高津監督にとって理想の2番打者
日本全国が閉塞感に覆われている。言うまでもなく新型コロナウイルスの影響である。なんでもないようなことが幸せだった、と感じている人も多いのではないだろうか。それはプロ野球関係者も同じだ。
今年からヤクルトを率いる高津臣吾監督はオンライン取材で「声をかけますけど、心に穴が空いてしまっているような、さみしげな会話になってしまっているのが現実ですね」とコメントしている。
強靭なメンタルを兼ね備えているであろうプロ野球選手たちも、ファン同様に苦しい時間を過ごしているようだ。それでも最後には「皆さん、元気でグラウンドで会いましょうね」と明るく締めくくった。暗い雰囲気の中でも前を向いているのだ。
高津監督は最下位からの脱出に向け、春季キャンプの時点から新打順の構想を練っていた。その目玉となりそうなのが、「2番・山田哲人」である。少し前の常識では2番に山田のような強打者を置くことは考えられなかった。
2番打者と言えば、1番打者を犠打で進める役割を求められていた。しかし、近年では犠打をしない強打の2番というのが日米問わず常識になりつつある。どちらがいい、悪いではないが、日米でプレーしてきた高津監督は山田を「理想の2番打者」と考えているようだ。
山田は「2番打者」としては、どのような成績を残してきたのだろう。
2018年に2番打者として打率4割を記録
春季キャンプ中に高津監督の2番構想を受け、山田は「経験はしているし、変な感じはしない」と不安を感じさせない発言をした。調べてみると、昨シーズンは2番での起用はなかったが、2年前の2018年は4試合に出場し、打率.400(10打数4安打)、1本塁打という結果を残している。
しかし、これは本来2番であった青木宣親が負傷した終盤に、3番の山田以降の打順を1つずつ繰り上げられて起用されたときのこと。今回のように意図があっての2番起用とは状況が異なる。
他にも2012年の3試合と2013年の1試合の計4試合で起用されたこともあるが、これはいずれもブレイクする前のこと。また、日本代表として参加した2回のプレミア12とWBCにおいては、2番での起用はない。つまり、2018年を含めて通算で8試合経験しているだけだ。
ただ、ほとんど経験がないにもかかわらず、頼もしいコメントを残しているのは心強い。
青木、川端、リグスのいいとこどりで史上最強の2番打者へ
ヤクルトにおける強打の2番打者を振り返ってみると、2015年の川端慎吾、2018年からは青木宣親と、強打というよりは巧打の印象が強い。本塁打を多く打てるという意味では、2006年に39本塁打を放ったアダム・リグス(2番としては37本塁打)以来となる。
今年は試合数の減少もあり、リグスの本塁打数を超えるのはむずかしい。だが、打率では川端や青木に匹敵する数字を期待できるだろう。また、塁の状況で盗塁数が伸びるかはわからないが、彼らと同等以上の「足」も持ち合わせている。川端、青木、リグスのいいとこどりといった成績も期待できるのだ。
高津監督が求める理想の2番打者として、「これぞ山田」といった活躍をすることができるだろうか。ヤクルトファンは、球団いやプロ野球史上最強の2番打者が誕生する瞬間を待ちわびている。
2020年プロ野球・東京ヤクルトスワローズ記事まとめ