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広島新黄金期継続のキーマン西川龍馬 昨季は後半戦で「悪球打ち」に磨き【広島の2020年代を左右する男】

2020 6/4 06:00青木スラッガー
広島東洋カープの西川龍馬ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

黄金期継続のキーマン

ようやく開幕を迎えようとしているプロ野球。今季から2020年代という新たな時代へ突入することになるが、将来10年間の戦いを見据えたうえで、各チームの命運を握ることになりそうな選手に注目していきたい。今回は昨季飛躍を遂げ、侍ジャパン入りも果たした広島の西川龍馬を取り上げる。

昨季は4連覇を逃し、Bクラスへ転落した広島。ここがチームの転換点となるかもしれないが、平成の終わりに築いた黄金期を2020年代も継続させることができるだろうか。

現在のチーム状況を見ると、徐々に野手は世代交代を意識する段階に入ってきている。

不動の二遊間としてチームを引っ張ってきた菊池涼介、田中広輔はともに30歳を迎え、安部友裕も2人と同学年。正捕手の會澤翼、中軸を打つ松山竜平はベテランの域に入り、野間峻祥、堂林翔太、磯村嘉孝といった数年前は期待の若手として扱われていた選手たちも、すでに20代後半の中堅どころ。現在25歳の鈴木誠也もあれだけの成績を残しているとなると、本人は意向を明らかにはしていないものの、メジャー挑戦というステップアップの時は近いうちに訪れると考えるのが自然だろう。

現在の主力メンバーたちは今が身体的にも経験的にも脂がのった時期。まだまだ活躍できる年齢ではある。ただ、ここ数年はある程度決まったメンバーが試合に出続け、若手の出番が少なかっただけに、5年先まで考えると将来のチーム像はやや不透明だ。

そういったチーム状況の中で、2020年代の広島を引っ張っていく中心打者としてキーマンになりそうなのが、現在25歳の西川である。

昨季は後半戦で持ち前の「悪球打ち」に磨き

昨季の西川はプロ4年目で初の規定打席に到達し、打率.297・16本・64打点をマーク。18年はシーズン途中からレギュラーを掴んだが、昨季はシーズンを通して主軸の一角を担い、中堅手として退団した丸佳浩の後釜に収まった。

西川といえば、打撃スタイルが特徴的な「悪球打ち」。投手が仕留めにかかった低めのボール球を、完全に体勢を崩されながらも天才的なバットコントロールでヒットゾーンに飛ばす。ときにあのイチローのように、ワンバウンドしたボールをヒットにすることもある。「好球必打」がセオリーである野球界の中で、ユニークなプレースタイルでここまで結果を残してきた。

ただ、昨季のゾーン別打撃データを振り返ってみると、最も打率が高いのはど真ん中(.442)で、インコース低め(.203)、アウトコース低め(.220)、インコース高め(.229)、真ん中高め(.217)の打率が低い。意外と好球必打型でヒットを放っているようにも思える。

しかし前半戦・後半戦で分けてみると、全く違ったデータになる。前半戦はインコース低め(.148)、アウトコース低め(.143)インコース高め(.211)、真ん中高め(.167)で、この4つのゾーンはほとんど打てていない。後半戦はインコース低め(.250)、アウトコース低め(.290)インコース高め(.250)、真ん中高め(.313)となり、苦手としていたゾーンの打率が劇的に向上。厳しいボールをヒットにするという得意技に磨きがかかった。

後半戦は成績としても、打率.332、11本塁打をマーク。8月には球団記録に並ぶ月間42安打を放つなど、安打製造機として覚醒した感もある。今季もその天才的な打撃を見ることができるか。

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