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いまだ健在の火の玉ストレート!藤川球児のストレートの秘密とは

2017 6/28 09:44Mimu
野球 つかみ
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4シーズンぶりの古巣で復活した藤川球児

2016年は4シーズンぶりに阪神タイガースへと復帰した藤川球児選手。開幕当初は先発で5試合に登板するも1勝2敗 防御率6.12となかなか結果が出なかったが、リリーフに回ってからは38試合に登板して4勝4敗3セーブ10ホールド 防御率3.58と復活を果たした。
特に37回2/3で46個の三振を奪い、まだまだ火の玉ストレートが健在であるというところをアピールする。以前のように150km/hを越える剛速球をバンバン投げるというシーンは少なくなったが、それでも打者のバットは空を切り続けた。
2016年の全投球のうち、ストレートの割合が68%というのは、NPBの全投手の中でも最高の数値だ。シーズン通算で奪った70個の三振のうち、約6割の43個はストレートで奪っている。このストレートの秘密はいったい何なのだろうか。今回は藤川選手の今までを振り返るとともに、その秘密に迫っていく。

2004年までは全く芽が出ず

藤川選手は、実は5年目までは全く結果の出ない選手だった。松坂世代と呼ばれる1980年生まれで、98年のドラフト1位で阪神タイガースへと入団。非常に期待された存在であったのだが、なかなか1軍では結果がでず、5年目の2003年終了時までの通算勝利数は2つ(登板数は48試合、うち先発は14度)。戦力外通告の筆頭候補であったともいわれていた。
しかし、2004年から中継ぎに転向すると、フォーム改造の効果もあってか次々と三振を量産。31イニングで35個の三振を奪い、シーズン後半にはセットアッパーとして定着した。

JFKの一角を担いチームの優勝に貢献

2005年からは、大幅に成績を向上させていく。ジェフ・ウィリアムス氏、久保田智之氏とともにJFKの1角を担い、2年ぶりの優勝に貢献。当時のNPB新記録となる80試合に登板して、7勝1敗1セーブ46ホールド 防御率は1.36。最優秀中継ぎ投手のタイトルを獲得した。だが、特筆すべきはやはり奪三振の数だろう。93回1/3を投げて、139個もの三振を奪ったのだ。これはセリーグ7位の数字であり、先発投手と遜色ない数字をたたき出した。
続く2006年にも63試合の登板で5勝0敗17セーブ30ホールド 防御率0.68という圧倒的な成績を残し、2年連続の最優秀中継ぎ投手賞を獲得。オールスターでアレックス・カブレラ氏、小笠原道大氏(現中日2軍監督)を全球ストレートで連続三振に奪ったシーンは有名だ。この年も79回1/3を投げて、122個の三振を奪った。
2007年からはクローザーへと配置転換され、71試合で46セーブを記録。2005年の岩瀬仁紀選手(中日)に並ぶNPBタイ記録を数字を打ち立てるとともに、最多セーブ投手のタイトルを獲得。この年も83回を投げて115個の奪三振を記録。中継ぎ投手ながら3年連続の100奪三振を記録したのだ。

フォームの改善で球速と球威がアップ!

なぜこれほどまでにストレートで三振がとれるのだろうか。藤川選手のストレートには、ポイントは2点ある。1つは軸足の使い方、そしてもう1つはストレートの握りだ。右投げの藤川選手にとって、軸足となるのは右足だ。右を軸として、そこから体重移動をさせつつ、左足を踏み出していく。
実はブレイク以前の藤川選手は、軸足とともにグッと体を沈めるフォームだった。しかし、2004年以降は、体を沈み込ませず、比較的高いリリースポイントからボールを離している。より高いポイントから叩きつけるように投球をすることで、指の力がボールに強く伝わり、球速と球威が大幅にアップしたのだ。実際にそれまでは140km/h代中盤だった球速が、150km/hオーバーを連発するようになった。

指をぴったりとくっつけて綺麗なスピンをかける

そしてもう1つのポイントである、指の使い方だ。藤川選手はストレートを投げる際、人差し指と中指をピッタリとくっつけてボールを握る。ほとんどの選手はこの2本の指の間は少し開けているものなのだが、藤川選手は完全に指の間を閉じてストレートを投げているのだ。これによって、ストレートの回転が非常にきれいなバックスピンになるという。
指を広げて投げたストレートは、実は斜めの回転をしている。ボールにも回転軸というのがあるのだが、その回転軸は地面とは平行ではなく、やや斜め方向を向いている。そのため、初速と終速に差ができやすく、リリースからキャッチャーのミットに収まるまでの間に下方向へと沈んでしまうのだ。
しかし、藤川選手のストレートの回転軸は、ほぼ地面と平行になっている。そのようにきれいなスピン、テニスのスライス回転のようにほとんど沈んでいかず、キャッチャーのミットまで収まっていくのだ。この沈まない軌道が、手元でホップしているかのような錯覚を打者に与え、空振りを奪うことができていた。

幼い頃からの積み重ねが日本一のストレートを生んだ!

このストレートの握りは、藤川選手がプロ入りしてから試行錯誤して身につけたものではなく、幼い頃から野球をやっていた中で身についていったという。そもそもこの投げ方はマネをしようとしてできるものではなく、いままで指を開いて投げていた人が急に指をくっつけてボールを投げたとしても、上手くコントロールできないことがほとんどだ。
幼い頃からこの握りでボールを投げている藤川選手だからこそ、上手くコントロールできているのだ。軸足の使い方を変えたことで、球速と球威が大幅にアップ、それによってきれいなバックスピンがかかったストレートがより活きる形になり、ここまでの数の三振を奪うことができるようになった。
藤川選手ももう30代後半。数年前には肘にメスも入れており、以前のように150km/hを越える剛速球は少なくなってきた。しかし、ストレートのバックスピンは相変わらずで、その独特の軌道は今も大きな武器となっている。2016年はこのストレートに加え、フォークやスライダー、カーブなども織り交ぜていき、円熟味のある投球も披露していた。
2017年もその投球でチームを牽引し、かつての同僚だった金本監督を胴上げすることができるだろうか。非常に楽しみなシーズンだ。