をアピールする場だ。球場バックネット裏には各球団の関係者が集結。戦力になる選手がいないか目を光らせる。

しかし、たくさんのトライアウト参加者の中から、NPB球団に新天地が見つかる選手は毎年ほんのわずかである。前球団を退団後、すぐに他からオファーを貰えた選手はトライアウトに参加する必要がないため、参加者は、当日までに良い知らせが届かなかった選手たちということになる。

2017年のトライアウト参加者は51名。この中で見事「合格」を勝ち取ったのは、田代将太郎(西武→ヤクルト)、山崎憲晴(DeNA→阪神)、大隣憲司(ソフトバンク→ロッテ)の3名のみであった。

俊足強肩の外野手・田代将太郎は西武からヤクルトへ

野手の田代と山崎は開幕早々に新天地デビューを果たしている。

7年目・28歳の田代は俊足と強肩が武器の外野手。昨季は自身初の開幕スタメンを勝ち取り、4月にプロ初本塁打を放つなどブレイクを予感させた。しかしその後は不振に陥り、最終的なシーズン打率は0割台。自身最多の38試合出場とチャンスは多かったが、一軍でポジションを確立しきれなかった。

トライアウトを経て、めでたくヤクルト入りが決まった後にも逆境が訪れた。キャンプイン直前、大リーグから青木宣親が電撃復帰。枠が自動的にひとつ埋まり、控え外野手争いが激化した。その中でも厳しい競争を勝ち抜き、開幕一軍をつかみ取った。

開幕後は代走・守備固めを中心に出場。4月8日巨人戦では移籍後初安打・打点を記録するなど、課題だった打撃でも存在感を示している。

元DeNA正遊撃手・山崎憲晴は大和と入れ替わりで阪神に

10年目・31歳の山崎は内野全ポジションを守れるユーティリティプレーヤー。こちらも俊足・強肩が武器で、高い身体能力を活かした守備力が売りだ。

DeNAでは中心選手として活躍した期間もあり、2013~2014年には続けて115試合に出場。2014年は遊撃手レギュラーを掴み、後に米・アストロズで世界一メンバーとなるグリエルと二遊間・三遊間コンビを組んだ。

入団8年目の2016年が転機だった。開幕前に左ひざ靭帯損傷の大けがを負い、シーズンの大半をリハビリに費やし、その間に若い新戦力が次々と台頭する。本格復帰した昨季は一軍昇格を果たせず、2年続けて一軍出場がないままチームを去ることとなった。

阪神移籍後はオープン戦で12打数7安打・打率5割超えと猛アピールに成功。開幕一軍を勝ち取った。阪神は鳥谷敬が遊撃手を退いて以降、内野各ポジションのレギュラーが流動的だ。名手の大和は山崎と入れ替わるかたちでDeNAに移った。山崎がレギュラー争いに割り込むチャンスは十分にありそうだ。

かつてのWBC戦士・大隣憲司も戦力外から再起を図る

12年目・33歳の大隣は、2017年トライアウト参加者の中で一番のビッグネームだった。2013年のWBC日本代表メンバーであり、その前年のシーズンで、12勝8敗・防御率2.03とエース級の成績をたたき出し、球界を代表する左腕に仲間入りした。

だが、WBC後のシーズン序盤に腰痛を発症し、国指定の難病「黄色靱帯骨化症」と診断される。翌年の復帰以降、腰の状態と向き合いながら、毎年勝ち星を挙げる奮闘を見せていたが、昨季はプロ入り以来初めての一軍未勝利。11年在籍したソフトバンクを戦力外となった。

大隣は厳密に言うと「トライアウト合格者」とは言えないかもしれない。ロッテ入団が決まったのは春季キャンプ期間中の2月半ば。テスト生としてキャンプに参加し、打撃投手や紅白戦でアピールに成功して入団にこぎつけた。

開幕は二軍スタートとなったが、ロッテ投手陣は左腕の頭数が決して豊富ではない。開幕ローテーションは全員右腕。二軍で結果を出せば、一軍で先発ローテーション入りの可能性もあるだろう。

過去にトライアウト受験から這い上がった選手といえば……

歴代のトライアウト合格者の中には、トライアウト受験から這い上がり、野球人生に有終の美を飾った選手もいる。最たる例は、ヤクルトを2016年に引退した内野手の森岡良介だろう。

プロ入りの中日は6年間・39試合の出場で戦力外となったが、トライアウトを経て入団したヤクルトでは8年間で518試合に出場した。2012年からは3年連続で100試合以上出場。2014年には選手会長を務め、2015年のリーグ優勝に貢献した。

田代・山崎・大隣も、森岡のように新天地で充実したプロ生活を送ることができるだろうか。「トライアウト受験組」として再スタートを切る3人のプレーに注目だ。