賛否両論のカット打法とは?
「カット打法」とは、投球を軽くバットに当て、あえてファールにする打法の総称だ。打者は自身の得意ではないコースに来た球をカットしてファールを打ち続け、相手投手の失投を待つのが目的となる。また、投手は投球をカットされることにより投球数が増え、根負けして四球を出してしまうこともある。
この「カット打法」は、比較的パワーのないアベレージタイプの打者が行うことが多く、時には批判されることもあるが、立派な戦術の1つだ。
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相手投手に球数を多く投げさせて失投や四球を狙うカット打法。 プロ野球の世界でも多く見受けられ、くせ者と呼ばれそうな選手たちが多く使っている。 今回はそんなカット打法について紹介する。
「カット打法」とは、投球を軽くバットに当て、あえてファールにする打法の総称だ。打者は自身の得意ではないコースに来た球をカットしてファールを打ち続け、相手投手の失投を待つのが目的となる。また、投手は投球をカットされることにより投球数が増え、根負けして四球を出してしまうこともある。
この「カット打法」は、比較的パワーのないアベレージタイプの打者が行うことが多く、時には批判されることもあるが、立派な戦術の1つだ。
現役プロ野球選手で「カット打法」といえば北海道日本ハムファイターズの中島卓也選手だろう。中島選手は2008年ドラフト5位で日本ハムへ入団した当初から守備の名手として評価されていた。2012年シーズンから一軍での出場が増え、2014年シーズンにレギュラーを奪取。2015年シーズンには盗塁王、2016年シーズンには最多犠打など脇役としての活躍を誇る。
その中島選手の持ち味は、相手投手が嫌がるカット打法となっており、2016年シーズンは両リーグでダントツのトップとなる759個のファールを放った。2位は520個の角中勝也選手(ロッテ)、倉本寿彦選手(DeNA)で、239個もの差をつけているのだ。このカット打法で相手投手は消耗し、根負けする場面も見受けられる。
2015年シーズンに14年ぶりのセリーグ制覇を決めた東京ヤクルトスワローズ。トリプルスリーを達成した山田哲人選手とともに打線を引っ張ったのが、攻撃的な2番打者として首位打者を獲得した川端慎吾選手だ。
このシーズン、川端選手は2ストライク後の打率がリーグトップとなる.270をマーク。2ストライクからでも「ワクワクする」と語る川端選手は、「カット打法に磨きをかければもっと打率は上がる」とも語っており、今後も技術の向上に期待がかかる。
2015年シーズンに読売ジャイアンツで現役を引退した井端弘和選手も、カット打法で粘る打撃を持ち味として相手投手を苦しんだ。
中日ドラゴンズ時代から、追い込まれるときわどい球をカットしてファールとする粘り強い井端選手のスタイルは、巨人に移籍後も変わらなかった。まさに「いぶし銀」と呼ぶのにふさわしく、相手投手を嫌がらせるくせ者としてチームに貢献していた。
現在は巨人の一軍内野守備走塁コーチとして活躍している。
2013年夏の甲子園に出場した花巻東高校(岩手県)の千葉翔太選手は、カット打法で一躍時の人となった。初戦から準々決勝まで出塁率8割を誇り、打率.700(10打数7安打)の成績でチームを牽引。その秘密は「カット打法」にあったのだ。
バントのような構えから投球と同時にバットを引き、バスター気味にスイングを行いファールを打ち続けた千葉選手。準々決勝後には審判団から「意図的なカット打法はバントとみなすことがある」と注意を受け、翌準決勝ではカット打法を封印。チームも敗退する。
甲子園のルールにも影響を及ぼした千葉選手のカット打法は、未だに議論となるほどのインパクトを与えた。
カット打法は本塁打を狙う打者が行うような打撃ではない。 しかし、パワーヒッターでなくとも塁に出るための1つの立派な戦法として成り立っている。 意図的にファールを打つカット打法に注目すると、よりいっそう野球の見方が広がる。