ドラフトでは素材型の吉住を1位指名
このオフにソフトバンクは目立った補強を行わなかった。FA選手・新外国人選手の獲得を行わず、現有戦力にドラフトでの指名選手を加えて2018年シーズンに臨む方針だ。
ドラフトでは清宮幸太郎(早稲田実業→日本ハム)、安田尚憲(履正社高→ロッテ)、馬場皐輔(仙台大→阪神)と3選手の抽選を外してしまう。その結果、1位で指名したのは吉住晴斗(鶴岡東高)だった。
吉住は高卒かつ素材型の評価が強く、1年目から一軍での活躍を期待されての指名ではないはずだ。数年間かけて二軍・三軍で育成されることとなるだろう。
2位で指名したのは高橋礼(専修大)だ。球界で数少なくなったアンダースローの高橋。前身球団である南海のレジェンドである杉浦忠、皆川睦雄らに続きたいところだ。
現役ナンバーワンのアンダースローとも言える牧田和久(西武→パドレス)がMLB移籍を果たしたが、その血脈を絶やさない活躍に期待したい。
一方で球団から去った選手もいる。大きな注目となったのが松坂大輔(ソフトバンク→中日)だ。2015年から3年間在籍したものの一軍での登板はわずか1試合のみ。
球団は、コーチを兼任しながらの育成契約を打診したものの、支配下にこだわり退団となった。
また、左腕の大隣憲司も自由契約。2013年に発症した黄色靭帯骨化症から復帰したものの、2016年、2017年ともに1試合ずつの登板に終わり、近年は結果を残すことができなかった。
野手では、鶴岡慎也がFA権を行使して古巣の日本ハムへと移籍した。
しかし、甲斐拓也ら若手が台頭しており、大きな不安はない。栗原陵矢、九鬼隆平と甲斐より下の世代も育ってきているのがさらに心強い。
1月28日時点でドラフトを除いた補強はないものの、育成契約選手を含めて三軍まであるソフトバンクは、既存戦力の育成で連覇を目指す。
盤石の投手陣を勝ち取るのは?
投手陣は東浜巨、千賀滉大、バンデンハーク、武田翔太、和田毅と実績あるベテラン、若手、外国人選手と豊富に揃っている。6番手も石川柊太、松本裕樹といった若手有望株、ベテランの中田賢一と競争が激しい。
また2016年ドラフト1位の田中正義、復活を期す攝津正らも控えている。『長いシーズンを乗り切るために、先発投手は何人いてもいい』と言われることも多いが、まさにそのとおり豊富な先発投手陣を揃えている。
中継ぎ投手陣をみてみよう。名球会入りを目指すサファテ、最優秀中継ぎ投手のタイトルを獲得した岩嵜翔らが試合終盤を締めることになりそうだ。
そこにつなぐ投手陣も五十嵐亮太、森唯斗、嘉弥真新也、モイネロと右左の戦力が揃っており、盤石の体制と言えるだろう。
シーズンを戦う上で怖いのは主力選手の故障だが、2018年のソフトバンクは『万が一』が起こってもその他の選手たちでリカバリーのできる戦力だ。目立った補強がなくとも、盤石の投手陣で新シーズンを迎えることになる。
二塁手の固定が鍵となる
打線にも大きな変更はない。主砲のデスパイネ、柳田悠岐に加え、シーズン途中にケガで離脱した内川聖一も万全の状態で、残り25本となった2000本安打を通過点として、1年間戦うつもりだ。
両翼は中村晃、上林誠知らが揃う。そこに若手有望株の真砂勇介らが挑んでいく格好だ。
また松田宣浩、今宮健太の三遊間は、攻撃面だけでなく守備面でも心強い。2013年から5年連続でゴールデングラブ賞を揃って受賞しており、2018年は6年目のダブル受賞を目指すことになる。
捕手は育成から這い上がり、アジアプロ野球チャンピオンシップで日本代表に選出された甲斐拓也と高谷裕亮が併用されるだろう。ベテランの鶴岡慎也がFA権行使で移籍して、空席となった第3捕手の座は栗原陵矢、九鬼隆平ら若手で争うことになる。
盤石な野手陣ではあるが、二塁の確固たるレギュラーは不在となっている。2017年シーズンも本多雄一(57試合)、高田知季(49試合)、川﨑宗則(37試合)、川島慶三(37試合)、明石健志(36試合)と100試合以上二塁守備についた選手はおらず、固定できていない。
これらの選手が春季キャンプ・オープン戦でアピール合戦を繰り広げることになるだろう。工藤公康監督が誰を選ぶのか注目したい。
このように万全の体制を敷くソフトバンク。2017年も内川、デスパイネらが離脱したものの、持ち前の選手層の厚さで楽天を振り切った。
同じような横綱相撲を2018年も見せたいところだ。 2015年に日本一となり、連覇を目論んだ2016年は最大11.5ゲーム差を日本ハムにひっくり返され、大逆転優勝を許してしまった。その再現とならないよう、2018年シーズンは開幕から気を抜かずに連覇を目指す。