手元で変化するストレート系の球種
投手が扱う最も基本的な球種は、真っすぐに進むストレートだ。メジャーリーグではファストボールとも言われ、速度が何km出たのかを重視される。日本ハムの大谷翔平のように160km超のボールや、速度には表されないが阪神の藤川球児の投球ように、打者の手元で浮き上がるように感じるノビのあるボールがある。
これに対し、打者の手元で微妙に変化するのがムービング・ファストボール。ツーシームやワンシームなどがあり、指のかけ方や縫い目の位置、力加減によって変化する。ストレートと変わらない軌道、リリース、速度なので、打者からは見分けがつきにくいのがポイントだ。ストレートと思ってバットを振っても、微妙な変化で芯を外すのでゴロになりやすく、打たせて取るピッチングスタイルと相性が抜群だ。
左右に揺さぶれる横に変化する球種
横に変化する変化球の代表格がスライダーだ。バックスピンとサイドスピンをかけることで、大きく利き腕方向に曲がる。ボールゾーンからストライクゾーンにコントロールすることでカウントを有利にしたり、反対にストライクからボールにすることで空振りを狙えるなど様々な投げ分け方ができる。
一方、スライダーと逆の回転をかければ、利き腕方向に曲がるシュートになる。特に右投手と右打者との対戦では有効で、シュートを使って内角を攻めた後に外角にスライダー系を使うと、打者は左右の変化への対応が難しくなる。
また、スライダーとシュートの中でも速度の速いものは、それぞれ高速スライダー、高速シュートと呼ばれる。
他には、ストレートに近いスライダー変化のカットボールもある。
タイミングを外すには斜めに変化する球種
投手が扱う基本的な変化球が、カーブだ。トップスピンとサイドスピンをかけることで、利き腕と逆方向に大きく斜め下に変化する。球速、握り方、変化によって、スローカーブ、ドロップカーブ、ナックルカーブなど細かく分類することもできる。弧を描く軌道なので球速は遅くなるが、ストレートと組み合わせることでタイミングをずらす緩急をつけたピッチングで用いられる。また、カーブ自体でも変化量が大きいので空振りを狙うことも可能だ。
カーブと逆方向に変化するのが、シンカーとスクリュー。一般的に右投手はシンカー、左投手はスクリューと分類される。しかし、厳密にはシンカーがストレートに近い軌道なのに対して、スクリューはカーブに近いといった違いもある。
空振りを狙うには縦に落ちる球種
フォークは、ストレートに近い軌道、リリース、球速ながら、打者の手元で急激に落下する。そのため、空振りを狙いやすく、ウイニングボールとして使われる。一方で、ボールの扱いが難しく、ワイルドピッチや失投に繋がることも多くある。
メジャーリーグではフォーク系のことをスプリットと呼ぶが、その代表格がスプリット・フィンガー・ファストボール(SFF)だ。フォークよりも変化は小さいもののストレートに近い球速で、打者にとって見極めが難しく、空振りはもちろん、当たったとしても芯を外してゴロに打ち取ることが可能だ。ヤンキースの田中将大はSFFを決め球として活躍している。
他には、ストレートと同じ投げ方で速度の遅いチェンジアップや、ゆっくりと大きく変化するパームなどもある。
まだまだある野球の球種
ここまで代表的な球種をみてきたが、特徴的な球種を2つ紹介する。
まずは、左右に揺れながら落ちるナックル。あまりに不規則なため、打者はもちろん、投手と捕手でさえその変化は分からない。特徴的な握り方、リリースや捕球の難しさ、風など自然の影響を受けやすいなどの欠点もあるが、ブルージェイズのR・A・ディッキーはメジャーリーグ唯一のナックルボーラ?として、サイ・ヤング賞を獲得するなど好成績を収めている。
次に、球速100km以下で大きな山なりを描くスローボール。速度が遅いので打者も把握するのは容易だが、ピンポイントで使われるとあまりの緩急の差で、分かっていても打つことが難しい。日本ハムに所属していた多田野数人が使ったことで有名になった。
まとめ
いかがだっただろうか。ストレートだけでもいくつもの種類があるし、変化球も球種ごとに使うタイミングが違うのだ。これからは投手が投げるボールに注目して、どの球種を選んだのか、どのような配球がされているのかなど分析してみても楽しいだろう。