ベンチ入り人数が少ない五輪では「ユーティリティープレーヤー」の存在が重要
野球選手には「投手」「捕手」「内野手」「外野手」という選手登録があるが、登録ポジションの枠を超え、複数のポジションで活躍するケースもある。「ユーティリティープレーヤー」と呼ばれる選手たちだ。
2018年シーズンの開幕を迎え、これからのプロ野球ではユーティリティープレーヤーが注目される機会が増えてくるだろう。五輪では、ベンチ入り人数がプロ野球公式戦(25人)やWBC(28人)よりも少ない24人に設定されるのが通例。限られた戦力で臨むため、複数ポジションを守れる選手が重宝されるのだ。
2004年のアテネ五輪では、当時広島の故・木村拓也氏(享年37)が控え野手として代表メンバーに抜擢された。木村氏は内外野すべてに加え、いざとなれば捕手も守れる「超」ユーティリティープレーヤー。彼をメンバーに選ぶことで、このときの代表チームは捕手をこれまでより1人少ない2人体制にし、投手の枠を1つ増やすことができた。
稲葉篤紀侍ジャパン常任監督も、東京五輪を見据えてユーティリティープレーヤーを求めているように映る。3月初旬に開催されたオーストラリアとの強化試合や、2017年11月のアジアCSでは野手メンバーの選出にその傾向が強く見られた。
外崎は猛アピール成功!他に近年ユーティリティー性を発揮している選手は……
前述2シリーズの選出メンバーで、近年「内・外野」両方での試合出場がある選手を挙げてみる。(数字は2017年シーズンのポジション別出場試合数)
- 外崎修汰(西武)
アジアCS・オーストラリア戦出場
(二)50試合/(三)27試合/(外)118試合
- 松本剛(日本ハム)
アジアCS・オーストラリア戦出場
(一)5試合/(外)105試合
- 中村奨吾(ロッテ)
アジアCS出場
(三)69試合/(遊)27試合
※2015年に外野手で17試合出場
- 大山悠輔(阪神)
オーストラリア戦出場
(一)47試合/(二)1試合/(三)10試合/(外)16試合
特に代表戦でインパクトを残したのは西武・外崎修汰(25)だ。ブレイクを果たした昨季は23盗塁を記録した、俊足が武器の若獅子。アジアCSでは3試合で6安打1ホームランを放ち、大会MVPを獲得した。代表戦で猛烈アピールしたのは打撃だが、優秀な代走要員にもなれるという点で、ユーティリティー枠にはうってつけの選手である。
阪神・大山悠輔(23)、日本ハム・松本剛(24)、ロッテ・中村奨吾(25)も、それぞれ所属チームで次世代の中心選手として将来が渇望される若手有望株だ。今後はチーム内でレギュラー定着とともに、ユーティリティー性を活かして東京五輪の代表入りも期待される。
稲葉ジャパン選出外で、近年外野と内野の複数ポジションで試合に出ている主な選手は、日本ハム・杉谷拳士(27)、DeNA・大和(30)、ヤクルト・荒木貴裕(30)、阪神・西岡剛(33)、ソフトバンク・明石健志(32)、川島慶三(34)など。中堅からベテラン世代が充実している印象だ。
捕手と内外野が守れる近藤・藤井には「ポスト・キムタク」も期待?
ここまで名前を挙げたのは、内野と外野で複数ポジションを守ることができる選手だ。では、今の球界に木村氏のような、捕手までこなせてしまう「超ユーティリティープレーヤー」はいるだろうか。
アジアCSでメンバー入りした日本ハム・近藤健介(24)は、捕手登録ながら内外野で試合出場経験がある。2016年以降ほとんど外野手と指名打者での出場だったが、今季は捕手に復帰。
ただ、腰痛が捕手休業の一因であり、まだ体が万全とはいかない。「打てる捕手」となれるか、これからの行方を見守りたい。
捕手経験があり、現在進行形で内外野を守る選手という条件では、ヤクルト・藤井亮太(29)が当てはまる。藤井は2014年にプロ入りし、2年目までに一軍マスク3試合を経験した「元捕手」(今季から内野手登録に変更)。
2年目からは捕手より外野での出場が多くなり、4年目の2017年シーズンは三塁で90試合に出場した。俊足・強肩を武器に現在売り出し中の29歳である。
木村氏ほど完璧なオールラウンダーには達していないが、捕手と内外野を守れる選手も複数いる。ベンチ入り人数が少ない五輪の戦いを念頭に、彼らユーティリティープレーヤーの活躍ぶりに注目していきたい。
(※年齢は2018年3月現在)