打球方向に表れる強打者の傾向
高卒でのプロ入りを表明し、大きな注目を集めている清宮幸太郎(早実)。高校日本代表として出場した第28回WBSC U-18ワールドカップ二次リーグのカナダ戦で、高校通算本塁打を111本に更新した。これは高校生としての歴代最多記録だ。
清宮は1999年5月25日生まれの東京都出身。身長184cm、体重101kgという、アスリートとして恵まれた体格は、元ラグビー選手である父・清宮克幸ゆずりだ。
小学3年生の時に野球を始め、リトルリーグに所属。13歳の時には世界選手権に出場し、3本塁打を決めて優勝した。中学3年のシニア時代には全国優勝も経験している。
2015年に早稲田実業高等部に入学するとすぐにスタメンとして抜擢される。夏の甲子園では本塁打を2本記録した。2015年には1年生ながらWBSC U-18ワールドカップ日本代表に選出されている。
将来は王貞治氏の本塁打記録である868本を目指すと意気込む清宮の全本塁打方向データをグラフィックにしてみた。
まず、左打ちの打者であるだけに、ライト方向の打球が多くなっていることがよくわかる。高校通算111本中、ライト方向は69本で割合は62.16%となっている。これは、強打者の傾向でもある。一般的に、早いタイミングで打ちに行く“引っ張り”は引きつけて打つ“流し打ち”よりも強い打球となり、飛距離が出ることでスタンドに届く確率が高くなる。
その一方で、投げ込まれた球を早いタイミングで打ちに行くため、変化球やコースへの対応がしにくくなるため、時間をかけて対応できる流し打ちに比べて三振や凡打、ポップフライになる確率も高くなる。
プロで求められる流し打ちの技術。清宮が3年間で築いた下地
プロの世界でも引っ張り中心の打撃で結果を残している選手は存在するが、やはり確実性を上げるためには流し打ちの技術が求められる。
例えば、ソフトバンクの柳田悠岐やDeNAの筒香嘉智は逆方向にも本塁打を打てる技術があるため、打率も本塁打をリーグ上位に位置する強打者となった。
では、清宮はどのようなタイプとなるのだろうか? 年度別の打球方向を見ると、ある傾向が見えてくる。
まず、1年生だった2015年の打球方向を見ると、全22本中ライト方向に20本、センター方向に0本、レフト方向に2本、割合として9%となっている。この頃は本塁打を放つために引っ張りを意識した打法だったいえる。
次に2年生となる2016年を見ると、本塁打の数が56本と大きく増加している。さらにレフト方向への打球は1本ながら、センター方向に8本、ライト方向には47本、割合は1.78%と極端に右寄りの打球傾向となっている。
これは、高校2年目により本塁打を量産するために引っ張りの意識を高めたためだろう。
そして、3年生となった2017年は過去2年間とは異なる傾向が出ている。本塁打の打球方向を見ると、全33本中ライト方向に23本、センター方向に6本、レフト方向には4本を放っている。割合にすると12.12%と大幅に上昇しており、2015年4月から2016年12月の21ヶ月間で記録した3本というレフト方向への数を2017年1月から9月の9ヶ月間で超えている。
清宮は、将来を見据えて「逆方向にも強い打球を打つ」という意識を高め、それを実現させる技術を習得したといえる。まだプロの試合に出場したわけではないので未知数な部分は多いものの、高校の3年間で着実に下地はできている。
12球団の一塁手の顔ぶれは?
とはいえ、清宮のポジションとなるであろう一塁手は各球団とも助っ人外国人選手など強打者を据えるため、定位置を獲得するためのハードルは高い。
では、現在の12球団の一塁手はどのような面々となっているのだろうか。2017年シーズン(10月3日時点)の各球団の一塁手の成績をグラフィックにした。
最高の成績を残したのはDeNAのロペスで.305、30本、105打点だった。また、このグラフィックにはないが、西武の山川は78試合の出場で.298、23本、61打点という成績を残している。
一方で、すでに1位指名を明言している阪神は一塁手のレギュラーが固定できず、ヤクルトのリベロ、ロッテのパラデスは退団の可能性が高い。さらに、日本ハムは中田翔がFA移籍の可能性が報じられている。
もちろん、各球団とも外国人選手のスカウティングを進めているはずだが、一塁の選手層の薄い球団に入団することができれば、1軍デビューの日が近づくかもしれない。