「塁打」ってなに?
本塁打、安打、打点などと違い、タイトルがあるわけではない「塁打」。本塁打、二塁打といった単語の中に含まれているが、どのようなものなのかをまず説明したい。
塁打とは単打×1+二塁打×2+三塁打×3+本塁打×4で求められる打撃記録の一つだ。「塁打」と言う単語だけで使われることは少ない。
また、塁打を打数で割った数字が長打率となる。これは1打数で獲得することのできる期待値である。打率とは違い長打率は1を超えることがあり、1を超えると毎打数でホームに帰ってくる期待があると言うことになる。
「塁打」と言う単語が使われるのは長打率の計算が多くなる。
通算最多塁打はやはり王選手
プロ野球において通算塁打数は王貞治選手(元巨人)の5862塁打だ。9250打数で記録されており長打率.634となる。2位は野村克也選手(元西武他)の5315塁打(長打率.508)。続いて張本勲選手(元巨人他)の5161塁打(長打率.534)となっている。打撃タイトルではないこともあり、あまり知られていない記録の一つではあるが、やはり王選手が別格の数字だ。
その他の選手を見ても、本塁打を多く放つことのできる長打力のある選手が上位に名を連ねている。張本選手は日本記録の3085安打を記録しコンタクトヒッターのイメージも強いが、キャリアハイは34本塁打。通算でも504本塁打を放っている。
以下、門田博光選手(元ダイエー他)の4688塁打、金本知憲選手(元阪神他)の4481塁打、衣笠祥雄選手(元広島)の4474塁打と長きにわたって、現役として活躍した選手達が上位に顔を出す。これは打率と違い、積み上げ型の記録ということが影響を与えている。
現役選手を見渡してみると2016年終了時点で新井貴浩選手(広島)が3437塁打、阿部慎之助選手(巨人)が3382塁打とベテラン選手が上位をうかがっている。両選手ともに王選手の5862塁打まで2000塁打以上の数字が必要となり、トップまで上り詰めることは難しそうだ。
日米通算記録を見るとイチロー選手(マーリンズ)が5809塁打(日本:1889塁打、アメリカ:3920塁打)となっており、2017年シーズン中に王選手の記録(5862塁打)を更新する可能性がある。また、松井秀喜選手(元レイズ他)は日米通算で4714塁打(日本:2663塁打、アメリカ:2051塁打)となっており、門田選手に次ぐ歴代4位相当(イチロー選手除く)となっている。
シーズン最多記録は小鶴選手
1シーズンでの最多塁打記録は半世紀以上も破られていない。その記録は、1950年に小鶴誠選手(松竹※現在は消滅球団)が達成した376塁打だ。この年の小鶴選手は打率.355(516打数183安打)、51本塁打、161打点で最多本塁打、最多打点のタイトルを獲得。MVPも受賞し松竹の優勝に大きく貢献した。また、161打点も日本記録となっている。
小鶴選手の183安打を細分化すると単打:98本、二塁打:28本、三塁打:6本、本塁打:51本となり合計376塁打となっている。小鶴選手は130試合で達成していることも驚きだ。
2位は小鶴選手の前年(1949年)に「ミスタータイガース」こと藤村富美男選手(阪神)が達成した366塁打。藤村選手はわずか1年のみの記録となってしまった。近年ではタフィ・ローズ選手が2001年に364塁打、松井稼頭央選手が2002年に359塁打を達成している。
2013年に日本記録の60本塁打を達成したバレンティン選手(ヤクルト)は、342塁打で歴代13位タイ。本塁打が多いだけでは、塁打数が伸びないということがわかる結果になっている。王選手は1964年の340塁打がキャリア最多となっており、歴代18位だ。シーズン記録で王選手は意外にもトップ10に入っていない。
【シーズン最多記録】
1:(376/1950年)小鶴誠選手(松竹)
2:(366/1949年)藤村富美男選手(阪神)
3:(364/2001年)タフィー・ローズ選手(近鉄)
4:(359/2002年)松井稼頭央選手(西武)
5:(357/1985年)ランディー・バース選手(阪神)
6:(355/1950年)藤村富美男選手(阪神)
7:(352/1986年)ランディー・バース選手(阪神)
8:(351/1985年)落合博満選手(ロッテ)
9:(349/2013年)アレックス・ラミレス選手(ヤクルト)
10:(347/2010年)アレックス・ラミレス選手(巨人)
意外にも伸びない王貞治選手
塁打は本塁打が多いと数字は伸びやすい。従って、868本塁打を放っている王選手は歴代でも5862塁打を記録しておりそれを証明している。しかし、四球が多いと塁打数としての数字が伸びにくくなるため、王選手の1シーズンあたりの数字を見ると意外に伸びていない。
四球が多いと安打数は減るために塁打数の数字は伸びにくくなるのだ。2013年のバレンティン選手も同様だ。103個の四球(9敬遠)があるために機会を損失してしまっている。
王選手は四球が多い中で安定して高い数字を毎年残していたからこそ、歴代トップの記録を保持していると言えるだろう。
小鶴選手の376塁打を更新するためには本塁打が多いのはもちろん、二塁打、三塁打を量産できる脚力が必要となりそうだ。また、自身と勝負してもらえるために、他の選手の力量も重要となってくる。
今後、60年以上も不滅の記録を更新する選手は現れるだろうか。
メジャーリーグで6000塁打を超えているのは3名!
メジャーリーグに目を向けるとハンク・アーロン選手(元ブレーブス他)が6856塁打で歴代1位となっている。以降はスタン・ミュージアル選手(元カージナルス)の6134塁打、ウィリー・メイズ選手(元メッツ他)が6066塁打で続いており6000塁打を超えているのは3名のみだ。
現役選手ではアルバート・プホルス選手(エンゼルス)が2016年終了時点で5232塁打を記録しており、史上4人目の6000塁打達成に期待が掛かる。
また、シーズン記録としてはベーブ・ルース選手(ヤンキース他)が、1921年にマークした457塁打が100年近くに渡りトップに君臨。近年では2001年にサミー・ソーサ選手(カブス)が達成した425塁打となっている。
塁打記録は取り上げられることが少なく、あまり話題にならない。だが、こういった記録を追いかけることで野球がおもしろくなるのだ。この機会に、塁打に注目してみてはどうだろうか。野球の新たな楽しみ方が見つかるかもしれない。