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スライダーの被打率は.157 楽天・高梨雄平は今季もブルペンに欠かせない

2020 4/27 06:00浜田哲男
楽天・高梨雄平Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

リリーフ陣の中でも特別な存在

昨季は48試合に登板し、防御率2.30と安定した投球を見せた楽天の高梨雄平。プロ通算3年間で164試合の登板し通算防御率は1.90。今や楽天のブルペンには欠かせないセットアッパーだ。最大の武器は変則サイド左腕から繰り出す、出所の見にくいスライダー。左打者にとっては背中に向かってくるような感覚で、タイミングを合わせるのは至難の業だ。

楽天は、新セットアッパー候補としてJ.T.シャギワ(元ドジャース)や3年ぶりの日本球界復帰となる牧田和久を獲得。昨季活躍したアラン・ブセニッツや森原康平なども含めリリーフ陣の層が厚みを増しているが、中でも変則サイド左腕の高梨の存在は貴重だ。今季も勝敗を左右するような重要な局面での起用が予想される。

スライダーの被打率は圧巻の.157

パ・リーグには高梨以外にも変則サイド左腕が複数人おり、高梨と同様にスライダーを武器としている。下記の表は、各投手のスライダーの投球割合・平均球速・奪空振率、被打率を比較したもの。投球割合はソフトバンクの嘉弥真新也が51.6%と最も高いが、日本ハムの宮西尚生は46.6%、高梨も44.7%とひけをとらない。特に嘉弥真と高梨はスライダーの割合が直球をも上回っている。

パ・リーグ2019変則サイド左腕のスライダー比較


注目すべきは被打率。各投手とも自信をもって投げているウイニングショットだけに、優秀な数値をマークしているが、その中でも高梨の.157が最も低い。投球割合が最も高いスライダーで、これだけ抑え込めていることも素晴らしい。

どのコースへの配球が多いかが視覚的にわかる投手ヒートマップを見ると、高梨の対左打者への配球は外角攻めを徹底しており、同コースで最多14個の三振を奪っている。

一方、右打者に対する配球は一定のコースに偏ることなく、ストライクゾーンを万遍なく攻めている。中でも低めに球を集めている傾向が顕著。投球割合が21.1%と最も高いのが外角低めで、同コースの被打率は.125、投球割合が16.9%と2番目に高い内角低めでは、ヒットを1本も許していない。

変則サイド左腕と言えば左打者に強いというイメージがある。実際にソフトバンクの柳田悠岐やオリックスの吉田正尚といった左の強打者には、ワンポイントで左腕をぶつけるケースが多い。

だが、高梨の場合は対左打者の被打率が.236、対右打者が.195と、左右関係なく抑え込んでいる。そのため、左右どちらの打者からイニングが始まろうとも、イニングの頭から安心してマウンドに送り出すことができるのだ。実際に走者無しの場面での被打率は.161と抑えている。

一方、走者一塁の場面での被打率が.389、走者二塁の場面では.333と、走者を置くと打たれる傾向があるのは課題だ。

マウンドの上でも職人ぶりを

今季のオープン戦は4試合に登板。計4回で被安打3、防御率0.00と抜群の安定感を見せていただけに、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて開幕が延期されている状況は歯がゆいだろう。

自身のツイッターでは、連日のようにテロップとBGMを導入した本格的な料理動画を投稿するなど野球同様に職人ぶりを発揮している高梨。ファンからは「もう野球選手兼料理人ですね」「料理人をフォローした記憶はないんだけど」「高梨シェフ、料理本出してほしい」といった声も寄せられるなど、積極的にファンを楽しませようとする姿勢が新たな魅力を伝えるきっかけとなっている。

新型コロナウイルスが終息に向かい野球が晴れて開幕できた時には、マウンドの上でも改めて職人ぶりを見せつけてほしい。


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