96年の巨人が起こした「メークドラマ」
やはり巨人の奇跡といえば「メークドラマ」です。1996年、この年は広島東洋カープが好調で、夏頃から断トツで首位を走っていました。一方の巨人は開幕からなかなか調子が上がらず、7月頭まで借金生活が続きます。ゲーム差は最大で11.5ゲームまで広がり、今年は巨人の優勝は厳しいだろう…誰もがそう思っていました。
しかし、7月9日の巨人-広島戦で、満塁本塁打を含む9者連続安打で広島を圧倒。試合終了後のインタビューで長嶋監督はこの逆転劇を「メークドラマ」と表現しました。そしてここから巨人の快進撃が始まります。
11.5ゲーム差を跳ね返す逆転劇
この時点で巨人の順位は3位でした。そして7月9日の試合はシーズン72試合目(当時は130試合制)。大逆転勝利を収めたとはいえ、依然10ゲーム差以上が開いている状況には変わりません。しかも、2位の中日も非常に手ごわく、8月2日の直接対決では野口茂樹選手にノーヒットノーランを達成されるなど、非常に勢いに乗っている相手です。しかしそこは百戦錬磨の巨人、この2チームをさらに上回る勢いで勝ち星を重ねていきます。
実は広島に大逆転を収めた日に借金を完済していたのですが、そこから7月終了時点で貯金を5とし、そして8月には2度の5連勝もあり、2ヶ月足らずで貯金を16にまで増やしました。順位も順調に上がり、8月の終わりにはいったん首位にも立ちます。なんと実質1か月半で11.5ゲーム差を縮めたのです。
当然広島も食らいつき、9月頭には首位を奪い返しますが、勢いで勝る巨人が再び首位に立ち、その勢いのまま10月6日に優勝を決めました。
メークドラマが同年の流行語大賞に
こうして11.5ゲーム差を巻き返し、奇跡の逆転優勝を果たした巨人。あまりにも劇的な流れだったため、7月10日のインタビューで残した「メークドラマ」が流行語大賞にも選ばれるほどでした。
投手ではエースの斉藤雅樹選手が16勝4敗、2.36で最多勝・最優秀防御率・沢村賞を獲得。前年に日本ハムからFA移籍してきた河野博文選手も最優秀中継ぎ投手のタイトルを獲得しています。打者の方でも松井秀喜選手が初の3割30本を記録し(.314、38本塁打)、シーズンMVPも獲得、仁志敏久選手が新人王を獲得するなど、若手・ベテラン・新戦力がうまくかみ合ったシーズンだったのです。
そして、このメークドラマはこれで終わりではありません。時を超えて再び奇跡が起こされることになるのです。2008年シーズン、この年は96年の11.5ゲームを超える、13ゲーム差を逆転しての優勝を果たしたのです。
奇跡は時代を超えて起こされる
2008年はとにかく阪神タイガースが絶好調でした。序盤から独走状態に入り、7月の時点で巨人とのゲーム差は13、そして7月22日には優勝マジック46を点灯させていたほどです。一方の巨人は坂本勇人選手や亀井義行(現在の登録名は善行)選手が躍動していたものの、打線の中核を担う予定だった小笠原道大選手、李承燁選手、高橋由伸選手らが不調。前年度の1番・3番・4番がまったく機能せず、打線がつながらない状況でした。
しかし、7月以降は鈴木尚広選手が1番に定着すると、木村拓哉選手との1・2番コンビが見事にはまりだします。さらに3番の小笠原道大選手が復調してくると、4番を打つアレックス・ラミレス選手(前年度にヤクルトから移籍)とのオガ・ラミコンビの活躍もあり、それまでが嘘だったかのように打ちに打ちまくります。
メークミラクルを超える13ゲーム差の逆転劇
8月以降は阪神の勢いもかなり落ち着いてきます。新井貴浩選手(現広島)が疲労骨折で離脱したほか、中継ぎ陣にも疲労が目立ち始め、特にJFKの一角だったジェフ・ウィリアムス選手が打ちこまれることが多くなりました。首位は守っていたものの、不安定な戦いが続きます。一方の巨人は先ほど紹介した新打線が絶好調。投手陣も、特に山口哲也選手をはじめとする中継ぎ陣が奮闘を見せ、勝ち星を重ねていきます。
そして、明暗を分けたのは直接対決でした。特に8月以降の巨人-阪神戦では、巨人が7連勝を含む9勝2敗と圧倒。特に10月8日の試合では、勝った方が首位に立つという状況の中、巨人が快勝を収め、マジック2を点灯させます。そして10月10日、ヤクルト戦に勝利した巨人は、見事13ゲーム差をひっくり返し、メークドラマを超える大逆転優勝、「メークレジェンド」を果たしたのです。
まとめ
このように伝統的に勝負強さを持っている読売ジャイアンツ。
ちょっとでも首位がもたつくようなことがあれば、10ゲーム差くらいあっという間に縮めてきます。
決して勢いだけではない、実力があるからこその奇跡なのです。