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チームに好影響をもたらす存在に!阪神・谷川昌希に集まる期待

2018 3/30 18:00永田遼太郎
2016・2017年阪神先発投手陣の成績
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投手陣が充実

一軍で行われる公式戦年間143試合を戦うには最低8人の先発投手が必要と言われている。一週間のローテーションを守る6人はもちろんのこと、怪我や不振での入れ替え要員としてあと2人、贅沢をいえば一軍のみならずファームの先発陣もある程度、充実させられたら理想的である。

監督就任以降過去2年で積極的に若手を一軍で登用し、戦力を整えてきた金本知憲監督率いる阪神はどうだろうか?

2016・2017年阪神先発投手陣の成績

ⒸSPAIA(〇数字はセ・リーグ順位)


先発防御率は1年目の3.43(セ・リーグ3位)から2年目の3.66(セ・リーグ2位)と、0.23落ち込んだが、与四球率を表すBB/9は0.38減少してセ・リーグ3位に、奪三振率は0.33上昇してセ・リーグ1位をキープし、ここに来ての投手陣の充実ぶりが窺える。

メッセンジャー 秋山成績

ⒸSPAIA

在籍8年間で6度の二桁勝利を挙げているランディ・メッセンジャーと昨年12勝を挙げて一気に頭角を現した秋山拓巳の二枚看板の数字にも注目してみると、与四球率が低く、防御率にもそれが比例している。今年も彼ら二人を中心にローテーションが回っていきそうだ。

空振り率24.4% 飛躍が期待される小野泰己

入団3年以内で10試合以上に登板した投手

ⒸSPAIA

前述の二人の投手に続くのは今年復活をかける藤浪晋太郎と、昨年富士大学からドラフト2位で入団した2年目の小野泰己だ。開幕ローテーション入りも内定して、チーム浮沈のカギを握る二人である。

なかでも特に今年、飛躍を期待したいのが小野である。空振り率24.4%のフォークはリーグトップクラスの決め球であり、三振奪取時の6割を占めるストレートとのコンビネーションは今年も三振の山を築くだろう。昨年の奪三振率7.21を上回ると共に勝ち星を積み上げることも期待したい。

ここに2016年に2桁勝利を挙げた岩貞祐太、ベテラン左腕の能見篤史と岩田稔、高卒2年目で急成長を遂げている才木浩人、亜細亜大学から今年入団した新人左腕の高橋遥人、過去2年間共に4勝を挙げた青柳晃洋らの若手が加われば、前年度王者の広島を相手に互角以上の戦いが挑めるのではないかと予想する。

タフネスぶりをアピール 谷川昌希

そうした中、今後の起用法で気になる投手がひとりいる。今年、九州三菱自動車からドラフト5位で入団した谷川昌希だ。

今春の新人合同自主トレでは、自身のタフネスぶりを首脳陣にアピールして、〝12球団最強クインテット″桑原健太朗、マルコス・マテオ、ラファエル・ドリス、岩崎優、高橋聡文の仲間入りを宣言したが、昨年、プロ野球史上初となる5人の投手の60試合登板を達成した万全の布陣はそう簡単に割って入れない。

春季キャンプが終了し、オープン戦中盤になると、先発調整をするために一時ファーム行きを命じられた谷川。今後、どのような起用が待っているのだろうか。

マウンドでは鬼神と化す!味方を鼓舞するピッチングスタイル

社会人野球時代の昨秋、日本選手権九州地区予選で3完投を含む5連投で証明したタフネスはもちろん彼の売りのひとつである。さらに昨年6月に行われた都市対抗野球予選でも全6試合中5試合に登板して4完投するなど阪神首脳陣もそれらを高く評価している。

一方で球数を投げ込んで調子をあげていくピッチングスタイルは、ある意味で先発向きと言えなくもなく、起用法には迷いが出そうなタイプではある。

もうひとつ谷川の売りとなるのが制球力だ。スムーズな体重移動から繰り出されるボールは寸分の狂いもなくミットに収まり、試合での大崩れも少ない。先発時は球速145キロを割ることがほとんどだが、勝負所ではギアを一段も二段も上げて相手打者を圧倒する。そうした点も先発調整を命じられた一つの理由かもしれない。

気持ちが乗るとマウンドで大きく吠えるのも彼の特徴で、味方を鼓舞する働きもする。谷川は次のように語っている。

「(吠えるのは)自分を奮い立たせる意味もありますし、あとはチームが勢いに乗ってくれたらと思っています。結構、無意識に出ることもあるんですけど、それだけ気持ちが乗っている証拠なんだと思います」

マウンドで鬼神と化す姿とは対照的に、普段は社会人時代に自動車販売営業で培った笑顔と対人能力で取材に応じる気持ちの良い好青年である。その人柄に触れた人間に悪く言う者はおらず、礼儀礼節を重んじる姿は金本監督の目にも好意的に映るはずで、早期の活躍が期待される。

昨年5月のJABA九州大会で対戦し、社会人日本代表ではチームメイトとして戦った日本通運の捕手・木南了も「ボールにキレがあるし、球速以上に速く感じる真っ直ぐです。(昨年)対戦した右投手では一番」と、かつての好敵手にエールを贈る。

3月20日のウエスタンリーグ(対広島戦)では先発で6回5安打3失点。現時点での課題も残したが、試合中盤で修正して持ち味を発揮したのはさすがである。気持ちを前面に押し出した投球は試合の頭から入っても、途中から入ってもチームに良い影響を与えるのは間違いない。阪神自慢の投手陣にまた一枚頼もしい男が加わるのか、その活躍を楽しみに待ちたい。