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開幕から打撃好調! 埼玉西武・外崎修汰の活躍の秘密に迫る

2018 4/25 16:54永田遼太郎
外崎修汰,ⒸYoshihiro KOIKE
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ⒸYoshihiro KOIKE

厳しい攻めにも対応し、好調をキープ

「自分がやって来たことは間違いじゃなかったです」

昨秋、侍JAPANのメンバーとして初召集を受けた埼玉西武・外崎修汰は、昨年の11月16日から19日までの4日間に渡って出場した「ENEOSアジアプロ野球チャンピオンシップ」について、そう振り返った。

彼が言う「自分がやって来たこと」とは、昨年のシーズン後半から、より強い意識で取り組むようになったセンターから右方向へのバッティングのことであり、2戦目の台湾戦で打った本塁打も、決勝の韓国戦で打った先制適時打も共にライトの頭上を越えたものだった。

「(侍JAPANで)やろうとしたことは、今までやって来たことをそのまま出すことでした。その意識で今回結果も出たので『それが間違っていなかった』という自信にもなりましたし、今後の方向性もしっかり定まった気がしました」

昨年、そして今年と結果を出すごとに、相手バッテリーの攻めはより厳しさを増していった。最近では甘い球が来ないどころかストライクゾーンに一球も来ない打席も増えている。それはある意味、プロの一流打者として認められた証とも言えるのだが、そうした相手バッテリーの配球に負けることなく、今季は4月24日時点で19試合、打率.319、本塁打2、打点14の成績。4月20日のメットライフドーム(対千葉ロッテ)では6回裏に同点に追い付く値千金のツーランを放つなど、その勢いはとどまるところを知らない。

追い込まれても喰らいつく

そんな外崎が昨シーズン後半からもう一つの課題として取り組んできたのが、カウントを追いこまれてから、いかに相手投手に食い下がるかだった。
外崎が言う。

「追い込まれてからの粘りが昨年のシーズン後半から出てきていますし、今年も今のところそれが出来ていると思います。追い込まれてから慌てなかったり、(打席で)精神的に追い込まれる場面も少なくなりましたし、そこは実感としてあります」

今季ここまで(4月24日現在)のカウント別打率を見てみると、初球打ちが10打数7安打で打率.700、1ボール0ストライクが6打数3安打で打率.500、0ボール1ストライクが5打数3安打で打率.600と、圧倒的に〝早打ち″の傾向が見られる。ファーストストライクから積極的に振っていくのは、1軍で結果を残すには必須だが、同時に初球から狙って振っていけるほど、調子も良くタイミングに関して不安を感じていないのが分かる。

その一方で、外崎が言うように追い込まれてからの打率もそれほど悪くない。0ボール2ストライクが3打数1安打で打率.333、1ボール2ストライクでも19打数4安打で打率.211、2ボール2ストライクこそ7打数0安打で打率.000だが、3ボール2ストライクのフルカウントでは6打数2安打で打率.333と、課題としていた追い込まれてからの喰らいつきがしっかり出来ているのが見て取れる。

ここまで四球数も8つ選んでおり、出塁率も悪くない。今季好調の理由もその辺りに出ているのだろう。

CSでは不振も、侍JAPANで大活躍!

昨年10月3日、メットライフドームで行われた東北楽天戦ではこんなこともあった。クライマックスシリーズファーストステージの前哨戦的意味合いが含まれていたこの試合。外崎は、それまでの対戦成績で13打数7安打2本塁打と得意にしていた東北楽天の先発・美馬学に3打数0安打と封じ込まれた。試合後、外崎に話を聞くと彼はこう振り返った。

「積極性が足りなかったかな…。もっともっと……うーん」

そう言うと、しばし考え込んだ。この日、彼はシーズン初の1番打者を任されていた。「それを意識し過ぎたのか?」と彼に質問を続けると、彼は首を振ってこう返してきた。

「1番だったからというよりも(自分が)ピッチャーに気持ちが向かっていなかったんだと思うんです。それを自分の中で1番打者だからとか、理由付けをしちゃっている自分もいるんですけど、もっと集中する部分だとか、自分の方向性を変えていくような何かにしないと、この先はいけないなと思います。なので今日は勉強になりましたね」

と、すぐに気持ちを切り替えた。

昨年のクライマックスシリーズファーストステージ、外崎はこの東北楽天に10打数1安打4三振と封じられ、シリーズ全体を通して振るわなかった。しかし、それから数週間後に召集された侍JAPANではこのときの不振が嘘のような大活躍。この切り替えの速さは今後の彼の強みになっていくだろう。外崎は当時を振り返ってこう言う。

「ああだ、こうだと考えても悪い方向にしかいかないので…。そういうときは一からというか基本に戻ることですね。その点でも右打ちを意識したというのはありました」

戻るべき軸を持っている人間は強い。それは野球に限らずどの世界においてもそうだ。

昨年の侍JAPAN召集で一皮も二皮も剥けた外崎修汰。2018年シーズンで好調なスタートを切ったのは必然だったのかもしれない。