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すでに完成されたピッチングスタイル!巨人・田口麗斗のすごさとは

2017 8/3 12:07Mimu
野球ボール,グローブ
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今や巨人のローテーションの中心となった田口麗斗選手

かつて、背番号90をつけた選手がこれほどの存在感を放ったことがあっただろうか。読売ジャイアンツの田口麗斗選手は、1995年生まれの若手選手ながら成績の方はすでにエース級。
2016年シーズンにチーム唯一の2桁勝利を挙げると、2017年シーズンも5月終了時点で4勝1敗、セリーグトップの防御率1.73をマークしていた。5月21日のDeNAベイスターズ戦では、無四球完封勝利も記録。いまや巨人のローテーションは彼なしでは回らないほどだ。
ストレートは平均130km/hそこそこ、ビックリするほど速いわけではない。しかし、ゆったりとしたフォームながら腕の振りは鋭く、非常にタイミングが取りづらいフォームをしている。
加えてキレのある変化球と、それを内外に投げ分けるにコントロール。頭を使った投球術で、相手バッターを翻弄してきた。今回はこの田口選手に注目して、そのすごさを紹介していこう。

高校時代からキレのあるスライダーが武器!コントロールも抜群

田口選手のピッチングを語るうえで、やはり「スライダー」の話は欠かせない。高校時代から田口選手の大きな武器であり、とにかく縦に大きく落ちるのが特徴だ。
リリース直後はまるでストレートのように真っ直ぐと進んでいくが、打者の手元に来ると急にストンと落ちる。このキレのあるスライダーとストレート、加えて緩急をつけるためのチェンジアップもある。この3球種だけでも、打者からすればかなり厄介だろう。
そして、これらの球をきっちりとコースに決めることができるコントロールも素晴らしい。特にスライダーに関しては、右打者に対して内に食い込んでくるようなスライダーと、外のボールゾーンからストライクゾーンへと入ってくるスライダー、どちらもかなりの精度で投げ分けることができる。
田口選手は左右のコントロールを間違えることはほとんどない。ボールのキレと内外の出し入れ、これが田口選手のピッチングスタイルだ。

デビュー当時から完成していたピッチングスタイル

そのスタイルはデビュー戦の時からずっと一貫されている。田口選手のデビュー戦は、まだ19歳だった2年目の4月のこと。当時は大竹寛選手が不調で2軍へ降格したため、変わって田口選手が1軍に昇格。そして4月11日、プロ初先発のマウンドへと登った。
この時、田口選手の見せた投球は、とても高卒2年目のそれとは思えないほどのものだった。2回に田中浩康選手(現DeNAベイスターズ)に先制タイムリーを許してしまったものの、その後はストレート・スライダーをきっちりコースに決め7回を1失点に。
最高球速は141km/hと控えめ、奪三振も5つほどであったが、球のキレと内・外の出し入れで1軍の打者を次々に手玉に取っていった。当時から確立されていたこのスタイルは、おそらく自分の持ち味をきちんと理解してのことだろう。本当にクレバーな投手だ。
ちなみにこの試合は、4回に8番・實松一成選手のタイムリーで同点に追いつくと、続く9番・田口選手のボテボテのサードゴロがタイムリー内野安打となり、2-1と逆転に成功。試合はそのまま2-1で巨人の勝利となり、田口選手のプロ初勝利は、自身のプロ初ヒット初タイムリーが決勝点となる神がかり的な展開で舞い込んできた。

ストレートを速く見せる投球フォームも大きな武器

また、田口選手のフォームにも注目だ。田口選手のフォームは全体的にゆったりとしていながら、腕の振りが速いために非常にタイミングが取りづらい。さらに、田口選手は腕の使い方も上手い。腕をまるでムチのようにしならせるため、打者からすればギリギリまで腕が体から出てこず、球速表示以上にストレートが速く見えていることだろう。
球種によってフォームや腕の振りが変わることもなく、ストレート・スライダー・チェンジアップをすべて同じフォームから投げ分けることができる。手元に来るまでどの球かわからず、頭で分かってからバットを出しても芯でとらえることは難しいだろう。球種はそれほど多くなく、球速も速くはないが、こういった投球術に長けているのが田口選手の特徴だ。

左打者への攻め方が課題

もちろん課題はある。左打者へ有効な球が少ないということだ。左打者に対して外に逃げるスライダーは有効なのだが、反対にインコースのスライダーは非常に危険な球になる。
ストライクゾーンから真ん中へとボールが変化していくため、捉えられると一気に長打になってしまうのだ。チェンジアップも左打者の内へ少し食い込んでいくように変化するため、やはり捉えられやすい。
実際に2016年シーズンで田口選手と相性が良かったのは左打者だ。田口選手からもっとも多くヒットを放ったのは、カープの田中広輔選手で11本(26打数11安打 打率.423)、次いで多いのが阪神の福留孝介選手で7本(15打数7安打 打率.467)と、やはり左打者である。左に対しての攻め方にさらに幅が出てくれば、さらに手の付けられない投手になることだろう。

高校時代のライバルがオリックスへと入団!

また2017年シーズン、田口選手にはよりいっそう奮起する材料が2つある。1つめは自身の結婚(1月に高校時代の先輩だった女性との結婚を発表)、2つめは高校時代のライバル選手のプロ入りだ。
その選手とは、オリックスバファローズの山岡泰輔選手である。最速152km/hを誇る本格派右腕で、社会人No.1投手の評価を経て、2016年のドラフト1位で入団してきた。
実はこの2人、高校3年生だった2013年の夏の広島県大会決勝で投げ合っている。田口選手は広島新庄高校の、山岡選手は広島県瀬戸内高校のエースとして、勝った方が甲子園という中で行われた試合だ。
試合は投手戦となり、田口選手・山岡選手ともに相手に得点を許さず、延長15回が終わっても0-0のまま引き分け再試合となった。田口選手は13安打5四球ながら19奪三振を記録。
序盤から制球に苦しみ、毎回のようにランナーを背負うも、要所ではしっかりと三振を取り、何とか切り抜けていった。特に13回には先頭スリーベースを打たれて絶体絶命のピンチにもなったが、後続を敬遠して満塁とすると、そこからショートゴロ・三振・三振と完ぺきに抑えている。

かつてのライバルと共にNPBを盛り上げてくれることに期待

だが山岡選手が見せたピッチングは、それ以上に完璧な内容であった。15奪三振と三振数こそ田口選手よりも少ないものの、許したヒットはたった1安打。ピンチらしいピンチはほとんどなく、広島新庄打線をねじ伏せた。
2日後に行われた再試合でも、山岡選手は9回を5安打6奪三振で無失点という完璧なピッチングを見せる。これは24イニング0封となった。一方の田口選手も7回までを無失点に抑えるも、8回に2死2塁からタイムリーヒットを許してしまい1失点。これ以外の失点は許さず、23回1失点という内容であったが、結局これが決勝点となって0-1で敗戦。瀬戸内高校が甲子園に進出した。
そんな死闘を繰り広げた山岡選手がいよいよプロ入りしてきたのだ。田口選手にとっても刺激にならないわけがないだろう。東京と大阪、セリーグとパリーグという違いこそあるものの、2人とも今後の野球界を盛り上げてくれるはずだ。