NPB通算156勝を誇る男、石川雅規
※文章、表中の数字はすべて2017年シーズン終了時点
2017年、現役最多のNPB通算156勝を誇るヤクルト・石川雅規は苦渋を味わった。リーグ史上最年長で開幕戦白星を挙げる好スタートを切ったものの、5月24日の広島戦から11連敗を記録。
4勝14敗、防御率5.11と、あらかたキャリアワーストの成績でシーズンを終えた。
不振の一因としては、右打者に打ち込まれたことが挙げられるだろう。左腕の石川はもともと右打者を苦手にしていたが、とりわけ2017年は被打率が3割を超え、被本塁打も16本を記録。
打者との対戦がトータルで540打席あったうち、365打席を右打者が占めていたことからも、この点が成績に与えた影響は大きいといえる。
対右打者に焦点を絞り、さらに分析を進めていこう。まず注目したいのが、打球を方向別に区分した際の被打率だ。2017年は、レフト方向の数字が著しく悪化していたことが分かる。
さらに、右打者に許した16本塁打のうち、実に14本がレフト方向へのアーチだった。なぜ、右打者に引っ張られた当たりが、こうも悪い結果につながったのだろうか。
その答えになりそうなのが、打球の性質だ。過去2年に比べると、2017年は右打者にレフト方向へ運ばれた打球に占めるゴロの割合が減少し、外野フライが大幅に増加していたのである。
一般的に、外野フライはゴロに比べて安打になる確率が高く、それが長打となればなおさらだ。詰まらせて、あるいは引っかけさせてゴロに打ち取る投球ができなかったことが、被打率という数字にも表れたといえる。
さらに、本拠地・神宮ではその傾向がより顕著になっていた。神宮は本塁打が出やすいことで知られる球場だが、石川はそこで一発長打のリスクを伴う打球を多く浴びていたのである。
結果として、2017年は神宮で右打者に13本塁打を許し、被打率も.383を記録。これが大きく影を落とし、防御率は7.16と散々な成績だった。
シーズン14敗目を喫した9月12日の試合後、当時の真中監督は「さらにワンランク上を目指さないと、来年も打破できない」と石川に奮起を促した。ストレートの平均球速が2年連続でアップするなど、肉体の衰えは感じさせないだけに、多彩な変化球の精度や組み立てを見つめ直す時期に来ているのかもしれない。
最下位に沈んだチームを浮上させるためにも、ベテラン左腕にはさらなる進化が求められている。
企画、監修:データスタジアム、執筆者:中川 拓樹
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